坂口は、そこまで話すと、またうつむいて黙ってしまった。
風が冷たい・・・坂口喘息もちだし、こういうのってよくないんだろうけど、
だけど、どうしても聞いておきたいことがある。

『・・・最近・・・沼田と会った時に、アイツと話したことって何?』

・・俺は、坂口の考えは聞かされたけれど、沼田の言葉はまだ聞いていない。
坂口は、俺をじっと見た。目には涙がたまっていて、
きらきらと光り、そして揺れる。

『あの日、沼田さん・・なんだかいつもと様子が違った。
いなくなっちゃいそうで怖かった。そんな風な感じだった。
だから僕焦っちゃって、今、秋山さんに話したような事を話しました。』
『・・・・・うん。』
『自分の内側の話をしたことに理由なんかなくって・・ただ単に引き止めなきゃって思って、
焦ってとっさに出た話があれで・・僕が何を言っても沼田さんは黙って聞いてくれてました。』
『・・・・・。』
『僕は、自分の両親が死んじゃったら、一人ぼっちになる気がしてたけど、
今、麦ちゃんと一緒にいて、比呂ちゃんやピンクちゃんもいてくれる。
同じ屋根の下に四人です。多分ずっと一緒にいられます。』

『うん。』

『運命の出会いなんか何度もない。居場所にしたってそうだと思います。
居心地のいい場所っていうのは、そんなにどこにでもあるもんじゃないです。
沼田さんにもそういいました。でも沼田さん、返事してくれなかったです。
だからどこにも行かないでって頼みました。僕沼田さん大好きです。
本当はそんなの僕がいうことじゃないんだけど、でも、
言わなきゃ沼田さんいなくなっちゃう気がして・・・・。』

『・・・・うん。』

『そしたら比呂ちゃんも言ってたみたいです。沼田さんに笑われました。
ありがとうともいわれました。で、そん時・・沼田さんが言ったんです。』

『・・・なんて?』



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