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今日、部活の時に、西高の監督さんと、マネさんが来て
比呂の様子を見に来たらしく、比呂と部長が先生に呼ばれた。

マネが何度も頭下げて、比呂もそのたびに頭を下げる。
そんで、部室に一旦戻ると、なんか包みをもってきた。
それをマネさんに渡す。マネさんが、真っ赤な顔で比呂を見る。
そんで包みの中身をとりだしたら、タオル・・みたいだった。

ああ。こないだ比呂が怪我した時、あの子のタオルを血だらけにしちゃたから・・・。
それにしてもさ・・。いつ買ったの?あれ。あれ買いながら、あの子を思い描いてたのか?

わざわざ買いにいったの?今日たまたまあの子らが来たから
渡せたけど・・でも、今日あの子達がこなかったら
どうやって比呂は、あのタオルを渡すつもりだったの・・?

もー全部が嫌になって、部活の途中で
『頭が痛い』って、ノガミ先輩にいって、帰ってきてしまった。
わかってんだけど・・こんなの駄目だってわかってんだけど、
比呂を大好きな分、どうしても詮索しちゃって、憶測に縛られて悪い方にばっか考えちゃうんだ。

部活の休憩の時間帯と、部活終わってすぐとかに
比呂からの着信があって、でも無視した。ついでに塾も休んだ。
夕飯も、無言で食って、風呂もシャワーだけざっと浴びて出た。重症なのか、勉強する気にすらならない。

次に比呂から電話がかかってくるとしたら、バイトの休憩時間だな・・・。
絶対着信無視してやる・・とおもってたんだけど、かかってこなかった。

無視するつもりの着信が、なかった事が俺を動揺させる。どうせ出る気がないのに、
身勝手だなあと自分でも思う。だけど、・・・だけどすごく、不安になってきてしまった。

そして、バイト上がりの時間にも、比呂は電話をかけてこなかった。

耐え切れず俺から電話をする。そしたら、少ししてから比呂が電話に出た。
そしたら テンション低い声で『なに?』って言われた。・・・・『なに?』って。

『・・・・。』
『なんか用?』
『・・・・・。』
『・・用事ないなら切るよ。』
『・・・・なんで・・・。』
『・・・・・・なにが。』
『・・・なんで電話してくれないの?』
『は?』
『・・・・俺の事・・心配じゃなかったの?』
『・・・・』

ふーっと、比呂が電話の向こうで大きく息を吐いた。

『煙草すってんの?』
『・・・・だったらなに。カンケーねえだろ。』
『・・・怒ってるの?』
『怒ってねえよ。』
『・・・・。』
『黙るなら切るからな。』
『比呂・・・。』

今日の比呂は、すごく冷たい。なんで?

『なんだよ。』
『何でそんなに冷たいの?』
『・・・・・。』
『・・・俺の事、嫌いになっちゃった?』
『・・・・。』
『別れるの?』
『・・・なんで・・そんな極端な話になんの?』
『・・・・・・だって・・・。』
『電話に全然出なかったのは、お前のほうだろ?』

比呂が怒っていたのは、俺が電話を無視していたからだった。

『あんなタイミングで帰ったら、さすがにすぐわかるだろーが。俺だって。
西のマネにヤキモチやいたんだろ。どーしてそういうことになるんだよ。』
『・・・だって・・・。』
『・・・・だってじゃねえよ、ほんといい加減にしろよ。』
『・・・・・。』
『・・・お前が電話に全然でねえから、どーにかしたんじゃねえかって・・
お前ら家に電話したんだよ。そしたら夕飯もちゃんと食ったって・・風呂もはいったってきいてさあ。』
『・・・・。』
『安心したけどむかついた。だってそうだろ。そう思う俺がおかしいわけ?』
『・・・・・。』

比呂は本気で怒ってるみたかった。


『やきもちやいて、むくれるのはかまわねえよ。・・本当はかまわなくないけど
・・でも・・それはいい。いいけど、でもな、電話にでないとかやめろよ。
だったら先に、メールでも何でもいいから、話したくないって言えばいいじゃん。
そうすりゃ俺だって、何度もしつこく電話しねえし。』
『・・・・・。』

言葉が出ない。

『お前てさー・・俺の着信だけは、音楽変えてるって言ってただろ?
俺からの電話だってわかってんのに、電話にでなかったんだよね。』
『・・・・・。』
『それって無視って言うんじゃねえの?』
『・・・・・。』
『あんなわけのわからない帰り方されて、挙句でんわも無視されて・・
なのに、こっちがかけなかったら、文句言われんの?なんだそれ。』
『・・・・・。』
『ふざけんな。バカにしてんのかよ。だったらさっきまでの無視はなんだよ。』
『・・・・・。』
『昨日も・・・一昨日も・・・毎日俺はお前が好きなのに・・
俺らには何も障害がねえのに、なんでこんなことでモメてんの?』
『・・・・。』

比呂はすごく機嫌悪いから、核心をズバズバついてくる。
言い返せない・・・・。なんか・・・別れを宣告される予感がした。

そのとき

『・・もー切るよ。なんか、どーでもいいわ。つか、あほらしい。こんなことでイライラしてる自分が。』

と比呂が言う。そして

『勢いで馬鹿なこと口走りそうだから切るよ。じゃあな。』

そういうと、比呂は俺の返事も聞かずに、電話をぶちっと切ってしまった。


俺は携帯をもったまま、呆然とする。変なこと口走るって・・・
『わかれよう。』って・・言葉を・・・言いそうだって事なのか?
俺は、比呂に捨てられる恐怖感に、襲われてどうしようもなくなった。

不安で涙が、ぼろぼろこぼれる・・・・。

・・比呂と別れたくないよ・・・・。


2007/06/04(月) 23:43:05
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