2007/6/6 (Wed.) 11:51:55

朝練やすんで、遅めに学校に行く。謝りたい。やっぱ俺が悪かった。
考えてみたら比呂は、何も悪くないんだ。
一旦教室にいくと、小沢が坂口と一冊の漫画を一緒に読んでいた。
そんな2人に俺は言う。『比呂にあやまってくる。』

小沢と坂口が、無言で俺にガッツポーズを掲げてくれた。
体育館が見える位置で、バスケ部の練習が終わるのを待つ。
早くあいたい。早く顔がみたい。抱きしめてほしい。キスして欲しい。
すこしして、先輩達が体育館からでていって、比呂が顔を洗いに水道に向かうのが見えたから
俺は走って比呂を追いかけた。


『比呂。』俺の声を聞いて、比呂が振り向く。
比呂はちょっとびっくりしてたけど、それでもにこっと笑ってくれた。

そしたら・・・。

そしたら俺・・その笑顔見たらなんだか俺・・。何も言えなくなってしまった。
安堵からじゃない・・・そうじゃない・・。もっと嫌な・・・なにかにとり付かれてるような・・。

比呂が顔をばしゃばしゃっと洗うと、そのまま部室に戻って荷物を持ってきた。
『着替え・・いいの? 』
『いいよ、教室で着替えるから。』
そういって、俺の方をじっとみる。


『なに?』
『・・・え?』
『話あるからきたんじゃねえの?』
『・・ああ・・。』
『・・・・・。』
『・・・あの・・・。』
『・・・?』

真剣な顔で、俺の話を聞こうとしてくれてる比呂。



魔が差した。



『もうおわりにしない?』
『・・・・は?』
『・・なんかつかれるっしょ、俺と付き合っても。』
『・・・・・・。』
『・・俺もさ、比呂に振り回されるのに疲れたんだ、お前怪我ばっかしてるし、
喧嘩もするしさあ・・。』
『・・・・・・。』
『俺は結局一般人で、お前みたいな奴と付き合う度量みたいなものがないんだよ。』
『・・・・・・。』
『一般家庭でぬくぬく育った俺に・・お前を支えられるわけがねえんだよね。』
『・・・・・・・。』
『俺から告ったのに、ごめんね。迷惑ばっかかけてわるかった。』


言いながら俺は、なんかもう、全てが壊れていく感覚を全身で感じ
目の前の比呂の表情が、どんどん険しくなっていく様子を、じっとみていた。

一番伝えたかったことは・・ごめんねって・・もっと素直に伝えて、
大好きだよって・・・お前だけが好きだよって・・・

俺、本音をなにもいってねえじゃん・・・。


比呂は、ふーってため息ついて、しばらくうつむいて考えた後、
うん・・って、何回かこくり・・とうなづき、小さな声で話を始めた。


『うん・・・わかった。じゃ・・もう電話とかもしないようにする。
・・・色々と・・嫌な思いをさせて・・俺の方こそ悪かったと思う・・・。
せっかく告ってもらったのに・・大事にできなくてごめん。
でも・・俺は・・お前と付き合えて、本当に毎日楽しかったよ。』

ハっとした。


俺が言おうとしていたことを、比呂が言ったから俺は正気に戻った。

でも、もう遅い。遅かった。

比呂は俺の肩をぽんぽんって叩いて
『じゃ、俺、着替えないといけねえから。』
といい、教室の方に歩いていってしまった。

俺はしばらく立ち尽くした後、教室に戻って歩いていく。教室に比呂はいなかった。
坂口と小沢が俺を見た瞬間、テレテレした顔で駆け寄ってくる。
『どーなの!うまくいった?』『ちゃんと旦那さんにあやまったかい?』

俺は2人の顔を見て、腰が抜けてしまって立てない。
体が震えてしょうもなくなって、坂口におんぶしてもらって保健室に行った。

ベッドに寝かされる。熱まで出てきてた。
小沢は比呂を探しに行ってくれてる。

『どうしたんすか?仲直りしなかったの?』
坂口に言われて俺は頷く。坂口が呆れ顔でため息をつく。
『まあとりあえず・・・ちょっと休んでさ。頭冷やしな。ね。』

ガラっと保健室のドアが開いて、小沢が俺のとこに駆け寄る。

『別れたってなに?』
『・・・・。』
『・・別れたってなんだよ。』
『・・・・・・。』

坂口が小沢にといかける。
『なにそれ、誰が誰と別れたって?』

俺は坂口にいってやった。

『俺ら、さっき別れちゃったんだ。』
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