2010/07/11/Sun 23:08:33
恋バナ

ただいまー。疲れたー。
でも比呂から電話あった・・から、元気復活で、ハートが爆発。

面会時間が8時までで、9時消灯なんだけど、
8時すぎくらいに電話くれてー、俺は駅のホームで電話に出た。
ほとんど人がいなくて、物悲しかったから余計にね、比呂の声が愛おしくてさー・・
たまんなかったー・・。あの声は罪だ。俺を何度も射抜いて殺す。

『・・・岸先生が来たよ。』
『ほんと?』
『うん・・・。あと、じいちゃんばあちゃんにー・・、光が丘の家の近所の人とか。』
『えー!!すごいね!みんな遠路はるばる。』
『うん。なんかみんなしてから揚げあげて、ファンタもってくんの。』
『えーーーー!!!病名しってんのに?!』
『うん。なんかタダの腹下しとか思ってたみたいでー・・胃潰瘍って知ってびっくりしてた。』
『そうだよねー。から揚げどうしたの?』
『坂口たちが食った。』

『げ。あいつらまだいたの。』



『うん。』
『横浜満喫してんだな〜・・せおなお。』
『でも今夜帰るって言ってたよ。・・あ、でも京都まで戻るかはわかんないけど。』

『坂口んちか麦んちに泊まるかもね。・・・っていうか・・あのね・・。』
『うん。』

『昨日、バイト先のひとんちとゴハン食べに行ってきたんだけどー・・。』
『うん。』
『なんか、ワケアリ片思いしてる女がいてさー・・。』
『ん?お前んちバイト先の子?』
『そう。なんかね、彼女もちの男を好きになったとか言って。』
『あー・・、はいはい。』
『わめくのさー。飯食いながら。告らせろー!とか、奪いたいとか!』
『へえ・・。』
『で・・彼女から奪い取って、自分が幸せにする自信がある!的なこと言ってるから、
店長が、そんなの自信じゃねえ・・妄想だ・・っていったの。』
『あははは。』
『でも、なかなか気持ちがおさまらないみたくてさ。大変だった。』
『へえー・・・。』
『・・・そんなことが・・ありました。』
『ははっ。それはそれは。』

ぽわんっと、心にハート。

『・・・でもさー・・俺、そのときさー、「その男の幸せに波風たてるな。」って言っちゃったのね。』
『お前が?』
『うん。だってさ、そいつ本気で告って引っ掻き回しそうだったからさ・・・。』
『・・・・・・・。』
『今思うとさー・・ちょっとあれだったかなーとおもって。』
『あれ?』
『や、ほかにもっと言い方あったかなーってさ。どうせふられるから、やめとけよ!とか。』
『それ、余計ひどいだろー・・。』
『そうかな。』

コホンと比呂が咳をした。

『けど、その子どーすんのかな。告るくらい別に、させてやりゃいいのに。』
『・・なんで!!!だって彼女もちだぜ?』
『・・別に友達の彼氏を奪うわけじゃねーんだろ?じゃあ・・別に告ったっていいんじゃないの?』
『駄目だよ絶対!!!そんなんしたら、そのカップル大変なことになっちゃうじゃん。』
『なんねーだろ、その男が本気で彼女を好きなんだったら。』
『・・・・・・・・・。』

過去の・・・・高校時代の比呂の様子が、心をよぎって俺の真ん中を揺さぶる。

告ってくる子を片っ端から断って、数が多いときは無視してその子たちを通り過ぎた比呂。
俺はヤキモチ焼いたり色々して、すこしだけ揉め事になったけど、すぐに問題は収束した。
・・比呂はちゃんと、一切の隙も見せずにその子達をきっちり振っていってくれたから。

『今付き合ってる、その彼氏彼女の気持ちも大事だけど・・・ちゃんと付き合ってるなら
別に・・なんかあっても二人で乗り越えるんじゃないの?
わざわざ彼女に打ち明けて不安にさせるバカじゃないだろうしさ。その男の人もさ。

・・それに・・その・・片思いしてる子の気持ちだって、ちゃんと恋だぜ?心だぜ?
相談してくるくらい思いつめてるならさー・・、もうちょっと言い方あったんじゃねえの?
告る告らないじゃなくてさー・・。なんつーのかなー・・。
でもほら実際、うちも最初俺、彼女もちだったし・・・。
告ってどうなるかなんて・・わかんないのは事実だぜ?』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

『でも比呂・・バレンタンとか・・校門で待ってた女子を無視して学校きたじゃん。』
『・・・・・・。』
『踏みにじったんじゃないの?そういう目にあった女子・・かわいそうだったと思わないの?』
『・・・・・・。』

・・しまったと思った・・。ストレスで胃潰瘍になってる比呂に俺、なんてこと。
電話の向こうで比呂が少し黙って・・、でもそのあとも会話は続いた。

『だってあれは、俺がそう決めて、そう態度とっただけで・・・、
俺本人がしたことじゃん。俺が判断して決めたことじゃん。』
『・・・・?』
『だから・・その人たちからしたら、そのとき俺を好きだったかもしれないけど、
好きな男がそうしたっていうことだろ?』

