脳トレ本が面白くって、ベッドにはいってからも読んでたら、いつの間にか寝ちゃってた。

2013/5/15 (Wed.)

俺の頭がおきてたとき、比呂はまだマンガ読んでたから、何時ごろ寝たんだろう・・。

5時前に起きたら、比呂はまだ寝てた。しかも、床で。
ベッドに入ってきてくれたらよかったのにー・・。気づけなくってごめんね。布団をかける。

朝、俺と一緒に家を出るっていうから、お昼用にお弁当作ってあげようって思って。
秋山さん達も食べれるように、いっぱい。ご飯6合炊いて、ほとんどがおにぎりになった。
朝ごはんは、パンにしてー、俺の昼の弁当は、比呂たち用のとメニューは一緒。

毎日の俺の弁当作りは、いつか二人ですむ時のための準備だから、
時々こうやって、練習の成果を発揮できるのはうれしい。

6時半に比呂を起こす。すっごい熟睡してたから、全然寝ぼけがおさまらなくって、かわい。

コーヒー飲んで、パン食べて、トマト食べた時に、すっぱさで目がやっと覚めた。
えへら〜って笑う顔、かわいいなあ。大人だけど、男の子の表情。

『駅までおくるよー。』
『いいよ。大丈夫。遅刻しちゃうじゃん。』
『えー、平気だよ。』
『朝は混むから。それに、クロールよんなきゃいけないし。』
『あ、ハルカさんにお礼言っといて〜★こないだ店に行ったらいなかった。』
『ああ、わかった。』
『でもなにしにいくの?』
『仕事のこと。んー・・まあ、色々。』
『そっか。』

説明すんのめんどいんだろうな。なにもかもかわいいなあ。

『マギ、読んだ?』
『4巻まで読んだ。5巻の途中で多分寝ちゃったんだと思う・・。』
『床の上に寝てたけど、痛くない?』
『大丈夫。これあるし。』

俺があげたアームウォーマー見せる比呂。
そんなの別に、たいして役にたってないだろうに。
でも気持ちがうれしかったから、『よかった!』っていった。

ご飯食べて、歯を磨いて、俺はスーツを着て、比呂に甘えてネクタイ締めてもらって、
俺は、比呂をじっとみる。

『クロールだったら途中まわれるから、やっぱ乗って行って!』
『この時間じゃ、生徒いっぱいそこらにいるじゃん。いいよ。歩いていけるから。』
『え・・だけど。』
『裏道歩いてけば、知り合いにもあんまあわないだろうし、たまにはゆっくり地元を歩くよ。』

・・・・そか。

『じゃあ、見送るよ〜。』
『うん。』
『っていうか、弁当重いかも。』
『えっ?!これ俺の分?!!』

『秋山さんたちの分もあるから!』
『なんだ俺さ〜、那央、すげえ食うんだなーとか思ってたわ。この包み見て。』
『こんなに食べないよ。時間ないし。』
『時間あったら食えんのかよ。すげえな。』
『えへへへ。』
『ありがとー。』
『うんっ。』

・・っていうか、たとえ俺でも時間あったって、そこまでは流石に食えるわけないじゃん!

比呂が先に家を出る。玄関あける前に、ほっぺにちゅっとしたら、
比呂がちゃんとキスをしてくれた。

『じゃあねー。』ってドアをあけるから、『いってらっしゃい。』って笑ったら、
『・・ありがとー!いってきまーす。』っていって、比呂がドアを閉めた。

シンとする部屋。

外で車が走る音。小学生達の声。電車の音。生活音が急に耳に入ってくる。
ユメから現実に戻ったみたいで、なんともいえない気分になった。

でも、いつか・・
いつか、こんな風に、『いってらっしゃい。』『いってきます。』はあたりまえになる。

そして、『ただいま。』『おかえり。』っていう、憧れの言葉をかわせるようにもなる。

そのために、俺は俺の仕事に責任をもたなきゃ。

5分遅れで家を出た。
下がったままの座席。この方が運転しやすいことがわかった。
比呂、どの道通っていくのかなあって、いつもと違う道を選びながら、
考えながら車はしらせたけど、比呂の姿は見えなかった。



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ほんの数日だったけど、那央と一緒にすごすことができて、楽しかった。
何より気持ちが休まって、また頑張っていけるように思う。

13日の朝、山梨の親戚の人から電話があった。話しづらそうな声だったから、
ああもう俺、紺野でいちゃ駄目になるんだなって、覚悟したんだけど、違ってて、

ゴールデンウィークに、紺野さんたち、山梨に帰省したらしいんだけど、
そのときに、さやが、落書き帳に絵を描くんだって。

俺と、さやと、ひなの三人で遊んでる絵を。

『ひろちゃんは、もうすぐ誕生日。ケーキはあんぱんマンがいいなあ。』って
俺の絵のとなりにケーキ描いて、それをみて、その親戚の人は
辛くてたまらなかったんだって。

俺に対して、本当に、申し訳なく思うって謝られた。

『さやは、もう君の事を、忘れることなんかできないんだ。いや、
忘れさせようと考えた私たちが間違っていた。君はとっくに紺野の家族の一員だったというのに、
余計な口出しをしてしまったせいで、本当に申し訳がない。』

・・・何もいえなかった。俺。

だって、山梨の親戚の人たちは、さやが生まれたとき、動揺してしょうもなかった俺の、
背中をさすって励ましてくれた人たちだから。
『君は家族なんだよ。弟が生まれたんだよ。』って。あの時のこと、俺、今でもはっきり覚えてるよ。
あんなふうに、いってもらえるなんて思ってなかったし、本当にうれしかったから。

俺が紺野の家を出たのは・・結局俺自身が、あの家にい続ける勇気がなかっただけなのに。

『ありがとうございます。』

お礼だけ言った。でも、もう俺、紺野の家に住むとかありえない。
働いて、自分でちゃんと暮らしていけてる。
だからもう、地元に戻る時があっても、俺は、あの家に住むつもりはない。

それでも、・・・それでも、やっぱり時々、顔がみたい。
さやとか、ひなのこともそうだけど、おばちゃんとか・・・

やっぱ、紺野さんの顔。

身寄りのない俺の手を、最後まで離さずにいてくれた・・
こんな風になってしまっても、いまだに俺のことを『大事な息子』だといって、
メールを送ってくれたりする。
俺にとっては、お父さんだから。おばちゃんは、お母さんだし・・
俺、本当の両親は死んじゃったけど、でも紺野さんたちが生きていてくれているから、
子供の気分をまだ味わえる。

本当に・・本当にうれしい。

山梨の親戚の人が、他の人たちを説得して、考え方を変えてもらえるように
頑張ってくれるっていった。『お気持ち・・本当にありがとうございます。』ってこたえたら、
『気持ちだけじゃない。結果出すから。』っていってもらえた。

たぶん俺は、きっと・・世の中で一番人に支えられて、幸せにしてもらえてるんだなあって
感じる。ひとにものすごく恵まれていて・・・一番近くに那央がいてくれて。

つまりは・・幸せ者だっていうこと。
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