『ごめん』

比呂が電話かけてきてくれたー・・・。話・・・できた。
『今日はなんか・・悪かった・・。ごめん。』って、比呂が先に謝ってくれたんだー・・・。

電話の向こうで車の音が聞こえたから、外なのかなーと思って
『今、外なの?』ってきくと、『今、家に入るとこ。』って言われた。
そのすぐ後に、ガタンって音がして、回りがすごい静かになり
パチンって音がして、ガサガサって音がした。

『何の音?』
『ん?』
『ガタン・・パチン・・・ガサガサ・・・・。』
『・・・・・・・・。』

5秒ぐらい沈黙。そのあと、比呂がかすれかけの声でいう。
『ガタンってドアしめて、パチンってかぎかけて、ガサガサってマフラー取った。』
『あはは。』
『おじちゃんがー・・撮影で東京にいくんだけど、
静岡までくれば会えるとか言うからいってきたんだ。』
『そうなの?』
『ああ、うん。乗り換えあるから遅めの昼飯食おうっていわれて。で、飯食って
おじちゃん見送って、帰りに駅に降りたら、ゆらに会って。』
『坂口?』
『そう。で、2人で夕飯くってきた。』
『そうなんだー。』
『そうなんだよー。』

『・・・・・・・。』
『ごめんな?俺、言い方悪かった。気にしてたろ。』
『・・・したよー・・・。泣いちゃったし』
目をつぶって比呂を想像する。甘えたいー。俺は枕をだきしめる。
『泣いたのかー。ごめんなー。』
『・・・勉強が手につかなかった・・・。』
『うそだろー・・。どうすんだよ。あさってからテストじゃん。』
『・・・なら明日・・いっぱい抱っこして?』

『は?』

『は?ってなんだよ!は?って!甘えさせてって言ってんの!』
『・・俺は別にいいけど・・お前はそれでいいのか?ん?』

いいにきまってんじゃん!おばかー。とりあえず、会う約束。よかったー・・
・・・すっごい・・・ほっとした・・・。

安心したとたんに、比呂の後ろで次々と鳴る物音が気になって
俺は、いちいち比呂に突っ込む。

『何?今のどさ・・。』
『タウンページが落っこちたドサっ。』
『・・ぺらぺら・・・・。』
『・・どこかいい飯屋はねえかな〜ぺらぺら〜。』
『・・飯屋?!なんでなんで?』
『那央ちゃんは、何が食いたいのかな〜ぺらぺら〜。』

胸がトクリと音をたてる。

『まって!俺もタウンページもってくる!!!』
携帯を置いて階下にはしり、寝てた母ちゃんたたき起こして、
タウンページの場所きいて探して、見つけた俺は階段を駆け上がった。

『比呂!あった!』
『・・・・なにが?』
『タウンページ!』
『・・・・・・・ほんとにもってきたのかよ、お前・・。』

・・・あれ?俺、なんで、タウンページもってきたんだっけ?

俺が次の言葉を見失って黙ってたら、比呂が『那央、時間大丈夫か?』って
俺に言う・・・。どうしよう・・電話きられちゃう・・。
俺は『まだ話がしたいよ・・・・。』って小さな声で比呂に言った。
そしたらちょっとだけ黙った比呂が『じゃあ、タウンページデートしようか。』っていうの。
えー・・?なにそれ。

『じゃあ。喫茶店のー・・・ページ開けー。』
『なになに?』
『みろよ、この広告。このプリン、お前、超食いそうじゃね?』
『あっは!わかったわかった。マジうまそうー。』
『じゃあ、今度プリン食いたくなったら、いこう。』
『うんっ。』
『なんか、腹減ったなー。じゃ、食い物屋のページー。』
『食い物やってなににする?』
『そうねー、やっぱ魚のうまい店がいいね』
『・・そういうのどういう項目で調べるのかな。』
『知らね。』
『なんだよ、役立たず〜!!』

愛をこめて。

俺はとにかく、ありったけの愛ではしゃぎまくった。

30分くらい話して、電話をきる時間・・・・。
さみしくって、比呂ー・・っていいまくったら、比呂がすごいやさしく
『あした、仲良くしような。』っていってくれた。
やっぱ一番だ、比呂が。頼れる、そんで、すごい安心感。
明日が待てないよ・・いいなー明日の俺。

けどこんなにぬくもりいっぱいの、話が出来てる俺も幸せもん。

俺は最後に、一応・・気になっていることを聞く。
『比呂・・・・俺の事しからないの?』
『は?なんで?』

喧嘩のことで、比呂が全然怒らないから、変な気分だった。
俺がだまっていると、比呂は、すぐにそれについて話す。

『叱るって何?潤也とのあれ?』
『・・・うん・・。』
『別に叱るようなことねえよ。でもちょっと話はしたいけど。』
『・・・・。』
『でも、電話で話すようなことじゃない。いつか時間のあるときに話そう。』
『・・・説教?』

恐る恐る俺が言うと、比呂は、爆笑して俺にいうんだ。
『お前はずるいよなー。そうやっていっつも、最後にかわいいこと言うんだから』


・・・電話切って・・枕を抱きしめる。比呂の声が耳に色濃く残ってるうちに
一人エッチ。早く射精をしたかったから、夢中になって手を動かす。
『比呂・・・んっ・・・ひろ・・・。』ってかんじに、名前を呼びながら手を動かすと
比呂が俺の全身に残していった、愛の痕跡が浮かび上がってきて
どんどん俺を追い詰める。俺は完全に記憶のなかの比呂に抱かれていた。

欲を吐き出して、俺は汗ばんだデコをベッドにうずめる。
そのあとも、しばらく体を撫でた。いつも比呂がしてくれてるように。

比呂に愛されてる体・・・俺の体・・。
比呂は、俺の体を今夜も、触りたかったと思ってくれるかなあ・・


あ・・・。比呂に謝りそびれちゃった・・・。
明日いっぱいあやまろ・・・・。
そんでいっぱい抱きしめてもらお。わーい。


2007/12/05(水) 23:33:29
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