Date 2006 ・ 10 ・ 22

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部活があった。対抗試合で、電車でみんなで出かけた。
試合は二年生がメインで、その中に麦がまぎれて、とりあえずピカ工快勝。
で、再び電車にのり、街まで帰る。

駅前で二年生と別れて、更に一年もばらばらになり、俺と麦と比呂で、飯を食いに行くことにした。
(浅井はご両親が久々の休みだから、家族で旅行にいったらしい。)

腹が減って死にそうだったので、ハッピーサニーヒルズ(ファミレス)に直行。
麦が激辛ビーフカレーセット、俺がエビフライ定食、比呂が塩サバ定食(めずらしい・・)を頼んで、
水飲んで飯の到着を待つ。その時、小沢からメール。俺は返事を打つことにした。

すると、麦がテーブルに突っ伏してる比呂の髪をもてあそびながら話をしだす。
『俺こないださー。バイト先で、バンプすきっていったら馬鹿にされたー』
比呂はむくっと、顔を上げる。『えー・・。なんで・・?』
俺はメールを打つふりしながら、2人の会話を黙って聞いていた。

『ミーハーだなっていわれた。俺の愛するバンプ様をよお。』
『・・・へえー。』
『ちょいとショック。』
『ああ、それなんかわかる。好きなもんを茶化されるとムカつく。』
『だよな。俺、熱狂的に藤君尊敬してんじゃん。だからさー、くやしくてさ。』

俺は、高校入ってから、この二人の影響でバンプ聴き始めたから、ミーハーな印象ないんだけど・・。
むしろあの世界観が、すごいというか、圧倒されるし・・ミーハーなんていう人は、よっぽど音楽通なのかな。

俺はそうおもったけど、比呂はまったく真逆にとったらしい。

『気にすんなよ。そんなのさ、ろくに音楽をしらねえやつの戯言だよ。』
『でも、すげえ詳しい人なんだぜ。そのひと。』
『詳しい人が皆、音楽知ってるとは限んないよ?』
『・・・・?』
『ほんとに音楽好きな人間がさー、他の人の好きな音楽を貶したりしないよ。』
『・・・。』
『その人がバンプをさ、ミーハーだって思うのは自由だよ。好みの問題だし。
でも、お前がバンプ好きだって知ってるのに、そんな風に言うのは駄目じゃん。
趣味が合わなかった、それだけじゃん。それをわざわざミーハーとかいうやつは
その人の性格の問題。バンプ関係ない。お前は被害者だから怒って当然だよ。』


麦は、水のコップを飲んで、じっと黙る。
すると比呂が、テーブル下で麦の足を蹴飛ばした。

『どれがいいとか、どれが駄目とか、そんなの音楽にあるわけがない。
個々の好みの問題だし、これがいいとか悪いとか、思うこともあるとおもうけど、
けど、だからこその、色々なジャンルじゃん。
色々なバンドがあって、みんなが同じものを目指さないのも、そういう理由だからじゃん。
自分の生活に必要がないバンドなら、聴かなきゃいいし
必要だったら聴けばいいし、熱狂的に好きになっていいじゃん。』

『でも・・・さー・・。ミーハーってさー・・すげえショックな言葉じゃねえ?』
『・・・・たしかにショックだけどー・・・。』
『・・・。』
『お前にはバンプが必要で、その人には必要じゃなかったってことだよ。』
『・・。』
『気にすんなー。もういっそ忘れろっ!』
『ふふ・・。』
『所詮他人の価値観の中での意見だしさ。』
『・・・。』
『・・腹減ってるから弱気になってんじゃないの?お前。』
『おちつけ、俺は(腹減ると機嫌悪くなるような)お前とは違う。』

そこで、料理が運ばれてきた。
俺は携帯をパタンと閉めて、ぐるぐるとする頭で必死に考えて、麦にこう声をかけた。

『俺、ロストマン好きだよ。』
そしたら麦が、『だろ。俺もあの曲好き。』っていって、すっげえにっこりしてくれたんだ。


俺たちは、こんな些細なことで、すげえ心傷つけて、真剣に話し合ったりする。
自分が何の曲が好きだとか、好きなバンドけなされてむかつくとか
そんなことが、ため息の種になって、心の重荷になる。
逆に、好きなバンドが同じだったり、自分の好きな曲を
友達が『俺も好き』っていうと、なんか死にそうなくらい幸せになってさ

命に関わるようなことじゃないのに、そんなことが日常の大事件になったりするんだよな。

飯のあと、麦は用事で家に帰って、俺と比呂は一緒にバイトに出た。
更衣室で服に着替えてる時に、俺、比呂に『比呂はさ・・今はどんなバンドが好き?』ときいた。
そしたら比呂が俺を見て、『俺は色々。それよりさー、お前ってどんなの聴いてたの?中学の頃とか。』
とか聞いてきた。やべ。ほぼアイドルしかしらねえんですけど・・・。

『比呂は何をきいてた?』
『俺は、グレイプバインに一時期すげえはまってた。小学校の頃とか』
『ぐ・・。』

・・・・・・俺、なんかなんていったらいいのかな・・。これ・・。
でも、全然浮かんでこないから、思い切って、真実の俺で

『は・・・はろぷろ系・・・。』

そしたら比呂が、わあーーーーって顔になって
『俺さ、小学校の時友達がモー娘、超好きだったんだけど!!あと、ミニモニ。』

・・・・・う・・・・そ・・・。

その後比呂は、ミニモニじゃんけんピョンを、完璧な振り付きで、完唱してくれた。
・・つ・・つじちゃんパートだったんだね・・・。
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