青空 2021/04/06 Tue. 12:30 (ユッキーブログ)
比呂の桜もだいぶ花が散ってしまった。葉桜っていうのかな。
きれいな緑色の葉っぱと、薄いピンクがかわいい花びら。
今日は青い空も一緒だよ。春の最高セット。持ってきたお団子を食べた。
「比呂のそばはやっぱり落ち着くな~」 本人に聞こえるように言ってみる。
ほんとだもん。今でも同じ。 これは俺の習性だから仕方ないね。
持ってきたのはお団子だけじゃないよ。多肉植物を植えに来たんだ。 住職さんの許可ももらった。
比呂と俺のスペースになら植えてもいいって。 持ってきたのは乙女心だよ。
比呂が『那央みたい』って言ってくれてたから。
比呂のプレート横の土を少し削って、多肉植物用の土に入れ替えた。
ほんの少しだけね。桜に影響無いように。
比呂は乙女心の葉挿しに何度も成功してたけど、真似してやった俺はいつも全滅だったから
庭に植えてあった株を持ってきた。無事に育ったら、他のも植える。
大きくなって増えてきたら 挿し芽とかにしてうちの庭に植えるんだ。
ハルカさんと待ち合わせしてて、あと30分くらいで着くみたいだから 植えてからのんびりしようと思う。
ハルカさんとは昼飯食いに行くんだ。天ぷらそばだって。 冷たいやつで磯おろし。比呂が大好きだったんだって。
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おはよ 2021/04/07 Wed. 09:18(ユッキーブログ)
朝からジョギングしてきたよ。5時位になるとだいぶ明るいから。 比呂のTシャツとハーパン借りた。
外の空気を吸ったら冷たかった。 20分くらい走って、家についてからは庭の植物を見た。
手入れは後。ただ見るだけ。 黙って見ながら、いつでも俺は比呂の気配を探してるんだ。
大事にされてたのは俺だけではない。 その優しさを俺が引き継がなきゃ。
昨日食べたお蕎麦、美味しかった。
「あんた海老天大好きなんでしょ?紺野ちゃんがいつも話してた」
そういってハルカさんが海老天追加で注文してくれた。
涙をこらえながら食べて、窓の外を見ると桜が舞ってたから にこって笑ったら涙がこぼれた。
悲しくて泣いたわけじゃないよ。本当に大丈夫。
心に溜まっていた水が少しだけ溢れてしまっただけだから 心配しないでいいからね。
次の満開は来年。 そろそろ比呂のとこに行こうかな。
桜の見頃が過ぎたから慌てて家を出なくてもいい。
今日もお団子をもっていくよ。あったかいほうじ茶も持ってくんだ。
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また明日 2021/04/08 Thu. 21:24(ユッキーブログ)
比呂の所に行くようになってから、
自分の肌の調子とか 髪型とかが気になっちゃう。
窓に映った自分を見て、老けたな・・って思うのは
比呂と一緒にうつった写真の自分ばかり見ていたからだ。
今日、赤玉ねぎを切りながら歌をうたった。
思い付きで言葉を並べたら比呂への愛の歌になった。
我ながらいい出来だと思って、比呂のとこに行った時に
歌ってあげようかと思ったけど、全部忘れて思い出せなかった。
それでも今日は、いい天気だったからね。 歌うかわりに「好き」って言ったよ。
聞こえてますように。どうか、どうか。
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昼寝 2021/04/10 Sat. 21:53(ユッキーブログ)
昼過ぎに比呂のベッドで昼寝した。窓開けて、春の風が吹き抜ける部屋。
本当に気持ちがよかった。30分くらいの短い昼寝。
比呂の夢を見たんだけど、目が覚めたら殆どを忘れてしまった。
今日という一日を、植物の手入れと移動に費やした。 比呂の所にはいかなかった。
毎日比呂の所に行ってる俺をハルカさんが心配して
「せめて週一くらいにしな。紺野ちゃんものんびり眠れないでしょ」
って言ってくれたから、そうすることにしたんだ。
一年半近く会いに行かなくて、比呂には比呂の生活のリズムが出来てるのに、
俺の都合で毎日押しかけたら、寝る間もないし、心配かけ過ぎちゃうから・・・。
駄目な彼氏でごめんね。いつも自分のことで精いっぱいで。 でもずっと俺の一番。
