Date 2006 ・ 11 ・ 06
くやしい

今日は合同体育がバスケだった。
バスケだと、麦がやたらとかっこいいから、比呂の気をひかれちゃいそうで・・・
イヤだなって思ってたら、比呂は突き指のため別メニューだった。

別メニューというのは、体育館の隅でストレッチという簡単なもので
それ聞いて俺は、なんかホッとしたんだけど・・そしたら、俺らクラスのやつが
『紺野でないなら、差がつきすぎるから、佐伯もはずしてよー。』とごねだす。

嫌な予感・・それは的中した。
麦も、比呂と一緒にストレッチすることになってしまったのだ。

同じバスケ部なのに、俺はさほど上手くないから、誰にも何も言われない。屈辱。
落胆する俺に小沢が『離れてた方が、逆に紺野のこと、じっくりみれるじゃん』とかいってくれたけど、
視線の先の比呂のとなりに、いつも緑がいるんだよ・・・。
2人で仲良くしてるのを、離れたとこで見るなんて耐えられないよ。

そんなこんなでやる気ゼロな俺は、ぼんやりと、コートのそばで立っていた。
すると突然『ユッキーどけっ』という比呂の声。次の瞬間、俺の体がぶっとんだ。
そしてそれと同時に、ガシャンという音。

俺は比呂に抱きかかえられる形で、体育館の壁に激突してた。
その目の前には、ガラス窓が窓枠ごと外れて床に落ちたらしく、ガラスが散乱していた。

びっくりした。

先生が慌てて走ってきて『大丈夫か?』と声をかけてくる。
『あー、大丈夫大丈夫。』比呂は言ったけど
右腕に線状の青あざができてて、所々切り傷が出来てる。

麦が真っ青な顔をして、俺たちに駆け寄ってきた。
当然体育は中断。俺と比呂は先生に付き添われ保健室に行った。

幸い大怪我はしなかったけど、比呂は右手の打撲らしい。
小沢が言うには、比呂が走ってきたと思ったら、体育館の二階の窓がおっこちてきて
で、ぶつかりそうだった俺を、比呂が抱きかかえて、あいた右手で窓枠を払いのけると、
窓は床に落ちてガラスが割れたそうだ。

光が丘は風強い事で有名で、こないだ校舎の窓枠の補強工事に入ったとこだった。

俺はほっぺに少し傷が出来たけど、怪我と呼べるようなものじゃなかった。
だけど比呂は右腕が腫れちゃって・・俺がぼんやりしていたせいだ。

落ち込む俺を見兼ねたのか、帰宅後の俺を見舞いに来てくれた小沢。
好きなアイスを買ってきてくれて、だから2人でそれを食うことにした。

アイス食いながら、小沢が話し出す。

『何で紺野、あのとき、ユッキーの事を見てたのかな。』
『・・窓枠落ちてきたから・・・気がついたんじゃねえの?』
『でも、あいつがなんか叫んだ時、まだ窓枠おちてなかったんだよ?』
『・・・・。』
『いっくら紺野が足速いからって、窓落ちてからお前のとこにいったんじゃ、間に合わなかったよ。』

・・・・・。

俺のこと・・・見ててくれた?・・・なんてことねえか。
きっとたまたま視界に俺と、落ちそうな窓枠がはいったんだ。
たまたま・・・偶然ってやつだよ。
だって俺、紺野に見とれられるような、魅力のかけら、これっぽっちも持ってねえもん。


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