2007/6/7 (Thurs.) 08:40:29

今日は、午前授業。三年の一部のクラスで、研究授業があるらしく、
他所の先生らがみにくるんだって。だから俺等は半日で部活もなし。


朝練もやすみだから、ゆっくりいこうと思ったら、小沢に電話で起こされる。
話があるって言うから、7時前に家を出た。

言われたとおりに俺は、視聴覚室の前にむかう。
小沢がまっていてくれて、なんか神妙な顔をしてる。
どうせ比呂とのこといわれるんだろう。今更無駄なのにさ・・・。

『ごめんね。おそくなった。』
『・・・ゆっきー。』
『・・・なに?』
『比呂に謝れよ。』
『・・・・。』
『謝れ。』
『・・・・・。』

いきなりそんな空気で俺は小沢に叱られる。

『昨日・・つか、日付変わったあとだけど・・比呂に電話して話をしたよ。』
『・・・・。』
『何してるのってきいたら・・どうぶつの森やってるっていってた。』
『・・やっぱ・・立ち直り早いね、比呂は・・。俺は何も手につかなかったのに。』

そしたらいきなり小沢に突き飛ばされた。びっくりした。

『なんでそういう言い方ばっかするんだよ。なんでわざわざヤな言い方するんだよ・・・。
何でわかってあげられねえの?そんな夜中になんで比呂が、あんなガキみてえなゲームやってたかとか・・。』
『・・・・・。』

小沢が・・・泣き出した。

『俺は・・・最初・・・入学してすぐの頃・・比呂の事が嫌いだった・・・。
あいつは・・誰にでも声かけて、すげえ軽いやつだなあとおもったし・・。
だけど今はアイツの友達だ。大事な親友だ。
色々話してわかりあって、うちとけてこれたから俺・・
相談に乗ってもらっていつも・・・いつもあいつを頼りにして・・。』
『・・・・・。』

『俺の相談に乗りながら・・比呂はいつでもお前の話をしてたよ。
・・・悪口なんか聞いたことないし・・いつも幸せそうだった・・。
実際おまえを大事にしてたし・・・、比呂は何も悪いことしてないじゃん。
昨日はなした時だって・・ずっとお前の事をかばって・・・。』
『・・・かば・・う?』

小沢が泣きすぎて、しばらく話ができず、
俺は小沢の事を見ながら・・胸の奥がぎゅーっと痛んだ。

『俺・・お前にさ・・事の成り行き全部きいてただろ?』
『うん。』
『お前、酷いこと比呂にいったわけだし・・・そのへんをどう思ってるのか
比呂に聞こうとしたんだ。』
『・・・・。』
『ユッキーは・・ああいう性格だからひねたこといっちゃうけど、
本心でああいうことをいったわけじゃねえんだしって・・
そういって、はげまして、どうにかやりなおしてもらおうと・・。』
『・・・・。』
『・・・・・・だけど・・・。』
『・・・・だけど?』
『だけど比呂は、お前に言われたことを・・全部俺に隠そうとした。』
『・・・・え・・、どういう意味?』

話の意味がうまく飲みこめなくて、俺は小沢に聞く。
泣きすぎて、ひっくひっくいいながら・・小沢がゆっくり話を続けた。

『ユッキーが一般人でぬくぬくした家庭の育ったから・・比呂と付き合う度量がないだの・・
比呂に振り回されるのに疲れただの・・・朝から浮気がどーだのとか・・・電話を何度も無視したとか・・・。』
『・・・。』
『全然いわないんだよ。比呂が・・・。』
『・・・・・・・』
『全然いわねえのっ!!!』

涙をぼろぼろ流す小沢。

『俺が・・・ユッキーに変なこといわれたんじゃねえの?って・・そういっても、
何も言われてないよって・・・俺は大丈夫だから、幸村の相談にのってやってって・・・。』
『・・・・・・。』
『・・・・ありがとうって・・。』
『・・・・・。』
『心配かけて悪かったって・・・。』
『・・・・・・・・。』
『比呂は本気でお前を好きなんだよ、だから俺に何も言わないんだ。
別れちゃったから・・・別れちゃったから』
『・・・・・。』
『俺のお前への印象が・・・悪くなんねーように・・してんだよ。』
『・・・・。』

・・比呂・・・・・。

『比呂は誰にも相談しない。いつもお前の不利になることは俺には何も言わなかった。
ずっとそうしてきたんだ。俺は、幸せな比呂ばっかり見てきた。
ユッキーから、比呂との揉め事の話し聞くたびに、
俺・・比呂は鈍感で・・ユッキーが影で苦しんでるのに気づいてねえのかなっておもってた。
でも違うんだ。そうじゃなかったんだ。
比呂がお前の立場が悪くなるようなことは、誰にも言わなかっただけなんだよ・・。』
『・・・・・・・。』

小沢の涙が俺にもうつって・・ぼろぼろと俺も涙をこぼす。
いつも比呂が俺に向けてくれていた。あの優しい表情が浮かんで消える。
俺・・俺・・・。
自分の見えない部分でも比呂に、大事に大事にされてたんだ・・・・。
そんなの本当はわかってたはずなのに・・何で俺たちは別れてしまったんだろう。


『こないだ・・・・。』
小沢が話を始める。
『こないだ・・花を・・・、比呂が花をお前に渡しただろ・・?』
『・・うん。』
『俺の彼女にあげる花を・・一緒に選んでくれたって言っただろ・・・。』
『うん・・。』
『俺は・・彼女を思いながら花を選んでたんだけど・・・比呂も・・
お前の事を考えながら・・お前への花を選んでたと思うよ・・。』
『これはあいつに似合うとか・・ごめんね、俺だけ幸せでーとか・・・
俺ら、すっげーバカみたいにノロケながら・・花選んで、ニヤニヤずっとしてたんだ・・。』
『・・・・・・。』
『店から出る時・・・比呂・・
喜んでくれるといいね、彼女・・っていってくれて。』
『・・・・・。』
『お前もそうなるといいねっていったら・・すっげえ照れくさそうに笑ってた・・・。』
『・・・・・。』
『比呂がかわいそうだ・・・・。』
『・・・・・・。』
『比呂がかわいそうだよっ!!!!』

散々泣いて、そのあと2人で教室に戻ったら、比呂が机に突っ伏して寝てた。
坂口が、そんな比呂の髪を撫でて、悲しそうな顔をしてた。
小さい声で坂口に『おはよ。』っていったら、『きてみな・・ピンクちゃん。』
っていってくれて、俺に比呂の寝顔を見せてくれた。


俺の大好きな比呂の寝顔だった。
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