『走るの・・かったるいなー』
『何言ってんのー。かけっこ好きなくせに』
『・・・・・。』
『あーもしかして、俺が風邪気味で部活見学だから?』
『・・最近お前、そうやって俺をじわじわといじめるよね・・・。』
『あははっ。ほら、頑張っておいで。』
『・・・・。』
『ぶっちぎり1位だったら、誰にも見られずにちゅって出来るよ?』
『・・・。』

よーい、すたーと。

みんな一斉に駆け出す。
ストップウォッチを見つめながら俺は
比呂の心めがけて意識を飛ばす。

早く帰ってきて。俺のために。
俺への口づけがお前にとって、ごほうびだったらうれしいな。

するとまもなく足音が聞こえる。さっきスタートしたばっかなのに。
目を上げると比呂が照れくさそうに一生懸命走ってきて・・

少しずつスピード落として、俺の目の前にたどり着くと
中腰になって何もいわずにホッペにちゅってしてくれたんだよ