願い 2021/04/13 Tue. 22:14 (ユッキーブログ)
昨日は坂口たちと焼き肉に行ってきた。夜景の綺麗な公園で、二人の写真も撮った。
これから先、二人で共に寄り添い歩ける未来が、ずっとずっと続きますように。
そうだ。坂口たち、俺らと一緒のお墓に入るんだって。
急にそんなこと言われてびっくりしたー。
なんか・・・秋山さんがね、俺のことを心配してくれたみたいでね、電話があったんだって。
お墓のことで色々あったから幸村の事を気にかけて欲しいって。
「だから『お墓とは何ぞや!!!』って秋山さんに聞いて、それで麦ちゃんと相談したんだよ」
だって。坂口や麦は比呂のお墓を知ってたから『樹木葬か~・・いいな』って思ってたみたい。
麦がね、坂口のお父さんやお母さんと一緒に、比呂と同じとこに入れてもらえませんかって
ハルカさんに頼んだんだって。スペース的に無理だったら、隣の区画を買いたいって。
知らない人と入れられることになったとしても、家族四人が一緒なら・・って麦が言って
それを聞いて坂口は嬉しくて涙が止まらなかったって言って笑った。
麦のお父さんは反対してるみたいだけど、お母さんは賛成してくれてるみたい。
ハルカさんや秋山さん達は了承してくれて、俺には聞くのを忘れてたらしいけど
比呂は生前に『あいつらが希望するなら』って感じの話をしてたんだって。
それについては今度ハルカさんに聞いてみる。
比呂のことならなんでも聞きたいし、知っておきたい。比呂の家族として。
でも、俺ら死んだ後も一緒にいられるなんて最高だなって思ったよ。
今日から荷物を坂口のとこに移動し始めた。
坂口が借りてきてくれた軽トラにのせてごみ処理場にも何回か行った。
坂口がずっと手伝ってくれてたすかった。昼飯にピザとってお礼した。
「お肉もごちそうしてもらったのに悪いよ~!!」っていいながら
どんどん箱を開けて美味しそうに食べ始める坂口がおもしろかった。
今日は朝から雨だったんだけど、そんなに強く降らなくてよかった。
夕方比呂のとこに一人で行ったんだけど、その時傘をさしていったの。
ずっと昔に比呂がくれた傘。
そしたらさ、車に戻った時に一枚桜の花びらがついてたんだよ。
もう花は全部散っちゃってたのに、どうやってついたのかわからないけど。
濡れてたからティッシュに挟んで持って帰ってきた。
捨てるのは嫌だなって思ったから、花びら一枚だけだけど
押し花にしてみるよ。
うまくできたら栞にして、交換日記に挟むんだ。
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タマゴサンド 2021/04/16 Fri. 16:18 (ユッキーブログ)
今日も朝ご飯をもって比呂の所に行ってきた。
ゆで卵のマヨ和えサンドに、きゅうりとショウガを混ぜたやつ。
少し肌寒かったから厚めのグレーカーディガン羽織って、比呂からもらったひざ掛けも持参。
ゆっくり話したいからね。ちょっとだけ髪に香水もつけた。
珈琲を駐車場のとこのカフェで買って、葉だけになった桜並木を歩きながら空を見た。
俺のカーディガンみたいな色の雲。俺のというか、比呂のだけれど。
今日はタマゴサンドの話をした。ゆで卵の殻をむくのは比呂が上手だったねって。
台所の流しに並んで立って、比呂がむいた卵を俺がつぶして・・
時々比呂の邪魔をすると『集中してるから!』って怒られるからクスクス笑って・・
みっつかよっつ卵をつぶすと『ゆで卵のままでも食べたい』って比呂が言うからさ
半分ずつにして塩振って食べたよね。いっつも。毎回いつも。
色んなパンに挟んだね。食パンやサンドウィッチ用の耳のないパンに・・
フランスパンで作るって言った時は、おしゃれな野菜を買ったよね。
スーパーで俺が赤玉ねぎをカゴに入れようとしたら比呂は紫キャベツを手に持ってた。
チーズも挟んだよね。スライスチーズの豪華版みたいなやつ。
どうせならバターにもこだわろうって話になったけど、どれがいいのかわかんないから
グラム当たりの単価が一番高いやつにしたよね。俺が計算して、比呂に尊敬されて。
レジに向かう途中にアイスコーナーがあって、俺がいつもどおり誘惑に負けて
チョコレートバーみたいなのを手に取ろうとしたら『那央は最近こぼすから』っていって
比呂がパフェアイスみたいなのにしてくれたんだよね。
高いのに。俺、我慢してたのに。
帰りの車の中で、それを食べながら美味しい美味しいって笑ってたら
「那央、自撮りして。動画で。送って」っていうから、めっちゃ可愛い顔を作って
好き好き音頭を歌いながら食べたんだよ。アイスのカップをドリンクホルダーに入れて
片手で撮影しながら・・・ほんとに大変だったんだからね!!!
