伝わった。きっと。

比呂に会えたよ。うん。

俺・・、夕べ一晩、色々と思い出をたどって・・自力で自信をつけてさ・・
俺が作ったものなら絶対、比呂は食う!って信じて、朝から必死に弁当作った。
俺が会いたいって言って泣けば、比呂は絶対あってくれるって信じて
髪の毛もしっかりとかして、最近一番大好きな服着て元気に家を出た。

そしたらさ・・雪ふってんの。心臓が止まるかと思った。
ほんとにそれくらい一気に不安が押し寄せて・・ちゃり立ちこぎで病院まで急いだ。
比呂が死ぬって・・思ったんだ。

どうやって病室までいったのかわかんない。
気がついたら俺、比呂のベッドの上で泣いてた。

比呂はちょっとぼけてたけど、案外まともで泣いてもいないし
そしたら安心しちゃってさ・・余計泣けて・・
だめもとで弁当差し出したら・・食ってくれたよ。
飯だけだけど。でもうれしかったなあ・・・。

俺の弁当食ってるとき、おじちゃんが病室に入ってきて
超びっくりされた。あたりまえか。
俺、面会謝絶の札スルーして部屋に入っちゃたから。

おじちゃんは、比呂が飯食ってる姿を見て
泣きそうなくらい喜んでた。
で、気を使ってくれたのか、『幸村君、比呂みてて。』っていって
買い物にでかけちゃったんだ。

比呂がずっと俺の手をにぎってくれてて、それがうれしくて、俺ね・・気持ちを言った。

『比呂が死なないでいてくれてよかった。』って。

比呂がふふって笑って黙ってるから、俺、比呂のおなかに抱きついて話す。

『比呂のお父さん・・死んじゃったじゃん。』
『・・・うん。』
『俺・・比呂も死んじゃうんじゃないかと思って・・すごく怖かった。』
『・・・・・。』
『比呂が死んだら、俺もすぐ死んで追いかけようと思ったんだよ。』
『・・・馬鹿いうなよ・・・。』
『だってほんとに思ったから。』
『・・・・。』
『でも・・比呂が死なないでくれて・・よかったー・・・。』
『・・・・』
『本当に・・・よかった・・・。』
『・・・・・・。』
『比呂は・・お父さんがしんじゃって・・悲しかったよね・・。』


どきどきしながら聞いた。比呂は俺の頭を撫でながら、うなずく。

『うん。そうだね。』
『・・・・。』
『・・・うん。』

俺の髪を撫でながら・・比呂はいった。それを聞きながら俺は思った。
比呂を迎えにこようとしている人が、たとえおっくんだとしても、俺は両手を広げてそれを阻む。
悲しい気分は癒せないかもしれないけど・・でも・・
その上から幸せをかぶせて思い出を幾重にも重ねたら、比呂は凍えずにいられると思う。
悲しい気持ちも変換されて、今よりも楽に向き合えるようになるかもしれない・・・

駄目かもしれないけど・・かなうかもしれないじゃん。
いいほうを信じたいよ。俺は。


明日も病院に行く約束をした。
楽しみだよ。だって比呂に会えるんだもんね。

2009/03/03(火) 23:50:31
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