『自信がない人だってわかってるのに、ほったらかしておくの、よくないです。
遠慮したり言葉を選んだりしてるうちに、とりあえず言葉をかけるべきです。
沼田さん、大人です。言われた言葉がへんてこでも、ちゃんと噛み砕いてくみ取ってくれます。
比呂ちゃんが学生の頃によく言ってたけど、とにかく口から言葉を出せって。
言ってることがめちゃくちゃでもいいから、とにかく言ってくれ、考えるからって。
とにかくしゃべれってくれよって、何度も比呂ちゃんはユッキに言ってた。
あの意味が今ならはっきりわかります。あれはユッキのためだけに言ってたわけじゃなかった。
比呂ちゃんは自分のために言ってたんです。
ユッキちゃんが殻に閉じこもったら、比呂ちゃんも一人ぼっちになっちゃうから。
今、秋山さんと沼田さんがぎくしゃくしてるんだとしたら、
秋山さんが何とかするしかないです。沼田さんにはどうにもできません。
そっとしておいてみようかな・・とか、今回ばかりはそれは駄目です。
ほっとくのと一緒のことですから。
沼田さんは、今までのつらい経験で失った自信は取り戻せてないのに、
それでも秋山さんを恋人に選んで、一緒にいようとしてるんです。
・・・秋山さんが沼田さんを思って話せないこともあるかもしれない。
でも、沼田さんからしたら、黙られるよりも話されたほうがマシかもしれない。
話されたことで傷つくこともあるかもしれないです。だけど、
話してくれたっていう事実が、沼田さんの自信につながるかもしれません。
秋山さんが言い出せなかった理由もわかって、そうしたら、
俺を思って話さずにいてくれたんだなって・・・そういう風に思えるかもしれない。
今の恋人は秋山さんで、秋山さんとのやりとりの全部が沼田さんにとっては大切なのに・・』