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情緒不安定紺野。 今日の紺野は、なんかすっご情緒不安定だった。 反抗期?なのかなあ。イラついてるっていうより、感情のコントロールができない感じみたい。 『今日、俺テンションおかしいから、ひとりにしてて。』とかいって、本当に一人で行動してた。 休み時間にエロ本よんでたり。坂口が、無言で比呂の肩をたたいてあげたら 比呂がボロボロボローとか泣き出しちゃって、びっくりした。 唯一普通に話してたのが、小島とどうぶつの森について会話してる時だけだった。 部活も休むっていうから、バイト時間しか会えるときないなっておもってたんだけど、 今日は比呂はバイト休みの日で、だから俺がバイト前に、比呂の家に立ち寄った。 比呂は制服のまんまで、エロ本よんでた。しかも人妻本。 俺と付き合いだしてから、こんなあからさまに読むことなかったのに。 『ひどい。浮気だー。』っていって、ベッドのそばに座ったら、 比呂が力なく起き上がって、いきなり俺に、ちゅうしてきた。 『じゃ、やらせて。』 『?!! 』 『やらせてくれんなら読まない。』 『こっ・・交換条件なんて卑怯だ!』 『交換条件ってなんだよ。そんな難しいことじゃねえだろ。』 『は?』 『お前がやらせてくんなかったら、俺はできないってことじゃんか。』 『え?』 『お前がやらせてくんないってことは、俺はガマンするしかねえのっ。』 比呂はエロ本を壁に投げつけて、枕に顔を埋めてしまった。 肩が震えてるから、泣いてるなーってわかった。 そんなに・・やりたかったのか・・・って そんなんで比呂がこんな風に、おかしなかんじになってるわけない。 俺は比呂の背中に頬をのせた。 手の届くこところをゆっくりさすって、『どうしたー。比呂ー。』って声をかけた。 比呂は、あいつの体を擦ってた俺の手をにぎると、嗚咽をあげて泣き出したんだ。 結局比呂は、涙の理由を何も言わないまま眠ってしまって 俺はそんな比呂に布団をかけて、メモをおいて、バイトに行った。 店でサボテンの手入れをしながら俺は、いろいろなことを考えていた。 『お前がやらせてくんないってことは、俺はガマンするしかねえのっ』っていう一言が、 妙に心にひっかかってさ・・・。やっぱ俺が原因なのかな・・・。 バイトの休憩直前に、麦が遊びに来て『休憩だろ?メシ食い行こうぜ。』って、 誘ってくれたから一緒に飯を食いに行った。 麦もバイトで、30分しか休みないから、近場のうどん屋にいって、ちょっとだけ語る。 『なんか今日、比呂が情緒不安定でさー。』 『ああ。』 『さっきも家で泣いちゃって。』 『・・・そうかー・・・。』 うどんがきたから、わりばしをパシっとわって、『いただきます』をいう。 一口すすって、もぐもぐ噛んで、のっくんだら麦が話をしだす。 『父の日が・・あったじゃんね。それが原因なんじゃねえかな。』 『・・え?でも、もう何日も前の話じゃん。』 『・・・や、経過日数は関係ねえだろ。』 『・・・・・。』 『比呂、最近寝てないみたかったしさ、気にはなってたんだ、なんとなく。』 『・・・・。』 『ピンクは休んでたからわかんねーかもだけど、食欲もなかったみたいだし。』 『・・・。』 麦のうどんに入ってた海老天を、ぼんやりと眺めていたら 3本入っているうちの1本を俺のどんぶりに入れてくれた麦。 『悪いよ!そんな!』 『いいよ。食えよ。』 『・・・・・。』 『・・・でもさ、幸村ー。』 『・・・え?』 『去年、あいつ入院したの、父の日あとだったよね。』 『・・・7月?』 『・・・うん。』 『・・・そうだね・・・。』 『・・・気をつけてみててやってね。』 『・・・・・・。』 『次にあんなになったら・・、比呂死んじゃうと思うから。』 『・・・うん。』 ・・・去年の夏、比呂は風邪薬を沢山飲んで、心肺停止状態になった。 幸い発見が早かったから、一命を取り留めたんだけど そのとき比呂を救ったのが、誰よりも早く比呂の様子に気がついた麦だった。 あの騒動が、父の日と関係するかはわからないけど、 麦がいうんならきっとそれは・・間違いないんだろうと思う。 『麦ー・・。』 『はー?』 『俺・・今回さー・・、比呂にいきなり泣かれたりしてさ・・。』 『おう。』 『すげえ困っちゃったんだよ。どうしたのかわかんなくって。』 『・・・・・。』 『自分がどうしていいのかも、わかんねえじゃん。だからさあ・・ ただあいつの体をさすって、それしかできなかったの。』 『・・そうかー・・。』 『比呂は・・いつも俺がわけもなく泣くと・・優しく励ましてくれんのね。』 『・・・ああ。』 『・・・でも・・俺は・・なんもできなくてさ・・。駄目だなーと反省してる。』 『・・・・。』 麦が自分のうどんの海老天を、もう一本俺にくれた。 『ちょ、お前のなくなっちゃうじゃん!』 『・・俺も最近食欲なくてさ。』 『大丈夫なの?』 『・・平気だよ、普段食いすぎてるからちょうどいいんだ。』 『・・・・。』 テーブルにおいてある七味を、うどんにかけながら麦がいう。 『お前は比呂に愛されてんだから、自信もって。きっとさ、 比呂はお前の事が、かわいくてたまんねーんだから、 そばにいてもらえるだけで、じゅうぶん支えられてると思うよ。』 『・・・・そうかなー・・・。』 麦にそんな風に言って貰えて、なんか力をもらえた俺は、 うどんを食いながら、元気になれた。 その後、麦のするあほ話をきいて、大笑いして、完全復活。 バイト上がりに携帯みたら、比呂からメールが来てて <笑ってる顔の写メおくって。 とかいってるから、満面笑みの写真を撮って 件名を『愛してるよ。』にしてみた。 そしたらすぐに比呂からメールが来て <ありがとう。一生大事にする。 だって。 俺も一生大事にするよ。だってこんなに大好きだもん。 2007/06/20(水) 23:19:44 |
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