◆◆◆言葉足らずとマイナス思考◆◆◆


この前、幸村や坂口と三人で飯を食ったんだけどね。
そん時あいつらに言われた事を、今になって、思い返している。
 

あいつらの家で幸村が作ってくれた飯食いながら語ってたりしてたんだけど、
幸村も坂口も、俺の親父が倒れたことは知ってたし、
その事がきっかけで、沼田と俺が今も少しぎくしゃくしてんのも知ってるから、
飯の時に、まあ事後報告みたいな感じで話したんだけど、

ほら、俺はてっきり紺野がさ、幸村にいわゆる詳細的な事を話してるんだって思ってたんだよ。
俺が沼田をどんな理由で怒らせて、そのあと俺らがどんな風になってるのかとか。
まあその辺を、詳しくさ。

だけど実際のところ、紺野は幸村には話さずにいてくれたみたいで、
俺が沼田をがっつり傷つけて、それをいまだに引きずっていることを
幸村と坂口は知らなくて、話を聞いた幸村は怒ったし、坂口は黙って下を向いた。


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飯食い終わって、幸村がデザート用意するとかいうから、
庭に出て煙草を吸ってると、坂口が『秋山さん。』と、声をかけてきた。
喘息持ちって聞いていたから、とりあえず煙草の火を消す。
『あ、ごめんなさい。』
煙草を俺が消したから、坂口はきっと謝ったんだと思う。
俺は黙って首を横に振り、坂口のほうに体を向けた。

小石を蹴っ飛ばして笑う坂口。背筋をピンと伸ばし手を後ろで組んでまた笑う。
そのあとしばらく黙ってるから、やつが俺に声をかけてきた理由は何となく察した。

『心配かけたみたいでごめんな。本当に。』
『え、あ、いえいえ。』

お互いそっぽ向いたまま、そんな言葉をかけあって、へへって笑って頭を搔いて、
・・・俺たち得意じゃないんだよ、こういうの。
『部屋もどる?』
そう言って笑いかけたら、坂口がぶんぶんと頭を横に振った。

『あの・・僕、沼田さんと話しました。このあいだ。』

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『ん?沼田と?いつ?』
『沼田さんのこと、気になって、・・・日にちは忘れたけど、最近です。』
『・・・。』
『秋山さんのお父さんの件があって以降です。』
『・・・ああ・・。』
『秘密にしろとは言われなかったんで、話します。』