夕飯の片付けは一緒にした。すっごいおいしかったみたくて、
味噌汁がちょっと残ってたのを、最後に比呂が全部食べた。

『那央、風呂はいれよー。はやくー!!』って妙に風呂を勧めるから、
シブシブはいったら、風呂の中にもバラ飾ってあんの。チョーいいにおい。貴族の気分。
もし比呂がいなかったら、俺、きっとグッタリと、何も考えずに
疲れた疲れた言いながら、愚痴っぽく風呂に入ってたんだろうなー。

目を閉じてたら、朝、ミックスジュース飲んでたときの比呂思い出した。
あっは。もー、いまだにニンジン拒絶してんのかよー。まったくなー。栄養豊富なんだよ!

想像上の比呂に話しかける。

いつもは、こんな風にしたあと、比呂が一緒にいない現実に
打ちのめされて、しばらく動けなくなったりするんだけど、
今日はいるから。風呂から出たら、比呂がいる。
DSやって、俺が風呂から出るの待ってるから。


同フロアのほとんどの部屋の子が知り合いだったり、隣に住んでるのがせおなおだったりとか、
そういう状況で一人暮らししてた4年間と、今じゃまるで違うんだよね。

近所は知らない人ばかり。実家には時々寄る程度。あんまりのんびり出来ないからさ、
寝る時間確保するためには、どうしても学校と家の往復になっちゃう。

比呂のとこにとんでいきたくても、諦めなくちゃいけない夜ばかりで
それは心の中で毎日吐き散らかしてる弱音なんだけど、でも仕事、頑張りたいんだ。
生徒達の人生を、俺がどうにかしてやりたいとかじゃなくて・・
どうにかしようと頑張るあいつらを、精一杯応援してあげたいんだ。

自分達にも、あの年頃があった。特に俺にとっては運命を切り開くことが出来た時でもあった。
そういう時期に、大人の立場で、生徒達と日々を過ごす俺は、あの頃の俺のままじゃだめで、
あの頃、岸先生や、雨ちゃん先生達がしてくれたように、
ちゃんと距離をとりながら、子供らをみまもっていってあげないと。
俺に見えてる世界のうち、生徒らには見えていない場所があって、
でも、それを簡単に俺が教えちゃ駄目なんだと思うの。

あの頃の岸先生や、雨ちゃんやじいちゃんたちは、答えを知っていても黙っていてくれた。
だから俺・・比呂や潤ちゃんや、友達とあんなにも、もがいて、答えをみつけてこれたんだ。
あああー。頑張りたいよ!失敗しても挫けない。だって俺は、これが本職なんだから。

ラブリーモードから、なぜか仕事モードになった俺。
風呂から出て、ドアを開けた瞬間、比呂と目が合って、
またラブリーモードに逆もどりしてしまった。最強魔法かよ・・・・。比呂、すげえな。

『ああ・・俺の番?』そういいながら、立ち上がる比呂。

二人で暮らすようになったら、お風呂も順番こっずなんだな〜。
時々は、一緒に入るんだろうけどー、でも、ジャンケンで順番決めるとか、色々と毎日楽しくなりそう。

昨夜洗った洗濯物、乾いたから、それを着るつもりみたいなんだけど
普段着きても、やすめないっしょ。だから、俺のパジャマを貸してあげることにした。
俺、一応、来客時用に、自分が着るための、シンプル系パジャマももってんだ。
水玉とか、ハート柄とか、そんなんばっかじゃあれだしさ。

お風呂上りの比呂パジャマ。なんか、ちょっと高校生くらいにみえる。
となりに駆け寄って、手を繋いだ。比呂、そのまま部屋を十周くらい、ぐるぐる回ってくれた。
ちょっと気が済んだから、仕事しよう!!って思って、テーブルに資料ひろげたら、
比呂が俺のそばにごろんと寝転んだ。

『寝るの?』
『・・ううん・・ちょっと横になってるだけ。』

そんなこといいながら、黙ってマンガを読み出した比呂。

なんか昔、こんな感じのことあったよな・・

あーたしか、加瀬と勉強したときだ。

なつかしいなあ。
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