千羽の鶴

俺の姉ちゃんの友達が入院して、姉ちゃんが千羽鶴を折るから
100羽分手伝えって言うの。だからバイトの休憩のときに折ることにした。

そしたら俺と昼休憩が一緒だった秋山さんが30羽も折ってくれて
そのあと休憩にはいった比呂が50羽折っておいてくれた。
俺は20羽だけ。でもノルマ達成。バイトが終わったら、姉ちゃんちに届ける。

今は俺は、10分休み。4時半になったら店に戻って6時までバイトだ。
比呂は今日は9時まで。大変だなあ。デートできないな。さみしいや。

比呂の鶴の折り方がちょっと変わってて、それを休憩上がりの比呂に言ったら
『ああ、多分、教わった人に寄って、折り方違うんじゃねーの。』
比呂は、音羽さんの彼女の人に教わったんだって。
その人は話が出来ないから、口での説明はなくて
ゆっくりゆっくり折ることで、比呂に教えてくれたらしい。

比呂の周りには、のんびりした空気を漂わせた人が多いのかな。
比呂もそうだもんね。のんびりやさん。午後の落ち着いた日差しがよく似合う。

『比呂・・』『ん?』『ばあちゃんに、千羽鶴おってあげたら?』

俺は名案を思いついたようにいった。
比呂はふふっとわらうとサボテンの大きな鉢植えを持ち、俺に言う。

『おっくんが生きてた頃、ばあちゃん大怪我してさ。
そのとき俺とおっくんと、おっ君の彼女で作ったんだ。千羽鶴。
それがばあちゃんの宝物だから、それでいいんだ。もう。』

・・・ふーん・・・。そうなんだ。

音羽さんの彼女と比呂と音羽さん。
穏やかな三人が片寄せあって、折った千羽鶴か・・。
そんな思い出も、あるんだな・・・。比呂には。


さてと。もうちょっと頑張るか。出れる時に働いておかないと。
クロールで働いたことは、俺の人生にも大きな影響を与えてくれたと思う。
ここでの思い出、沢山あるもんな。
長い人生の中、一瞬のあいだだけ、時間を共有する仲間との思い出。
とても大事なんだもんな。


じゃ、いってきます。比呂もがんばってるかなあ〜。

2008/02/10(日) 16:20:27
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