『うん。』
『お前んちがしてることとは違うじゃん。』
『・・・・・・。』

『告白したいくらい好きな男がいるその子に、なんもさせずにあきらめさそうとしてるってことじゃん。』
『・・・・・・・。』
『諦められるのかそれ。ずーっと引きずったらどうする?まずちゃんと話を聞いてやりゃいいだろ?』
『・・・・ちゃんとはなし・・?』
『彼女と別れるまで待てないのかとか・・、告ってふられたら、キッチリ諦められるのか?とか。』
『・・・・・。』
『どうせ無理!とか、お前らが決めるなよ。振る権利は、お前らには無いよ。あるのはその相手の男だけ。』
『・・・・・。』
『応援すんのはまずいかも知れねーけど、好きな気持ちくらい認めてやれよ。
引っ掻き回すとか・・・そうなる前からそう考えるの、かわいそうだろ。
実際引っ掻き回すようなことしたら、叱ってやりゃあいいんじゃねーの。』
『・・・うん・・・だけど・・・。』
『・・・・・・・・。』
『・・よくよく聞いたら、その子が好きな子・・俺なんだよね。』
『・・・・・。』
『・・・・・・・。』


『好きな男って、那央っ?!!』



『・・・うん。』
『・・お前・・京都にいって輝きが増したんだな・・・・・。』
『ちがうよ!!ただ・・・』
『・・・・。』
『遠距離だと・・会えない分、無性に恋しくなるんだよ・・。比呂のことが。』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
『だから・・そういうので・・ホルモン的な何かがでたんじゃないかと・・・。』
『・・・・っていうかそれ・・フェロモンだろ。』
『そう。それ。』
『・・・・・・もー・・・・。まだモテてんだなー・・・。』
『比呂だって年中もててるじゃん。』
『お前、よくそういうこというね。俺の周り、びっくりするくらい女がいないから。』
『えー・・・。』
『だから女に飢えて秋山さんが、一日3回も病院に顔を出す。』
『ぶはっ!!ナース目当て?』
『うん。』

・・もー・・・。なにいってんのかにゃー。紺野さんは。

『や、でも・・だったらなおさら、お前、その子とちゃんと話しろよ。』
『え・・でも・・・。』
『だって、バイト先の子だろ?ならちゃんとしねえと。』
『・・・けど、俺恋人いるっていってあるし。』
『うん。そうだけど・・でも、傷つけたんじゃないの?やっぱさー・・。』
『・・・・・。』
『もちろん、その話し合いの中で、お前が流されたらアウトだけど。』
『流されないっ!!!』
『ならさー・・ちょっと頑張ってさー。なー。』
『うーん・・・。』
『お前を好きになったことが、その子の傷になって残るのは、やっぱあれだぜ?
お前がしっかりしてたら、へんなことにもならないだろうしさ。』
『うん・・・。だけど・・・。』
『ん?』

俺はいう。

『・・けど、俺がそうすることでさ・・比呂にはまた心配事が増えるじゃん。
今、大事なときなのに・・また比呂に傷をつけたら嫌だもん。』

比呂は電話の向こうで笑った。

『大丈夫だよ。そりゃ、穏やかな気持ちではいられねーよ?でも、聞いたからには俺だって考えるじゃん。
お前が取った態度・・やっぱよくないって思うから・・俺は思ったことをお前に言っただけ。
どうするかは、お前が決めればいいけど、とにかく俺は、話を聞いて、あんま簡単なことじゃねえなって
思っただけ。ほんとにね。』
『・・・・・・。』

『通りすがりの人に告られたわけじゃないじゃんね。これからもバイト続けたら会うわけだからさ。
・・無視して仕事し続けるわけにもいかないだろ?・・まあ、半端に優しくされるのも
相手の子からしたらつらいかもしれないけど。
でも、俺だったらやっぱ・・なんていうか・・ちゃんと諦められるような振られ方したいなと思うよ。
絶対引きずるもん。中途半端な振られ方すると。』


・・・・・・・・・・・・・

『・・・・たしかに・・そうかも・・・。』
『まあ、あとは自分で決めな。俺のことは大丈夫だから、お前がそうやって悩んでるんなら
なんかしな。でも、ヤるとかはねーからな。』
『わかってるよっ!!!!ばか!!!』
『バカといえば、今日、坂口がさー・・。』

今日は20分ちょっと喋ったかな・・・。恋の話を比呂とするのは、なんか久しぶりな感じで・・
途中からドキドキして困った。今すぐ比呂の病院に入院して、一個しかないベッドで
二人で眠りたいと思ったよ。好きで好きで好きで好きでたまんないんだもん。


笑っておやすみの言葉を掛け合って、電話を切ったら真っ黒い夜空が目に入って、俺は急に真顔になった。
そのあとは、次の電車が来るまで、ぼんやりとしながら夜空に比呂の笑顔を描いた。
俺、相手の立場に立って考えることとか・・・、結局全然できてないんだなー・・。

その分、比呂が俺のことを考えてくれるから・・なんか、すごくありがとうって思うよ。
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