2006/8/22 (Tue.) 05:07:41

昨日、麦んちに紺野ちゃんが泊まった。
最近麦の紺野ちゃんに対する感情が暴走してるんで、麦が紺野ちゃんを犯しちゃったりしら
大変だ!と思って電話したんだけど、その時には『大丈夫』だって麦は言った。
半信半疑で電話をきって、寝ようと思ったら直ぐに麦から電話が来て
『紺野をヤっちゃいそう』とかいうから、あわててチャリで佐伯家にむかう。

そしたら麦が、玄関開けた途端、『ごめんな。』って俺に言う。泣いていた。

『もしかして・・やっちゃた?』って勇気出してきいたら
『ちゅうだけしちゃった。・・でも紺野は寝てるからわかってない。』という。

あー・・・・。やっぱこいつ、マジ恋なんだ・・・。

部屋の前で、座り込んで、頭抱えて泣いてる麦が痛々しい。
3分くらい背中をさすって、部屋に入ったら紺野ちゃんが寝てた。
ふつうに・・・ふつうに男なんだけどなあ・・。紺野ちゃんは・・。

俺は、麦に 『この子のどこが好きになったの?』ときく。
『お前は紺野、すきじゃねーの?』といわれたから、
『好きだけど、やりたいとはおもわねーよ』といった。
ストレートすぎてごめん。

麦はちょっとだけ黙ると『かわいいから。』とだけこたえた。

・・・うーーん・・・・。

あんだけ、ばっきばきなけんかした、紺野ちゃんのどこがかわいいんだ。
体育祭の活躍とか、普段の仕草とか、色々、俺には男らしい紺野ちゃんしか知らないし、
そりゃたまにかわいいこと言うけど、そんなの部活やクラスのやつらと、同レベルだとおもう。

『かわいいか?』
『・・かっわいいよ・・。あまったれでさ・・。』
『あまったれ?』
『それによく笑うし。』
『いや、俺もよく笑うよ?』
『一緒にすんなよ。』
『(そりゃ失礼)』

どんだけ説明されようとも。理解できないことかもしれない。
だいたい恋に落ちてるやつらって、桃色メガネをかけてるから。

と、そのとき、ベッド上の紺野ちゃんが、ベッド脇の壁に頭をガンっとぶつけて、目を覚ました。
その音に驚いて、俺も麦も思わずかたまる。

紺野ちゃんは、目を覚ましたけど、何がなんだか判らないらしい。
きょとんとベッドの上に座ると、俺に向かって超低音で『麦は?』といった。

そしたら麦が、すっと紺野ちゃんのとこにいって『今頭ぶつけたよ、大丈夫か?』という。
紺野ちゃんは無言で、コクンと頷いて『タバコ』という。タバコを渡してやる麦。
紺野ちゃんはタバコを右手で持つと、左手で近くにあったクッションを抱きかかえて、麦をじっとみた。

・・・何このでっかい図体した小動物。今まで見たことない紺野ちゃんの表情。

『火ぃつけて。』麦にねだる。
『そんなもん抱えてたら燃えるよ、お前。』麦が紺野ちゃんの髪を撫でる。
そしたら紺野ちゃんが俺を見て
『麦が浅井君に見えるよ。ちょう笑える』といったんだ。

・・この人・・ねぼけてんの?

麦が紺野ちゃんの目の前に顔をだして
『俺はここにいるだろ?あれは浅井だよ。 』
『なんで?』
『なんでって、さっきもどってきたんだよ。』
『・・へえー・・。じゃあお前は麦だけど浅井とはちょっと似てないね』

・・・それ日本語?

麦は紺野ちゃんの手からタバコをとると、『まだ朝じゃないよ。もう少し眠りな』という。
紺野ちゃんは、嫌そうな顔をしたけど、ちゃんと麦のいうこと聞いて、直ぐに目を閉じて眠ってしまった。


・・・・・・。

『俺の前では、かわいいんだ。』
『・・・・。』
『こいつがすごくかわいいんだ・・。』
『・・・・うん。』
『きっと普段は無理してて、俺の前では無理しないでくれてんのかなって・・・。』

確かにさっきの寝ぼけ方は、なかなかお目にかかれない光景だけど・・。

『ほんとにスキなんだ。こいつは全然わかっちゃいないけど。だけど本当にすきなんだ。』
『うん。わかるよ』
『浅井きてくれてほんとよかった。あんな寝ぼけかたされた時に、俺一人だったら、俺確実にこいつとヤってた。 』
『・・・・。』
『ありがと・・まじ。』
『いいよ・・そんな・・。』

・・・まいったな・・・。

同じものを見ていたはずなのに、俺はやっぱり紺野ちゃんは、友達としか思えない。
寝ぼけ方がかわいいというより、すっごいあほで面白かっただけで・・でもそんなこと、いえない。

大事な親友にそんなこといえない。

紺野ちゃんは、なんも考えてないような顔ですやすや眠ってる。
その寝顔を黙って見ている麦の表情が、すげえ優しそうで、とてもかなしかった。
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