2006/5/12 (Fri.) 07:53:25

一昨日の夜、突然クラスの小沢から電話があった。
小沢とロクに話した事の無い俺は、あまりの動揺で半パニック。
話の内容はというと、比呂の誕生日のプレゼントを一緒に買いに行こうということで
そういう話をもちかけてもらえた俺は、感動のあまり涙がしばらく止まらなかった。

そして昨日、一時間目の授業中に小沢から手紙が回ってきて、
プレゼントであるエロビデオを買う店と時間を知らされた。
・・手紙のすみに、『ミッション1』と書いてあったのだが、

ミッション2とか3もあるんだろうか。


そんなこんなで、部活あと、比呂とさっさとさよならして、
俺は待ち合わせ場所のサニマ前に急ぎ、小沢とビデオ屋に向かった。

『幸村って、エロビみんの?』
『こないだ、紺野とちょっとみたよ?』
『どういうの?』
『なんかナースが患者とやってる奴。ピンクの制服で・・。』

そういうと、小沢が声も出ないほど爆笑していた。

『むぎっこりのだろ?!』
『むぎっこり?』
『ああ。隣の佐伯んだろ?俺にも回ってきた。』
『そうそう!紺野がそれを借りたとか言って。』
『紺野が酷評してたよね。お前一緒に見たんだー。』
『うん。・・で、なんで麦がむぎっこり?』
『わかんない。紺野がそう呼んでたよ。』

・・・ふーん・・。

ビデオ屋の二階に上がって、販売用ピンクゾーンが目前だ。そして、俺たちは立ち止まる。

『・・ど・・どうするこれ・・。』『・・・じ・・・18禁?』

俺と小沢は互いに互いの顔から何からを見つついう。
ピンクゾーンの入り口には、強大な力を持つ張り紙がしてあったからだ。

『制服の時点でアウトだな・・。』俺たちは猛烈に悩み苦しんだ。
小沢は未だに中学生と間違われるような奴で、
俺はというとズレたセンスのピンク頭でちょっとした有名人。

『どうする・・?』
『どうしよう・・。つか、あいつらさ・・いつもどーやって買ってるの?』
『・・だよな・・。麦とか比呂ってどうやって買ってるの?』

その場に呆然と立ち尽くしてたとき、天は俺たちに味方をした。

『・・那央・・お前・・なんてとこに・・。』

あ・・・

兄上っ!!!

『やった!とっくに18歳以上の人が来た!』
『なんだその心をえぐるような言い方は。』
『・・誰?この人・・。』
『俺の兄ちゃん!!』
『え?!わ!似てる!こんにちわ。』
『こんにちわ。なにしてんの、二人して。』
『兄ちゃん、俺、エロビデオ買いに来たの?!』
『『?!!!』』
『・・おまえ・・・・そんな嬉々とした顔で・・そんな・・』
『・・・幸村なにげに天然だよね。普通兄弟にそんなこと言う?』
『ねえ、そうだよね!買うんだよね!』
『違うよ!俺達はシルクロードの歴史と・・』
『・・・・それはないね。それは。』
『僕もさすがに今のは無かったと秒で思いました・・。』
『・・・。』

俺は藁にもすがる思いで、兄ちゃんに頭を下げた。

『ねえ、にいちゃん。頼みがあるんだよ。』
『?』
『友達の誕生日にエロビあげたいんだ。』
『誕生日?』
『そうなんです。でも俺ら、この先に入れなくて。』
『・・・。』

にいちゃんは、俺らの視線の先を見る。
『紙切れ一枚の抑止効果すげえな。』というと、俺の頭と小沢の頭を、ポンッと叩いた。

『ジャンル言え。ジャンル。』

さわやかにそんなことを言い切った俺の兄ちゃんは、俺らから紺野の趣味を聞きだすと
『じゃあ兄ちゃんのお勧めを数本選んで買ってくるよ。』
といい、ピンクゾーンへ続くドアの向こうに消えた。

『・・なんか・・かっこいいな・・。お前のにいちゃん・・。』
『かっこいい?どこが?ただのサラリーマンだよ。。』
『(弟よ・・・)』

小沢に兄ちゃんほめられて、実は何気にうれしかった俺。
俺らはピンクゾーン前の自動ドア付近に座り込んで兄ちゃんの帰還を待った。
ちなみにその間、遠巻きに俺らを見ては帰っていく男性多数。
店の営業妨害を自覚したのは家についてからだった。

ごめん、光が丘メンズドリームランド


しばらくして、店の紙袋をひとつと、ラッピング済みのビデオ数本をもって
兄ちゃんがピンクゾーンからでてきた。

『よ。これでいい?』
『すげ!ラッピングが!』
『ここで友達がバイトしてるんだ。』
『え?会社の人?』
『違う。大学の後輩。こないだスーツ貸してやったから、それをとりにきたんだよ。』

・・そうなんだ・・てっきりビデオ買いに来たのかと・・

俺がぽやーっとしていたら、小沢が財布を取り出して言う。
『すみません!それ友達への贈り物なんで、金払います。いくらですか?』

『いいよ金は・・』といいかけた兄ちゃんは、ふふっと笑って言った。
『プレゼントじゃ、お前らが金出さなきゃ意味ないもんな。』
そして、レシートを小沢に渡す。
『お前ら二人で買ってやんの?』
『いえ。全員で四人で割り勘です。』
『じゃあ金はあとでいいよ。全員で出し合ってから、那央に渡して。』
『はい!ありがとうございます。』

その間俺は、小沢と兄ちゃんの会話を聞きながら、感動していた。

小沢、すげえ。こんなにしっかり話をできるんだもん。
兄ちゃんとは初対面じゃん。すげえなって尊敬した。

にいちゃんは、外で待ってた彼女と一緒に飯を食いに行くといって、車でどこかに行ってしまった。
俺は、小沢と一緒に近所のラーメン屋で軽く飯を食った。

比呂と佐伯のバトル話に爆笑したり、
浅井と比呂の異常な仲良さにボーイズラブ疑惑が浮上したり、
そんな疑惑に、心がズキっとしたり・・・でもやっぱ・・楽しかった。

俺は20時から塾があるから、小沢と駅前で別れた。小沢が俺に『勉強頑張って!』と手を振ってくれた。
なんかうれしかったなー。。小沢とはめちゃくちゃ気が合いそう。
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