見守ってもらえているということ。

今日、部活の朝練があって、7時から10時まで頑張った。
比呂は昨日の練習試合での怪我が、結構腫れてきちゃって
腕にシップをして包帯してた。切れたデコもなんか痛々しい。

部活あと、斉藤とかの野球部チームがやってきて
『今日、ピカ女(光が丘女子高校)の学園祭だから、あそびにいこう。』
と誘われた。斉藤の彼女、ピカ女なんだって。
斉藤が比呂に『いこうよ〜。』っていうんだけど、比呂は即答で『わり、用事あるんだ。』と断る。

用事ってなんだ?・・俺は聞いてねえよ?
斉藤たちが『土産でも買ってきてやるね〜★』といいながら去っていったあと、俺は比呂に『用事ってなに?』ってきいた。

比呂は俺のほうをみて笑い、『ああ、そうか。那央、どこか行きてえとこある?』とかいってくる。え・・・?なんだそれ。

『用事あるって斉藤に言ってたじゃん。それってなに?』『・・・ただ、お前と遊びたかったから・・。』
『・・・・・・よかったの?女の園に未練はないのかい?』『なにそれー。ドンだけ俺の人間性を誤解してんの?』

本当に興味がないような、比呂の言葉が俺を安心させる。おれは笑った。

『比呂、ラブホいかねえ?』『あー・・行きたいねー。先週やってねえもんねー。』
『・・・・・・する?』『・・してえけど、でもな・・・。』
『あ・・・・。』『え?』
『そうか・・比呂・・怪我してるもんね・・・。』『や、いいんだよ、そんなのは。そんなのはいいんだよ。』
『・・・・。』『つかお前こそ大丈夫なのかって話。』
『・・・は?』

比呂は俺の左手にそっと触れると、俺に向かって言う。

『俺はこれが心配でたまらなかったんだ。』



* * * * * * * * *
昨日の練習試合、俺も試合に出させてもらえて、最初はコートに入ってたんだけど、
途中で左の小指を突き指して、そのあとはベンチに入ってたんだ。
自分でも、すっかり忘れてたくらい、たいしたことのない怪我。

でもそのことを比呂がぼそっと『これが心配だった』といってくれた。

思いも寄らない角度から、突然そんな幸せなことを言われてしまった俺に心構えはなく

当然、返事を返す余裕もなく・・・

俺が黙ったから比呂が、一人で世間話をしていた。俺たちを取り巻く空間に、比呂の言葉があふれていた。
のんびりした口調、時々ひっくり返る声。自分で話してて、おかしくなって、笑いが止まらなくなったり。
そんな途中でも比呂が、俺の痛む指を避けるように、そっと手を繋いでくれる。



うん。


うれしかった。





2007/06/03(日) 22:58:33
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