
2006/9/15 (Fri.) 17:46:07
今朝起きたらすげえ寒くて、ああもうこのまま秋になっちゃうのかなって、微妙にセンチメンタル。
学校行って教室入ると、紺野が窓を一生懸命閉めていた。
『おはよ。比呂。どしたの。』俺が声をかけると、紺野がヒソヒソ声になって
『幸村さん・・・。』という。な・・・なに?
『さっ・・さむい。』
『・・・・。』
『9月なのに寒い・・・。』
『・・あほ。寒かったら長袖着てこいよ。』
『だっておまえ、長袖着てきて暑くなったらどーすんの?まだ9月だよ。』
『なにが、どーすんだよ・・だよ。』
くっだらねーなーもー。比呂はそのあと来るやつみんなに、
『なんでこんなに寒いんだ』といって、その全員に
『そんなお前が一番サムい』といわれていた。
昼休み。ちょっと日差しがでてきて、気温が上がってきたら比呂が
『やったーーーー!!あたたかい!』と、活動が活発になった。
『おまえは春先の昆虫?!!』と、坂口につっこまれてたよ。
でもそれもつかの間。
部活終わる頃には、またすっげー冷たい風吹いてて
『風のバカ』と、外の空気に文句を言っている。こんにょ・・・・。
『どしよ。俺、今からバイトなのにー・・・。』
『行くまで寒いよねー。』
『あのね。俺。この格好で柊坂を下りてったらマジ死ぬと思うんだー。』
柊坂というのは、光が丘で一番長い坂の事で、
学校から最短で街に下りていくには必ず通らないといけないところなんだけど・・。
『・・俺、長袖Tシャツもってるよ。かしてあげようか?』
『え?いいの?うそ、まじで?かしてほしい。』
俺はバッグから着替え用のながそでTシャツを取り出した。
すると比呂が制服のシャツの上から、それを着るからびっくりした。
『普通・・インじゃねえの?長袖・・。』
『わかってるよ。違う・・・今、予断ゆるさねえの。うん。』
『(ああ・・そんなに寒かったんだ・・・。)』
5分ぐらいしたら比呂は、ちゃんと着替えた。
ん。かわいい。半そでの中に長袖着ると、かわいさ2倍の比呂が好き。
『ありがとう。洗ってから返す。鍋の時でいい?』
『いつでもいいよ。何ならそのままあげるよ。』
『バカ。これお前気に入ってたんじゃねーの。よく着てたし。』
・・・あは・・。よくわかるじゃん。実はそのTシャツ、すげえ気にいってるんだ。
だからいつも持ち歩いて・・。でもそれに気がついてくれてたなんて。
『ほんとサンキュ。』
『ん。いいよ。バイト頑張ってね。』
『お前も塾がんばって。』
『おう。』
『じゃあなー、命の恩人。ばいばーい。』
『ばいばーい。』
少しずつ黒に侵食される空。もうすぐ夜がくる。
比呂の後姿を見送った俺は、アイポッド出して両耳にイヤホンをつける。
こないだ比呂がいいよと言って、おれのアイポッドに入れてくれたのは
アニメの歌で『秘密基地』という曲だ。比呂の大好きなアニメのエウレカセブンの曲なんだけど、
比呂がこの曲スキなんだって思いながら聴くと、なんかさ・・なんかじんわり心が震えてしまって
泣きたくなる。すごい不思議。
これが恋ってやつなのかなあ。ならばこの思いはとても尊い。
街がどんどん闇に落ちても、俺は心にともった灯りで
足元を照らし、ぬくもりを感じ、そしてひたすらに比呂を感じるよ。
大好きなあの服を、大好きな比呂が着て、今頃バイト先に着いたかなあ・・・。
どうかな・・。ちゃんとついたかな。
あーどうしよう。あの服、一生家宝になっちゃうかも。