ノータイトル


比呂に告白した。もう限界だった。 だから、好きだって言った。
『友達でいたい』って言われて、 実質的にふられた俺は諦めきれなくて、
泣きながら好き好き言って、 そした比呂が、『考えさせて』といってくれた。

俺は、すごい卑怯だったと思う。

家までどうやって帰ったのか、思い出せないくらい動揺していた。
比呂のことはずっと大好きだったはずだけど、 本人にそれを認識された途端、
今までの何億倍も、比呂の事が大好きになってしまったから。

後悔はしていない・・・ というか、それ以上に・・なんか・・
比呂のお父さんが四人も居たとか言う話が衝撃的だった。

初めて遊びに行ったとき、両親がもう亡くなっていることは聞いてたけど
・・父親四人って何?っていうか・・
・・美容師のお父さんの話は、あんなに幸せそうにしてたのに
お母さんの話題に全然比呂が触れないことが、すごく変な気分だった。

先生と付き合ってたことも、ちょっぴりショックだったけど、 今は別にさほど辛くはない。
きっとそのへんは、後からじわじわと、俺の心を蝕むんだろう。

・・なんか・・ なんか・・告白ってこんなもんなのかな・・。
話をしてる最中は、すっごい命がけってくらい、必死になってた気がするんだけど・・
家に帰ったら家族はいつもどおりに動いてるし・・ さっきは小沢から、近所の駄目犬の写メが送られてきた・・・。

でも・・でも比呂が・・ ちゃんと俺の言った『好き』の意味を、しっかり受け取ってくれたのは
間違いないことだと思うし・・・きっと今も、悩んでくれてる・・・。

どう断ろうかって・・悩んでいるんだろうなって思う・・はあ・・・。

今日比呂がさー・・・なんだっけ・・ あこせんせいの話してる時・・・
あいつがさー・・すっげえ言葉を選んで話してる感じが、ひしひしと伝わってきてさ・・・
もともとあいつは、話すペースが少し遅いんだけど

風邪ひいてたからかさ・・いつも以上に言葉に吐息が混じってる感じで
・・あの時のあの声を、もう一回あのくらいの距離で、ききたくってたまらない・・・。

俺もうほんと駄目なの。どーしよう・・。 明日比呂が、俺のこと無視したら。
喋らなくなって・・遊んでもくれなくて・・ そんなになったらどうしよう・・・。
でも・・でも実際に俺ふられたら、俺の方が比呂と口なんかきけない・・。
気持ち悪いって思われてるだろうし・・

・・それ思うと・・比呂が・・ 自分の部屋に俺を誘ってくれて、ちゃんと話合ってくれたことが
すっごい幸せなことだったんだって・・思うよ・・。 今更だけど・・・・。

意識逸らそうと思って、ステレオつけたら、エルレのCDが入ってたらしく
『Fire Cracker』がかかっちゃって、この歌声がさー・・比呂の話声に似てるから、もー俺どうしていいのかわかんなかった。

今日の会話を全部思い出しちゃって、自分の情けなさに、泣けてきちゃったよ・・
んなこと打ち込んでたら、また泣けてくる・・・ もーやだよ・・・。

どんどん時間は経っちゃうし・・・どんどん明日に近くなるし・・
確実にふられるだろう明日の俺は、どんな顔をしてその宣告を聞くんだろう。
考えすぎたら頭痛くなってきた。 ・・・今日は兄ちゃんの部屋で寝ようかな・・・。

Post at 23:15
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