どこかで忘れかけてた。

素っ裸の比呂が俺のベッド。俺も裸。そろそろ服でも着ないと。

生徒会の用事で学校に残っていて用事済ませて駐輪場にいったら、
とっくに帰ったはずの比呂の自転車があった。
あれ?とおもって、下駄箱いったら、比呂の靴がある。

上履きに履き替えて、直感で屋上に行くと、比呂が死んだように眠っていた。
花冷えの今日。低体温の比呂の頬は、氷のように冷え切っていて
急いで抱きしめて体を擦った。

そしたらぼんやりと比呂が目覚める。

『・・・・。』
歯がガチガチいってる。凍えてるんだ。そりゃそうだ。
こんなに冷たいコンクリの上に寝てるなんて。
比呂はぼんやりとした目つきで、俺を見た。

・・・・・だけど何も言わないの。

空を見ると、どんよりと曇っていて、比呂の髪にはどこから飛んできたのか
桜の花びらが一枚だけついている。
指先まで神経が行き届いたのか、比呂が俺をギュッと抱きしめた。
そうだ。この子は、そうなんだ。

さみしいのが・・・駄目だったんだっけ。
ごめんね。俺はここにいるよ。

短いキスをしたら比呂が溜息をついて
『・・・遅いよ。』といって、俺の膝をはたいた。
『ごめん。』言いながら俺は立ち上がる。

勝手に待っててくれてありがとう。

比呂も立ち上がると、俺は彼の目元を見るのに
わずかではあるが下から見上げる形になる。
比呂は俺を見下ろす。

ドキッとする。見下ろされた時、見下されたような気分になって。


俺の母親は今日は6時までのパートだから
この時間、誰も家にいないと思って、俺は比呂を誘った。
部屋に入ってきた比呂の目の前で、服を脱いだら比呂がカーテンを閉めた。
短いセックス。欲望は昨日のうちに満たされていたけど
何かが足りなかったから求め合った。でも射精をしても何かが足りなく。


比呂が眠ってしまって、その寝顔を見て、髪を撫でたら
そのとき、やっと俺の中で、全てが満たされて安心をした。



比呂は俺の恋人。俺だけの恋人。


放っておいてもいい人じゃない。決して安定してる人じゃない。
そういえば最近、いつもよりも多く俺に甘えてきてた。
比呂は強い子じゃない。頑張り屋さんなだけ。
きっと弱虫なんだ。もしかしたら俺よりも。

すっかり大人びたお前を見てたから、どこかで俺、それを忘れかけてた。
ゴミ箱のなかのゴムみたらなんか・・・

恋愛の、愛の部分が、育ち始めたのかもしれないと思った。


2008/04/07(月) 16:18:22
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