好き好き音頭、比呂も覚えちゃってたよね。
「頭から離れない・・怖い!!」って言いながら、歌ってくれた。嬉しかった。
タマゴサンド、食パン4枚分しか作らなかったから、あっという間に食べ終わっちゃった。
もっと作ればよかったなって少し思ったけど、俺はもう30だから食べ過ぎは駄目かー。
・・・なんて。
こんな天気だったから、なんだか色々跳ね返せない。
返事のない会話。降ってないはずの雨が俺の手首に落ちる。
比呂を連れて行ったのは、本当は誰なんだろう。
神様なのか・・天使なのか…悪魔なのか・・とにかく誰だとしても
とにかく比呂を返して欲しい。二度と俺から奪わないで欲しい。
最後に一発ぶん殴らせろ。俺の命と交換でもいいから。
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漂白 2021/04/17 Sat. 23:56 (ユッキーブログ)
天気が悪くて気分が上がらない1日だった。比呂のところには手ぶらで行った。
雨が強かったからゆっくりできないだろうと思って。結局、1時間喋ってたけど。
一緒にいないから聞いて欲しいことがたまっちゃうんだよね。毎日通ってるのに。
でも話すとすっきりする。比呂はやっぱりどこにいても比呂だ。
帰ってからはグダグダ。坂口が様子を見に来て「もううちにきなよ」って言ってくれたけど
流石に毎日は悪いから「片付けあるから大丈夫」って断った。
リフォーム中もビジネスホテルとかに泊まろうかなって、ちょっと考え始めてる。
ご飯も食べずにゴロゴロしてて、なんとなくスマホいじってYoutubeの片付け動画を見た。
比呂が時々そうしてたなーって思って。
そしたら急にいろいろ気になって、こんな時間に布巾やカップの漂白を始めてしまった。
窓枠の拭き掃除もしたり、買ってきたにんじんを刻みながら
「へっへっへー・・・にんじんだよ」って天国の比呂をおちょくったりもした。
そんなことしてるうちに、布巾もカップも真っ白になって
なんとなく俺も溜息つけるくらいには元気になった。
なんか今夜は比呂が夢で会いにきてくれる気がする!
比呂が買ってくれたパジャマで寝よ。もらった指輪は全部つけるからね!
