Date 2006 ・ 07 ・ 11

つらい。

今日から学校はテスト期間で、午前中で授業を終えた俺等は
連れら5人で学校近くの焼きそば屋に行くことにした。

最初は比呂と俺と小沢で行くつもりだったんだけど、廊下に出たら、麦と浅井がいて
そしたら比呂が浅井と話をしだして、そのままの流れで5人で食うことになってしまった。

『なってしまった』って言い方は・・感じ悪いかもしれないけど・・
でもやっぱ・・比呂と小沢と俺の三人だけで、のんびり焼きそばを食いたかった・・・。

店についたら、せまいとこの座敷と、二人がけのテーブル席しか空いてなくて
その二箇所は、すげえ近くだったから、俺等は別れて座るということで妥協した。
腹減ってたし。

そしたら二人がけの席に、麦が座って『比呂比呂〜。』といいながら紺野に話しかける。
紺野はそのまま、『は?』とかいって、その席に座って話を始めてしまった。
座敷には俺と浅井と小沢で座った。

・・・やばい・・。帰りたい。

小沢が気を使って、俺の分も浅井と話をしてくれた。
浅井はすげえいいやつだから、誰とでも話を合わせられる。
面白い話をしてるのはわかるんだけど、俺はうまく笑えない。
せまい通路を隔てた向こうで、比呂と麦が、げらげら笑って話をしているからだ。

麦が比呂の髪を触る・・・。やめろ・・。
焼きそば焼いてる比呂の頭を、ニコニコしながらバシッとはたく。・・やめろ。
比呂が自分の焼きそばに入ってたにんじんを全部、麦の皿にうつしている・・頼むからやめてくれ。


『・・ゆっきー。』
突然浅井に名前をよばれ、はっと我に返る。
『どしたー?ほら。焼けたよ。やきそば。』
浅井が俺の皿に、作り終えた焼きそばを、うまそうによそり、手渡してくれた。
『大丈夫?今日は喋んないね。』・・心配してくれてる浅井。
『・・腹が・減りすぎて。』・・そんなしょうもないことを言って、俺は茶をにごした。

焼きそばを食う。まるでゴムでも噛んでるように味がしない。
浅井と小沢の会話に、相槌打って、たまに愛想笑いして、
比呂の事が眼に入らないように、焼きそばの皿だけをみていた。

すると、突然、ばらばらと、俺の皿に海老が降ってきた。
顔を上げると紺野がいて、自分の皿から俺の皿に海老を移してくれていた。
『好きだろ?食べな。』
そういって、席に戻ろうとする。でもまた俺のほうを向くから
なにかとおもったら『これも。』といって
俺の皿に、にんじんをぽとっと落とし、今度こそ自分の席に戻っていった。

・・・・・。

比呂がくれた海老とにんじん。じっとみた。そして横を見ると、小沢が『よかったね。』といった。
浅井が『ユッキー、海老好きなんだねー。海老入り頼めばよかったねー。』といってくれた。
比呂は、麦と二人で、なんかいかがわしい話をしている。

もらった海老を食った。
ちゃんと海老の味がした。麺を食った。うまい焼きそばの味がした。
だから俺は、夢中で食った。そんな俺の食いっぷりを見て、浅井が大笑いをした。
『そんなに海老が好きなのーー?』


俺が好きなのは、海老じゃなくて、比呂なんだよ。
比呂がくれた海老だから、特別中の特別中だったんだ。俺は心の中でそういう。

店を出て、駐輪場で解散した。
俺は一旦家のほうに向かったが、勇気を出して、比呂の家のほうに方向転換した。
ちょっと進むと、信号待ちしてる比呂の背中が見えて、
大声で名前を読んだら、比呂がゆっくり振り返ってくれた。

ん?って顔で俺を見る比呂。
『ちょっと用事思い出して。』俺はありもしない用事をでっち上げて、
比呂のとなりで、自転車を降りた。

信号を3回分やり過ごして、俺等はたわいもない話をした。
そして、『じゃあまた。』といいながら、比呂は信号を渡り、家に帰っていった。

ささやかなことばかりだ。

俺は恋をしているが、幸せはとてもささやかだ。
大部分が苦しみで、首絞めてるのは自分の自虐的なものの考え方で
だけど、信号三回分の幸せや、削ることのできない想いがあるから
この気持ちに蓋をすることはできない。


つらい。
とてもつらい。
でも俺はやっぱり、比呂を好きな事をやめられっこないんだ。

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