ぐっすん



比呂が怪我した・・。

学校の帰りに、麦とおぎやんと俺と坂口と比呂で飯食い行くことにして
自転車押して歩いてたんだ。風が強すぎて危なかったから。

そしたらどこかの看板が、風に飛ばされて舞って来たの・・。
それが俺にぶつかりそうになって・・そしたら比呂がかばってくれて・・・。
すごく硬い看板で・・チャリを片手で押してた状態だったから
比呂・・とっさに動いてくれたんだけど、バランスとれなくって・・だからね・・

俺を麦のほうに突き飛ばしたの。俺は麦に抱きかかえられて倒れた。
起き上がったら坂口が看板どかしてて、おぎやんがタオルをバッグから出してるのが見えた。

比呂、ぐったりしてて、頭から血が出てて、なんかの映画みたいなかんじで・・
とにかく呼んでも意識なくて、救急車呼んで病院運んだんだけど
救急車の中で意識戻って、痛いのがまんしてんの。
頭が切れて痛いのかと思ったんだけど、別のとこが痛いような気がした。
でも、ガマンしてんの・・。すっごいがまんしてんの。

俺が・・そばに乗ってたから。

病院についたら、肩を脱臼してたことがわかった。
俺を突き飛ばした時に看板にぶつかって、近くの電柱にぶつかった時に
看板と電柱に挟まれて・・それで・・。
俺、そうとは知らずに・・比呂の手・・ずっと握って泣いてた・・。

一応検査入院って事で、退院は明日以降になるらしい。
看板にかいてあった電話番号におぎやんが連絡してくれて
俺らが病院にいるうちに、謝りにきてた。

・・誰が悪いわけでもないのにね・・・。

みんなが気を利かせてくれて・・おばちゃんたちが
お医者さんに説明してもらってる間、俺と比呂を2人きりにしてくれたんだ。
肩を撫でて、頭を撫でた。比呂は『びっくりしたな〜。』ってケラケラ笑った。
ばか。俺のためにこんな目にあって。

面会時間ギリギリまで病院にいたかったけど、4時には病院をあとにして
比呂のかわりに店に入って働いた。今できる事で比呂をフォローしたいとおもった。
何故か坂口が、面会時間ギリギリまで比呂の看病するとかいってたし。

9時までバイトで、そのあと家に帰ってきたんだけど
親がいたから事の成り行きを説明した。そしたらオヤジにぶん殴られた。
『なんですぐに連絡をよこさなかったんだ。』と怒鳴られて、俺はただ黙る。
そのまま母親も一緒に比呂の家にいった。

自分の両親がそろって、比呂のおじちゃんたちに頭を下げる。
何度も何度もお礼を言う。それをみたら、涙が出てきた。
その帰りに、病院にまわって、面会時間は過ぎていたんだけど
守衛さんや看護婦さんに事情を話したら許可が出て
比呂の部屋にいった。比呂は痛み止めの点滴がきいてるらしく寝ていた。

俺、比呂をそっと起こす。俺の親がきているのを見て
比呂がすっごい慌ててベッドの上に正座すんの。・・・ばか。
俺の親が、比呂のケガの様子を見て、頭を下げた。
俺の母親は泣いていた。

紺野がそれをみてびっくりして・・『やっ・・そんな・・別に大丈夫なんで。』とかいう。
『ちょっと俺・・最近反射神経があれで・・だから・・』とか、わけわかんない事言う比呂。
オヤジが比呂の頬を撫でて、そしていった。
『那央がぶつかってたら・・死んでいたかもしれない。本当に・・ありがとう』
そしたら比呂が・・なんか・・泣き出しちゃって・・・
『そんな・・・・なんか・・すみません・・ありがとうございます。』
っていった。

さっき家に着いたら、にいちゃんが玄関に座ってた。
『紺野くん、どうだった?』と親父に聞く。
『・・酷い怪我だ。2〜3日入院するらしい。明日改めて見舞いに行く。』
そういって、オヤジはリビングに入っていった。
俺の母親は、そのまま台所に行って、何かをしだしたから
のぞいてみたら、鶏肉を沢山切ってしょうが醤油に漬けて冷蔵庫にしまった。

比呂のお見舞いに、から揚げをいっぱい揚げていくんだって・・。
兄ちゃんも見舞いにいくって言ってた。

俺・・なんか・・胸がすっごい痛んだよ。

俺と比呂と恋愛をしてきて・・・俺をかばって比呂がケガをしたじゃん。
俺が謝って、看病すればすむことだとおもった。
でもそんなんじゃなかった。

『那央がぶつかっていたら死んでたかもしれない。本当にありがとう。』
おやじが比呂にいった言葉。すっごいすっごい突き刺さったよ・・・。

比呂に助けられて・・友達に助けられて・・家族に助けられて・・
助けられっぱなしだ。俺。

あんなにいっぱい血が出るほどの怪我をしたから痛いだろうな・・。
ごめんね。比呂。
明日もいっぱい謝るね。


2008/03/21(金) 22:24:32
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