週末のたびに比呂のそばで過ごす生活を繰り返している。
前よりも、たくさん比呂と一緒にいられる。それがとってもうれしい。

今週は、日曜が比呂の誕生日だから、金曜の夜から日曜の夕方
京都に戻るまで、めいっぱい比呂を甘やかしてあげたいなーって、
うきうきしながら新幹線に乗って、新横浜に着いたんだけど

俺を迎えに来た比呂の運転する車、助手席。
比呂から打ち明けられた話。比呂のお母さんや、親戚の人についての話。

俺はどうしていいのかわかんなくて、作り笑いをしたら涙が落ちちゃって、
泣きたいのは、比呂の方なんだろうに、・・・成長できない駄目な人間。

だけど比呂は、一通り、とても簡潔に俺に説明をしてくれたあとは、
元気に別の話題で俺を笑わせて、涙は一滴も流さず、
幸せそうな笑顔を、俺に何度も向けてくれた。


その後、金曜日・・・土曜日と、俺の心のどこかに、
比呂から打ち明けられた話がひっかかっていたんだけど、
あまりにもいつもどおりな比呂の、優しい気持ちに甘えて俺は、
結局いつもとかわらずに、もらってばっかの幸せに浸っていた。


だけど・・


だけど、本当は、こんなじゃ駄目だってわかってる。

比呂の心には確実に、大きな傷が、またいっこできて、
もしかしたら、もう比呂の心は傷だらけだから死んでしまっているかもしれなくて、
だから何があっても取り乱さなくて、

涙一滴流すことすら、できなくなっているのかもしれない。

比呂をおいてなんかいけない。京都に一人で帰れない。
でも、比呂にその気持ちを伝える勇気がない。
だってなんていえばいい・・結局自分が不安だから、一緒にいたいっていうだけなのに、
押し付けがましい言葉を並べて、『君が心配だから。』とか言えってか。・・・言えるわけがないよ。

沼田さんとこでバイトしたあと、店に戻ったら比呂たちはいそがしそうで、
『手伝おうか?』ってきいたら、『バイト終わったばっかだろ。こっちは大丈夫だから、休んでて。』って
比呂が言った。秋山さんも、『おう。こっちは大丈夫だよ。』って言ってくれて、その言葉に甘えることにした。
正直、少し疲れてしまっていたし。

比呂の部屋、なんとなくパソコンつけて比呂の誕生日をググった。『愛犬の日』とかかいてあって、
ちょっとなごんで、ふうって息はいた。それだけで少し心が軽くなったから、ついでにというか、なんとなくというか、
5月14日も、調べてみたんだ。

そしたらね、日本の記念日的なもんじゃないんだけど、ローズデーってのが出てきて、
ん?と思ってよくよく見たら、恋人に花束贈る日?みたいな事が書いてあって、

これだーーっ!!!ってさ。

あわてて自分のカバンから、レポート用紙と筆記用具取り出して、
一生懸命作戦考えて、一人じゃ無理だって思って、すぐに沼田さんに電話して、
この作戦に協力してもらうことにした。沼田さん経由で秋山さんにも協力をお願いする。

目的がはっきりしたことで、俺の心は少しだけ安定した。
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