いい子。

連休なんかあっという間だね。
今日は部活があって、そのあとに比呂が2時間だけバイトにいった。
働きすぎです。僕の彼氏。でも、仕事を頑張ってえらい。

俺んち家族が、姉ちゃんの子供を連れて
どこだかの遊園地にいくっていうから俺の家で2人ですごした。

とりあえずベッド。部屋が寒かったから。
暖房がきくまで、毛布に包まって、キスしてはぎゅっと抱きあって
俺はすっごいいきおいで、比呂に甘えた。
後ろ髪を触ったり、服に手を突っ込んで腹筋を触ったり
意味もなく笑いかけて、笑い返してもらっては安心したり。

いつ親が帰ってくるかわからないから、服を脱いだりは出来なかったけど
とにかくひたすら、いちゃついた。で、比呂が幸せそうな顔で眠る。
ただいてくれるだけで、それで幸せ。

いてくれるだけで、俺は幸せ。

俺のベッドに比呂が寝るのって久々なのね。
もー。俺の生活圏に、比呂がいるってのがすっげえもん。
上着ぬいで、ベッドの上、無造作に寝てる。乱れた髪。
・・・寝息が小さい。・・・・目じりがかわいいなあ。

・・・・比呂ちゃん。

・・・・愛しているよ。


俺は最近、なんていうのか、いろいろなことを考えてしまう。
高校生活も、半分をきって、あと一年ちょっとになったわけじゃん。
卒業したら、ガラリとかわるよね。
俺は進学したいけど、比呂は最初から就職するつもりでさ。

社会人になったら比呂は、どんな風になるんだろう。

・・・髪型も、服装も変わって・・・大人っぽくなっちゃうんだろうなー・・・・。

比呂の頬をそっと触る。

俺は、高校卒業したら、髪を黒く戻そうと思うの。
希望してる大学は全部県外。静岡を離れることになるとおもう。

いろいろなことが変わる。俺の生活環境だって変わる。
一日の大部分をすごす学校生活で、一緒の思い出をつくってこれた俺たちは
ちゃんと約束しないと会えない環境になってしまうんだよね。

就職したら、比呂は忙しくなるだろうし、俺が県外で一人暮らしするとなれば、
いわゆる遠距離恋愛になるとおもうし。


遠距離?


やだよ。


やだよ。こんなにそばにいるのに悲しいのに。



勝手に一人で盛り上がって、感極まって俺は比呂に抱きついた。
寝てる比呂に全力で抱きついたら、その勢いで比呂の上半身をベッドの下に
落っことしてしまう。頭をがんっと床にぶつけた比呂は、痛いのと状況が飲み込めないのとで
ビックリしたような顔で止まってた。

目の前で泣きながら比呂を見てる俺に、ガラガラ声でいうんだ。

『・・・・え?・・なに?どうした・・?』

俺は比呂に抱きついて泣く。

俺が抱きついてるから、ベッドに戻ることも出来ず、比呂は全身をベッドからズリ下ろした。
俺を抱きしめたままでね。
床の上で、俺は比呂に抱きしめられて、ほっとするんだけど、やっぱ悲しい。
比呂のお父さんの話を聞いて、くらっちゃったのは、むしろ比呂より俺だったみたいだ。

俺は、返事もしないで、比呂の胸で泣いて、比呂は俺をぎゅっとだきしめる。
そのうち背中を、ぽんぽんしてくれて、髪を撫でてくれて
息だけの声で『なーおー』って呼んでくれて。

俺がベッドからおっことしたのに、怒らないんだもん。比呂は。
いきなり責めたりされたことがないんだよね。俺は勘ぐってまで比呂を責めるのに。


そんなんしてたら俺の家族が帰ってきちゃって・・比呂も、自分のうちにかえっていった。
比呂が落っこちた時に、一緒に落ちた毛布を抱きしめて、俺は目を閉じる。

すき。だいすき。そんなことばっか。
俺・・、自分が頭いいって思ってたけど・・・
全然駄目だね。だってタイムマシンとかつくれないもん。

答えなんか絶対出ないのに、欲がでるんだよ。愛を知ると。

小さい比呂。俺が天才で、過去に戻れる装置をつくれたら
この毛布もって会いに行くよ。それで君を抱きしめる。

君が人生を捨てないでいてくれたから
俺は未来の君に支えてもらえてるよ。



いい子。


いい子。





2008/01/14(月) 23:43:58
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