2009/3/3 (Tue.) 23:08:06

那央がいきなり入ってきて、わんわん泣きだすから本気でびびった。
『・・どうした?』・・そう聞いたら、『雪が降ってる。』って言って泣く。

『また比呂が死ぬと思って・・』って言うんだ。
『置いてかれたらどうしようっておもって』って。

そんなことで・・泣くなよ。びっくりしただろ。心配するし。

『死なないよ。雪が降ってきたのは知ってた。
さっきから俺も見てたんだ。カーテンあいてるだろ。』
『おじちゃんは?』
『医者の先生と話してる。会わなかった?』
『・・・そんなのっ・・知らないよっ。』

病室のドアのほうを見たら、部屋の中になんか落ちてて
俺はベッドから立ち上がってそれを手に取る。面会謝絶の札だ。
無視したのかこいつ。さすが那央だ。
俺は自分でドアの外側に、その札を戻してドアを閉めた。

そんでまたベッドに戻る。泣いてる那央。かわいいな・・。

『泣くなよ。死んでねーだろ。』
『うそいえよ。一回死んだじゃねーか。』
『でも今は生きてるし。ほら。足もあるぞ。』
『馬鹿比呂っ。。死ねっ・・。』

・・・・・こいつ・・・。

『那央。』
『・・・・・。』
『なーおー。』
『・・・・もう駄目だ・・・。』
『なにが。』
『今思い出した。』
『・・・・何を。』
『弁当・・・つくってきたのに・・・』
『弁当?』
『・・比呂が全然・・飯食わないから・・作ってきてやったんだ。なのに・・・
俺・・死に物狂いでダッシュしてきたから・・絶対弁当箱のなかでグチャってる。』
『・・・・弁当?』
『・・・・・うん・・・。』

那央は自分がしょっていたリュックをおろして紙袋を出した。
そんで、俺から見えないようにして、弁当箱のふたをずらして中を見る。

『最悪だ・・・。』
『・・・・・。』
『最悪すぎる。』
『なんだよ。くれよ。』
『だって・・から揚げがずれてる。』
『・・・・。』
『絶対あれもくずれてる。』
『あれ?』

俺が聞くと、那央が涙をぼろぼろ流していった。

『ごはんに・・はーとを・・ピンクの甘いやつで・・一生懸命書いたのに・・・。』

・・・・

那央はすごいなあ・・・。なんでこんなにかわいいのかな。
涙の粒を指で拭いたら、その指を握って、びーびー泣く。

『食べたい。ちょーだい。』

心の底から思ったから言った。さっきまで、水一滴すら飲みたくなかったのに
この子が一生懸命作ってくれたハートをくいたいなあっておもった。
『でも・・もうめちゃくちゃだし。』そういってごねるから、俺は一生懸命考える。

『じゃあ、もし、ハートが崩れてなかったら俺、那央にちゅーしてやるよ』
ためしに言ったら那央が俺を見た。『ほんと?』とかいう。
・・いまさらチューとかで釣られてんなよ。
『でもな・・駄目だったらちゅーしてもらえないんだよね・・。』
とかぶつぶついうから、俺が弁当のふたを持って、ぱかっとあけた。

なんだよ・・。

全然きれいなピンクのハート。

『すげえうまそうだね・・。』って言いながら顔を上げたら
『うまそうだね』・・の『そ』ぐらいのとこで
那央が俺に抱きついて、勝手にちゅーして、また泣き喚く。

とっさに俺、弁当死守してた。いきなりはやめろよ。弁当おっことすとこだっただろっ

弁当のふたと、なかみはいってるやつで両手がふさがっちゃったから、
いったんそれを、サイドテーブルにのせて、思いっきり那央を抱きしめた。
そしたらなんか、すごくほっとしちゃって・・

力が抜ける。体もなにもかも。那央がぜーんぶ俺から落っことしてく。
かわいいなー・・・もうそれしか考えらんないや。
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