2008/4/22 (Tue.) 19:53:47

ユッキーが休んだ。ここんとこ、紺野も疲れた顔してたから、
何かあったのかなーと思って声かけたかったんだけど、クラス違うから話せないし

じゃあ、紺野のほうに聞いてみるかと、声をかけようとしても、
こっちはこっちで麦と坂口がいつもそばにいるから、ゆっくり話せないしーで・・。

狙いすましてシャッターきっては、ユッキーに隠し撮りを送るも、
テンション低い返事が来るだけ。

<こういう思い出だけで俺は生きるよ

とか。


メールで、『どうしたの?』とかきいても、『別に。』の一言で終わっちゃうしさ。

そしたら、放課後、一人でグランドの草を地味にむしってる紺野発見。
急いで駆け寄って声をかけた。
亡霊のような顔で振り向く比呂・・・だ・・大丈夫?

『どしたの?最近。夫婦喧嘩?』
『・・喧嘩はしてないよ。』
『またユッキー落ち込んでる?』
『・・ああ・・。まーねー。』
『こまったね。あいつ。何かしたのかな?』

俺が疑問顔してたら紺野が笑った。

『そうえばあんたこそ、どうしたんだよ。』
『?』
『元気ないでしょー。3年になってから。』

ああ・・それはね・・。君にはいえない問題なのよ。
俺は『思春期です。』といってはぐらかす。紺野が笑った。はははって。

そのあと、俺を見て聞くんだ。

『ねえ。今日、那央と連絡とった?』
『・・・うん。ウツ気味だけど、返事はきてるよ。』
『ふーん・・・。』
『もしかして、お前には連絡ないの?』

比呂は、何も言わないでふふっと笑った。そして携帯だして、ボタンを押して、
『忙しいのかなー。』とかいう。
『まだ無視?』と俺が言ったら、比呂は携帯画面見たままいうんだ。

『っていうかねー・・・無視っつーか・・・たすけて信号?・・的な?』
『たすけて信号?』
『そう。あの人はねー・・こういう手段で俺に甘えんの。』
『・・・甘え?』
『そう。』

携帯をパタンと閉じる比呂。けつぽっけにいれて、抜いた雑草をゴミ袋に入れつつ話す。

『周りの人から見たらー・・ワンパターンでユッキーが、俺を困らせてるように見えてるかもしれないけど
違うんだよ。あいつああいう性格だからさ・・誤解されてるとこあるのかもしれないけどさ・・。』
『・・・・。』
『ほんとにいいやつなんだ。今回の事だって、ただのワガママとかそういうのでアレしてるわけじゃなくてさ。』
『・・・・。』
『俺ら、わかりあってる途中だからさ。っていうか、だいたい俺のほうが悪いんだ、いつも。』
『そんなことないじゃん・・。』
『ううん。揉め事の本質見たらそうなんだ。那央はいっつも俺のことを考えてくれててさ。』
『・・・・。』
『単純に甘えてくれるときもあるし・・・一生懸命俺を支えてくれるし。』
『・・・・。』
『だから入り込みすぎちゃって、周りから見たら露骨になっちゃうんだけど・・でも・・
あいつはたださ、自分に自信がなくってさ、俺と真正面からぶつかるのが苦手なのね。
だからこういう風になっちゃったりすんの。それはもう性格だからしょうがねえじゃん。』
『・・・・。』
『ああいう性格のあいつを、俺のこういう性格が不安にさせてんの。』
『・・・。』
『お前もそういうのわかるだろ?彼女とかとさ・・。』
『ああ、うん。』
『・・・心配だから・・ちょっと那央に電話してみるよ。』
『うん。』

比呂は電話をする。10コール位分くらいたったころ、
比呂がふふっと笑って電話をきった。

『どしたの?』
『きられた。』
『え?』
『電話きられた。』
『・・・電話にでてすぐきったってこと?』
『ふふっ』
『笑ってんなよ〜・・怒れよ〜』
俺は比呂の腹に軽くぱんちした。

比呂は、はははって嬉しそうに笑うと
『でもさっきまでは、出てもくれなかったし。』
といった。


・・・・・

比呂は携帯をしまうとまた笑う。

『っていうかさ、みて?俺のこのイカした髪型。』
『ぴんどめ?』
『うん。坂口が毎日のようにつけてくれんの。』
『へえー。』
『中学までの俺だったら、絶対耐えられないようなお花・・・』
『あはははは』
『今じゃこのままコンビニいけるもん。しんじられん。』
『んふふ。』

こないだは、小学生がつけるようなキュートな髪留めつけられてたしね。クマの。

『ねえ。そういえば何時?』
『6時だよ。』
『うそ。お前部活は?』
『終わったよー。比呂は?』
『俺んちはあれだもん。今日は筋トレだけだったから。』
『なんで?』
『先生んちの集まりで体育館つかえねーから。』
『・・・で、なにやってんの?比呂は。』
『・・・草取りー。委員長会議のあとの。』
『ああ・・。委員会の?』
『うん。生徒会長いないから、全然まとまらなかった。』
『・・・・そっかー。でも、他の人らは?』
『部活のあるやつらは免除だから。』
『へえ・・。』
袋いっぱいの草。どんな気持ちでこんなとこで草取りしてたんだろ。
袋の口縛って、比呂が『じゃ、いくわ。』という。

その時比呂の携帯がぶるった。携帯をとって開く比呂。俺の方をみた。

『・・(なおだ。)』
口の動きだけで俺に言うと、俺に手をふって焼却炉のほうに歩いていく。

『・・・どうしたー・・。』
俺に聞こえたのはそこまで。懲りないなー・・比呂は・・って心から思う。

俺ね。

俺、三年になって、気がついちゃったことがあるんだ。
比呂のことを好きなやつが、ユッキー以外にもいることを。
そいつはすごくいいやつで、今まで何度も比呂の事を救ってきた。
ユッキーとは違う位置で、ずっとずっと比呂を大事に見守る。

そんなあいつの事を考えると、すごく複雑な気分になる。

そしておもう。ユッキー・・もっと頑張れよ。
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