今でも比呂が俺の手を引いてくれるから歩けるんだよ。
植物たちは俺達と一緒に暮らしてたじゃん。 俺達と同じ部屋で、同じ空気を吸って吐いて。
だから時々思う。部屋中の緑にも比呂の命が残ってるんじゃないかって。
時間を巻き戻せない事、考えるのが怖い事、 そういうことは心に浮かび上がりそうになったら、
すぐ押しつぶすようにしてるんだけど、 なかなか難しいね・・・うまくいかない
明日は・・比呂の所に行くね 少しずつ、行かない日を増やして
自分だけで頑張れるように そういう風にしていくから・・ごめんね。
比呂はいつも俺に合わせてくれて どんなに眠い夜でも
体がしんどい時でも 俺の心を優先してくれた
それを親父に『甘やかされた』って言われたけどさあ・・
『大事にしてもらえた』の間違いだから。
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安心した 2021/04/11 Sun. 11:42 (ユッキーブログ)
比呂の所に行ってきたー。おにぎりと卵焼きをもって。
今日はキャンプ用のイスも持って行った。話したい事が沢山あったから。
春の青空もきれいだね。風の柔らかさを揺らぐ葉を見て感じる。 比呂は秋の青空と冬の夜空が好きだった。
俺はどんな季節でも比呂とみる空は全部大好きだったよ。 おにぎりを頬張りながら、残ってる花の数を数えた。
春以外に桜を意識して見ることなんかなかったけど、 これから俺はずっと桜と共に生きていくんだね。
「またくるね」って比呂に言って、投げちゅーをして手を振った。
お寺の駐車場で紺野さん達に会った。少しだけ立ち話をした。
俺の体を心配してくれたから、大丈夫ですって言って笑った。
世の中が落ち着いたら一緒にご飯を食べようねって言ってもらえて 本当にうれしかったよ。
春の空気を目いっぱい吸って、体の全部に染み渡らせる。
俺の人生は続いているから、この季節に留まることはできないけど
来年まで頑張って生きたら、ご褒美のように比呂の桜が咲く
見えないけど手を繋いでもらえてるような感覚。 そういえば比呂は、春野菜が好きだったね。
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『包まれる』
比呂の部屋のものを整理した。捨てるものは何もない。
俺が時々渡してた手紙の類を大切にとっておいてくれる人で
前にはきれいな缶に入ってたんだけど、それが全然見当たらなくて
『捨てられちゃったのかな‥』って思ってたら植物棚の工具箱に入ってた。
増えすぎて缶に収まりきらなかったんだね。
スチール製の工具箱。俺の手紙を保管するために買ってくれたのかも。
新品のような工具箱の中の手紙を見たら、封筒から出ている手紙が何通かあった。
何度も読み返してくれたんだろうなって感じの紙の使用感。
ふう…と息を吐く。
比呂の部屋には、物が少ない。漫画もそんなに多くはない。
CDは沢山あるけれど、仕事が忙しくなってからはあまり買ってなかったみたい。
洋服も・・極端に多いわけじゃない。俺があげたものは全部着てくれてたよね。
時々、ポケットに俺が食べた飴の袋が入ったままの服があって笑ってしまった。
比呂のパーカーを着た。きれいな青。これを着た比呂の背中に何度も俺は抱き着いた。
植物の手入れをしている時。テレビの配線を見てくれてる時。
新しく買ったゲームの設定をしてくれてる時。
俺・・・いっつも比呂を追い回してたね。
俺と体を重ねる時のために必要なものは出かける前に毎回ちゃんと
人目につかないところに片づける人だった。
今思うと・・自分が帰らなくなることがあるかもしれないっていう前提で
日々の行動をしていたのかもしれない。
一年以上先の約束をしてくれるようになったのは・・いつからだったかな・・・
写真も沢山出てきた。林間学校の写真が束になって出てきたから笑っちゃった。
『どこに比呂がうつってんだろ・・』って必死に探したりしてたら、2時間近く時間が過ぎてた。
すっごく可愛い笑顔の写真は、俺も持ってる。小沢に頼んで買ってもらったんだ。
あの頃は、まだ片思いで自分で買う勇気がなかったんだ。
夕暮れまで、まだ時間がある。交換日記を読み返そうかな。
明日は坂口たちと焼き肉だ。何を食べようかな。タン塩は絶対!