2006.4.30(sun)16.27.01

俺には年の離れた弟がいて、今年高校生になった。
中学生の時に突然イジメにあい、すっかり性格が変わってしまった弟。
俺はとっくに社会に出ていたし、彼のいじめに気付いたところでかける言葉すら見つからず
たまにドライブに連れて行ってやることくらいしかできずにいた。

無表情なまま助手席に座り、ひたすら黙っている彼を乗せ、俺は遠くまで車を走らせる。
家に車が着くと彼は涙を浮かべながら『ありがとう・・にいちゃん・・』とだけ言い
うつむきながら部屋に戻っていくのだ。

そんな暗く重い季節も、春の訪れと引き換えにするように終わりを迎えることができたようだ。

パジャマのままドタドタと外に出てきて『洗車手伝うよ!』といったくせに
バケツの水を見ながらずっと考え事をしていて、ちっとも手伝ってくれやしない。
『どうかしたのか?』と聞くと弟は『今日は友達と飯食いに行く』とこたえる。
『この前家に来たとかいう子と?』『うん。そう。あたり!あははっ。』

・・・・見守ることしかできずにいた俺は、涙が出そうでたまらなかった。
お前は気付いていないと思うが、ずっとお前のその笑顔を待っていたんだよ。
兄ちゃんだけじゃない。家族みんなでずっと待っていた。


父さんも母さんも、俺もお前のねえちゃんも、
みんな那央が生まれたその日から、大事に大事にお前を思ってた。

よく頑張ったな。ほんとによく頑張った。
にいちゃんはそんなお前のことを、心の底から誇りに思っているよ。

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