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ノータイトル 2021/04/19 Mon. 15:57(ユッキーブログ)
どんなに天気が良くっても
駄目な時は駄目
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満たされる日 2021/04/21 Wed. 16:23(ユッキーブログ)
ただいま
今日は坂口と二人で比呂の所に行ってきた。
なんとなく・・一人で行くと泣いてしまいそうだから
一緒に行ってくれって頼んで。
坂口ね、車買ったんだよ。可愛い外車。
不特定多数と接しないで済む移動方法を確保したかったんだって。
「比呂ちゃん、フィアットの初代パンダ欲しがってたよねー」
運転しながら坂口が言った。
青い空。昨日は比呂の所には行けなかった。
黙って外を見る俺に坂口が話しかける。
「ねえ、昨日さあ・・比呂ちゃんの夢みた」
「え?」
思わず反応する。坂口は笑った。
「比呂ちゃんが庭に水を撒いてるの。ぱーって」
「うん」
「そしたら鳩が飛んできて・・」
「ははっ」
「夢でも鳩と喧嘩してたよ」
「ふはっ・・」
・・・久しぶりに勝手に顔が笑った。
反動で、涙が流れる。
「それを僕と君とで眺めててねー・・君はアイス食べてて・・
僕はサッカーボールくらいのシュークリーム食べてたんだー。
麦ちゃんはいなかったなあ・・・。でもおもしろかったー。
比呂ちゃんってなんであんなに鳩と相性悪いのかな。
カラスとは結構仲がいいのにね」
「・・・そうだね」
お寺の駐車場に着いて車を降りたら小さな鳥が鳴いていた。
「鳩じゃなくてよかった」
って坂口が笑うから、俺も笑った。何となく空を見る。
比呂の桜の木にたどり着くまで、駐車場から5分くらい。
その道のりで不思議なことがあった。
俺の数歩先を坂口が歩いていて、背中を見ながら俺は歩いてたんだけど
ふわって誰かに肩を抱かれたの。
その抱き方が、比呂なの。
俺の右側に立って、左手で時々頭を撫でてくれるあの感じ。
絶対比呂なんだよ。いたの、俺の隣に。
でも俺は、そっちを向けない。
ボロボロと涙を流しながら坂口の背中だけを見て歩いて
桜が見えた時、その感触はふうっとあっさり消えてしまった。
「ひろちゃ~ん」
桜に向かって手を振る坂口。俺の涙は拭っても拭っても止まらない。
振り返った坂口が俺を見て驚く。事情を説明すると、坂口は
「あの人たまに死んだこと忘れるよね?」って笑った。
坂口は、よくそういう。いるって思う時が多いんだって。
いて欲しいって気持ちが強いせいかもしれないけれど
時々、比呂の存在を感じるんだって。
「過去の記憶から引っ張り出してきて勝手に補正してるのかもって
最初は思ってたんだけど、意識全然してない時に感じるんだよ?
しかもすっごく陽気で明るいの。あの人らしいよね」
俺は涙が出過ぎて過呼吸になりかける。
そしたらね、背中を誰かがさするの。誰よりも俺の背をさすってくれた手。
優しくてじんわりあたたかい。絶対これは補正なんだよ。記憶で寂しさを埋めてんの。
でも比呂の声まで聞こえるんだもん。泣いちゃうよ・・・
「那央ちゃん」って。
桜の前で、坂口とたくさん話をした。ほとんど俺が喋ってた。
背中の感触は話に夢中になってるうちに消えてしまったけど
昨日、あんなに神経に障ってた青い空が本当に綺麗に見えて
こういう毎日を繰り返しながら、比呂との再会に近づいてくんだ。
痛感した。涙はちゃんと流さなきゃ駄目だ。
溜め込んでると、思い出が薄まるし、
記憶の中の比呂が溺れてしまう。
疲れた。もう夕飯はいいや。寝ちゃおう、今日は。
窓の向こうで日が沈もうとしてる。
坂口の夢の話を思い出した。
思わずふふって笑ってしまった。
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寝ぐせ 2021/04/22 Thu. 11:34 (ユッキーブログ)
15時間も寝てた。
坂口に起こされなかったら、きっとまだ寝てたと思う。
10時過ぎに起きて、坂口が朝飯用意してくれて
それを食って、植物の手入れをした。
よく眠れた。
今日は片づけだ。分別めんどうで後回しにしてたやつを
調べて分けてゴミ処理場に運ぶつもり。
大きいものは前に運んだから、あとは俺の車に乗るゴミだけ。
いらないものを全部捨てて、そのあと比呂のとこに行こうとおもう。
昨日は泣き顔を見せてしまった。
笑顔を見せに行きたい。
かわいいって思ってほしいから。
