夢の話

昨日、比呂のおばあちゃんが倒れたんだって。
たいしたことなかったみたいだったからよかったけど
なんか、ちょっと比呂が元気がないように見えた。

だから今日、バイトあとにゆっくり会おうっていったんだけど
その約束してもなんか不安だったから、バイトの一服休憩狙って
遊びに行ってきたのね。おれ。

スタッフルームに行ったら、比呂がぼんやりと、窓の外を見ていた。
俺の気がついて、びっくりしたかおで『どうした?』ってきくのね。

お前こそどうしたの?・・・聞こうと思ったけど、やめた。
やめた・・じゃなくて、きけなかった。

きけないよ・・。おれみたいなカスが。

比呂の寂しそうな顔、見たことある?
半分空気に溶けちゃって、現実と夢の混沌っていうか
この世の人とは思えないような、そんな顔をするんだよ。
そのまま景色に溶け込んで消えて行っちゃうんじゃないかって思うくらい。

だから卑怯な俺は笑った。どうせ気づかれるだろう作り笑いで。
そんな俺の笑顔を見て、比呂が笑った。
比呂はもう、『どうした?』なんてきかない。

元気になってよって気持ちを、沢山こめた作り笑いだって
わかってくれたんだ・・だから・・・。

髪をくしゃくしゃってしたあと、『約束の時間間違えたかー?』って笑ってくれた。


『休憩あと何分?』
『5分』
『たばこは?』
『もってこなかった。忘れた。』
『買ってきてあげようか?』
『いいよ。』

言いながら俺の手を握る比呂。
たっぷり愛情。伝われ伝われ。絶対に比呂を一人にはしないよ。
心にも記憶にも、全部寄り添う。それが俺の夢。

比呂の肩に顔を埋めて、俺は深呼吸する。
ああ・・安心する。
離れていて、不安になったら、一瞬でもいい。やっぱ会うべきだ。
比呂は俺をギュッと抱き寄せてくれて、深い溜息をついたあと
もっと強く強く俺を抱きしめた。

『夕飯、何食おうかー・・那央ちゃん。』
『なんでもいいよ・・。だから早く甘えたい。』
『・・・・そうだな、俺も甘えたい。』
『・・・・・甘えあいたいね。』
『ふふっ・・・・。そーだよねー。』
『へへっ。』

5分間なんかあっという間だったけど、店におりてく時の比呂が
とても嬉しそうな顔だったから、俺も嬉しかった。

俺もすごく嬉しかった。

約束は6時半。待ち遠しいな。何も手につかないよ。会いたい。
ほんと、あまえたい。
あまえてあまえて甘えまくって、比呂に触って、全部満たされたい。
元気でいて欲しい。それも俺の夢。

俺ってほんと、夢見がちだな。

2008/02/09(土) 16:34:00
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