2010/07/12/Mon 23:00:54
あまえっこ

電話かかってきた。うん。なんか、すごく眠そうだったのね。
すっごーく、すっごーーーーーく・・・・もーねー。へへー・・。

『やばかった・・・。うっかりしてたら半分寝てて・・・今何時?』
『八時半。』

『あとちょっとしかないじゃん・・・もー・・・。』
『ほらほら、病人さん。あ、そうだ、調べたよ。』
『え?何を?』
『血圧計。』

俺は調べたことを、比呂にもわかるように説明した。
そしたら比呂は、しばらく黙ったあとに、『だから何回もはかるんだ・・・・。』といった。

比呂の病院の看護師さんは、血圧を測るときに、話しかけるとかしないんだって。
すごく真顔で何度もはかるから、『なんでだろう・・。』って思ってたんだって。
今まで何度も入院したけど、今までの病院の看護師さんは、よく喋る人ばっかだったから、
何度かはかったりしてたのは、『話に夢中になってて、またはかり間違えた。』って
そういう風に思ってたらしい。・・・・なにそれーーー。もー・・・。

そんな比呂のことを想像して、笑ってたら比呂が咳き込んで
『大丈夫?どした?』っていったら、『ううん。うん。』だって。

あー・・・もー・・片足を夢の世界に突っ込みかけてる・・って思ったから、
『そろそろ病室に戻って寝な?』って言ったのね。俺。
そしたらさ、『・・・バイトの子・・どうなった?』って言われた。

『今日は俺、休みだったから、会ってないよ。次回の機会に話してみる。』
『うん・・・ねー・・・。』
『なにー?』
『お前、絶対流されんなよー・・・。 』
『・・・なに?疑ってるの?』
『疑ってないけど心配してんの。俺もうヤだもん、あんなの。』

甘えたような・・寝ぼけたような声の比呂想像したら悶えそうだった・・。

入院服で、点滴しながら、俺と電話してんだよね。比呂。
比呂って寝ぼけると近くにあるものにいちゃつくんだよ。棒でも何でも。
点滴をつるすヤツにいちゃつきながら、電話してるんだろうなーと思ったら、
今すぐ空飛んでって、比呂をギューってしたい・・・。

そしたら電話の向こうでね、なんか女の声がして、比呂が『・・はい。すみません・・。』とか言ってるから、
怒られたのかなーって思って・・、『どうしたの?もう寝る時間?』ってきいたら、
『そうじゃないけど・・そんなとこで寝ちゃ駄目よって・・言われた。』とかいうの。

比呂ね・・俺の想像を飛び越えて、携帯スペースのソファーに寝転んで点滴つるしてあるやつを
ガラガラ動かしながら電話してたんだって・・・。

子供かお前は!!!



『このイス、いいよ・・。近くにジュースが売ってる・・。』
『それ、イスがいいとかそういう問題じゃないでしょ。そろそろ病室に戻った方がいいよー。』
『・・ねー・・ホントに絶対だぜ?』
『大丈夫。俺は比呂のことだけだから。あの時もそうだったのに・・ほんとにごめんね。
でも、今、毎日毎日比呂に会いたくて、たまらないんだ。こんなに好きだよ。』

歯の浮くような・・でも心に浮かんだ言葉全てを比呂に話したら、電話の向こうで比呂が
照れくさそうに笑った。

電話切ったあとも幸せの余韻をかみしめてベッドに寝転んでたらね
比呂んちおじちゃんから電話があってね。比呂の容態について教えてもらった。

うん・・。まあ・・うん。でもゆっくりでも、回復していってるっていうからね。
大丈夫。うん。・・痛みに苦しんでるのは比呂だから、俺は泣いてる場合じゃない。

あんなふうに・・電話で面白い話とかしてくれてるんだけど・・
夜中とか・・ベッドから落っこちるほど、痛がるときとかあるんだって・・・
でも、夜、誰も周りにいないから、無理せずにしっかりと痛がれるんだよね・・比呂は。
だから、俺は知らないふりで、そっと心の中で、比呂の痛みが和らぐことを祈るよ。
一週間後、病状がよくなってることが比呂の目標であり、俺の夢でもある。

今一番の俺の夢は、比呂が痛みから解放されて、
俺のそばで一緒に笑ってくれること。です。
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