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苦しい 2021/04/23 Fri. 14:07 (ユッキーブログ)
来週の月曜からリフォーム工事が始まることになった。
本当は20日からの予定だったんだけど、延期になってたんだー。
社員さんが濃厚接触者になったらしくて、検査では陰性だったんだけど念のため。
特効薬が無い病気って本当に怖いよね。ほとんど軽症って言っても結局運じゃん。
その社員さん陰性でよかったし、今苦しんでる人達が
一日も早く回復されることを心から祈るよ。
工事が始まる。
始まっちゃう。
正直・・・延期の知らせで少しほっとした自分がいた。
荷物は全部出しちゃったけど、比呂の部屋には思い出がありすぎて・・
俺の部屋にも思い出はたくさんあるよ。でも違うの。
俺といない時の比呂の姿が、本当に大好きだったから。
ドアや窓を開けて植物の手入れとかしてるとき・・
俺にはしないような顔をしてた。
緩急のある身のこなし。大好きだった。本当に。
今は動画や写真が残るから、顔も声も忘れずにいられるけど
昔の人はどうしてたんだろう・・大切な人を失った時は。
少しずつ忘れていきながら、日常に戻っていったんだろうか。
それとも今の俺のように・・繰り返し繰り返し思い出しながら
必死に過去へと手を伸ばし続けていたんだろうか。
動画や写真が残るといっても・・全てがうつされてるわけじゃない。
カメラを向けていない時の俺らの幸せは誰が記録してくれてるんだろうか。
忘れたくない思い出は・・カメラに収まってないんだよ
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コンビニ 2021/04/25 Sun. 08:33 (ユッキーブログ)
コンビニに行ってきた。お腹がすいて。
今日、少し寒いね。今だけかな。
明日から工事。壁を取ってクロスの張替え・・
窓枠を比呂の部屋に合わせるようにしてもらって
あ、床も。ちぐはぐにならないようにしてもらう。
廊下側に窓を増やして・・あとはベランダの拡張。
もともと比呂が考えてた感じに近づくね。
連休もあるから5月中旬以降の完成になるらしいけど
それまでは坂口が『うちに泊まれ』って言ってくれるから
その気持ちに甘えさせてもらおうと思ってる。
騒音のない時とか夜とかは別に一階にいてもいいんだけど
坂口が心配してくれてんの。俺が悲しさに負けるんじゃないかって。
そういうことを、あいつは言葉に出して俺に言ってくれるから
甘えられる。自分でも不安だったし・・・
多分比呂も・・こういう時に、俺を一人にさせたくないだろうから・・。
買ってきたパスタとパン食べよ。お菓子もいっぱい買ってきた。
比呂は口数は少なかったけど、ちゃんと会話をしてくれる人だったから
思い出せる事が沢山あって嬉しい。
目を見て話を聞いててよかった。言葉と一緒に表情も思い出せる。
これは生きていくためのすべだ。比呂のことが大好きだから。
今日は麦も一緒に比呂の所に行く。麦と坂口と俺。
比呂も入れて俺達は家族なんだって。
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ありがとう 2021/04/26 Mon. 06:47 (ユッキーブログ)
昨夜は比呂の部屋に寝た。
ベッドはないから寝袋で。
寝袋とランタン。
キャンプのためではなく『何かあった時のために』って
比呂が買っておいてくれたものだ。
環境が変わることで、思い出せなくなることもあるかもしれない。
後悔はきっとする。でもすすまなきゃいけないから。
施工業者さんが言ってたけど、いずれ壁をとって一部屋にするつもりの設計だったから
床板も窓枠も俺の部屋のとは違うけど一般的に流通してて廃番になりにくいものを
選んであったんだって。それは比呂の部屋の方だけではなく俺の部屋の方も同じだって。
最終的に俺と別れて一人で暮らすつもりだったのか
親父を説得しきる自信があったからなのかわからない。
・・いや・・、比呂は一人になるつもりなんかなかった。
壁を取っ払って部屋をひとつにした時に
どちらの部屋にも合わせられるようにしてくれてたんだもん。
それに・・お墓。
本当は、この先何十年・・必要になるはずじゃなかったのに
俺の居場所をちゃんと用意してくれてたことが証明してくれてる。
最期のあとも、隣に那央をって・・・。
坂口が朝ご飯作ってくれたんだって。だからもう行くね。
比呂、・・昨夜さあ、俺に添い寝してくれてたよね。
わかっちゃうんだよ、俺は。
どうもありがとう
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紺野さん 2021/04/27 Tue. 10:34 (ユッキーブログ)
昨日、工事が始まる前に紺野さんが来てくれた。
空っぽになった比呂の部屋と俺の部屋の写真を撮ってくれて
施工業者さんに挨拶もしてくれた。
紺野さんと会うのは久しぶりだったから、少しだけ緊張したけど
本当にありがたかったー・・。
坂口と二人で『挨拶とかどうする?』って言いながら
部屋中ぐるぐる回ってたとこだったから。
紺野さんは挨拶が済むとすぐに帰ってしまった。
「こんな時だからね。また世間が落ち着いたら遊びにおいで」
って言ってもらえて涙が出るほど嬉しかったよ。
坂口が「僕も行きます」ってすかさず言うから笑っちゃったけど。
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ハルカさんに、麦たちのお墓について聞いた。
なんで麦たち本人すら何も考えてなかったお墓の事を
比呂が生前に許可出してたのか・・どうしてもそれを知っておきたくて。
ちゃんと教えてもらったよ。
・・比呂達お墓の契約の時、秋山さんが坂口の話をしたんだって。
坂口は一人っ子でさ、自分たちの代で坂口家が終わっちゃうから
お墓とか困るんじゃないかなーって。
どうせなら一緒にどうか声かけてみたらって比呂に言ったみたい。
でも比呂は「今はまだ・・ここの事は話せないから・・」って言うんだって。
「なんなら俺が麦たちの分も仮契約します」とかいって・・
「あいつらに話しちゃったら、那央にだけ黙ってることになっちゃうから」って。
「1対3の『1』が那央じゃ困るから・・・だからまだ麦たちには言えない。
那央が知らないところでも、俺があいつを一人にはしたくない。
もう少し時間がたって・・・那央のお父さんに認めてもらえたら
那央に話して、そのあとで麦たちにいう・・その順番は崩せないよ」
・・・そんなことを言ってくれてたんだって。
秋山さんもハルカさんも『考えすぎじゃない?』って言ったんだけど、比呂は首を横に振って
凄くまじめな顔で「今でさえ墓の事を言えてない・・これ以上・・内緒ごとは・・」って言うんだって。
「いつかは俺がちゃんと話すけど、でももし・・・もしその前に俺が死んだとしたら
那央に説明できなくなっちゃうじゃん。墓を買った理由も、何もかも。
那央の場所は用意したよ?だけど、お父さんを説得できないうちに俺が死んだら
そういうのも伝えらんないし・・・
那央には何も言わないのに、俺が麦や坂口を誘ってたなんて知ったら那央がどう思うか・・・
那央は俺が話せばわかってくれるけど、俺がいなかったら話せないじゃん。
・・・那央は十分苦しんできた子だから・・・そういう理由で嫌な思いをさせたくない」
すごく真剣にそんな話をするから『生きてそばにいてあげればいいだけのことじゃない』って
ハルカさんが言ったんだって。そしたらね・・・比呂が言うんだって。
「生きていられたら何でもできるけど、それができなくなるのが死んだときだから・・
俺が那央よりも先に死ぬって・・・そういう前提で考えないと・・・準備ができない。
どんな死に方だとしても、那央を残せば悔いが残るよ。それは俺の問題だから俺が背負う。
けど、残された那央は何も悪くないじゃん。なのに辛い思いは全部背負わせなきゃいけない・・
生きてるうちしか手が打てないなら、残してしまうかもしれない那央の事を考えたい。俺は。」
ハルカさん達・・・何も言えなかったって。
俺もそれを聞いて、しばらく言葉が出なかったよ。
・・・・『十分苦しんできた子』だったのは・・・比呂じゃん。
・・・比呂がいなくなってから、俺の知らなかったことが次々とでてきた。
遺言状がのこされてたことや・・お墓の契約の事もそう。
比呂と俺の部屋が壁を取っ払ってひとつにしやすい作りになってたこと・・・
麦や坂口のお墓の件もそう。なんかもう・・色々と。
その全部で比呂は『それを知った時、那央がどう思うか』って考えてくれてたんだね。
すぐに自信を無くす俺のために。
俺のことを二度とひとりぼっちにしないって言ってくれたのは
高校一年生の・・俺達が付き合う前だったんだけど
その頃の約束を守り続けてくれたのって・・・・
もしかしたら『友達として』だったのかもしれないね。
俺は比呂に恋人として大切にしてもらった。
家族になれてからは将来の話を沢山してくれるようになった。
でも『ひとりにしない』って約束は・・親友として守ってくれたんだと思う。
俺は比呂と恋人になった時に、友達ではなくなったと思ってたんだけど
比呂は友達としても、恋人としても・・家族としても大事にしてくれてたんだね。
どうりで幸せだったわけだ。