Date 2006 ・ 09 ・ 15
ひーろ。
こまった・・。
Tシャツ貸したから、電話する口実あるのに、なんかできない。だけど声が聴きたい。
塾が20時に終わって、飯食って風呂はいってあとは寝るだけなんだけど・・
比呂は21時がバイトあがりだから・・・もう家に帰ってるかな・・
それとも・・女とかナンパして・・・
その心配に到達したら、さっきまでのためらい気分なんか消えて、比呂の携帯に電話してしまった。
呼び出し音聞いて、我に返る。
やば・・。すげえ緊張する。声が聴きたい・・だけど何を話したらいい?
出るな・・・いややっぱ出てくれ・・・いやいやでも・・わああああ・・。
電源切っちゃおうかな・・でももうすぐ比呂が出るかもしれない・・・
頭がぐるぐるしてきて、結局俺は電話を切ってしまった。
はあ・・・・・。何ヶ月片思いやってんだよ・・・、もー・・・。
こういう気持ちになるのはしょっちゅうじゃん。いい加減慣れて欲しいよ、俺って人。
程なく比呂から電話がきた。
『もしもし。』
『あ、幸村?』
『うん。』
『ごめん。携帯、バッグの奥のほうに入れといたから、出るの遅くなって。』
『ああ・・ううん。いいよ。そんな。』
『で、なに?』
『・・・・。』
ほらみろ。話なんかないんだ。用もないのに電話なんかして、片思いは両思いとは違うんだぞ?
わかってるよ・・わかってるんだけど・・・だけど好きな気持ちはいっぱいだよ・・・。
ただ・・比呂にはそういう目で見てもらえてないってだけで・・・。
黙ってる俺。しばらく比呂はそのまま電話口で、俺の言葉を待っててくれた。
だけど俺があまりに黙ってるから、比呂のほうから話を始める。
『なんかしたの?』
『ううん・・・・。』
『やなことでも思い出した?』
『え?』
『いじめられてた時の事とか・・』
『あ・・ううん。ちがう・・。ただ・・。』
『・・ただ?』
・・・・・言っちゃえ俺。
『声、聞きたくなったんだ。お前の。』
『・・俺の?』
『うん・・・。なんかふと思い出してさ・・。』
『・・・・・。』
『だから電話してみたんだ。バイト終わったかなーともおもって。』
すげえどきどきする・・・。ああーーーー。どきどきする。
でも、言いたいことをいったから、超すがすがしい。
『へえ〜。』
気の抜けた比呂の返事に、俺の心はハートマークで埋もれる。
『・・・・今日さあ、俺、残業だった。さっき終わったとこ。』
『そうなんだ。』
『うん。・・ねえ、そういえば、鍋の日決まった?』
『ああ、なんか明日あたりどうって感じみたい。』
『そうなのー?本当?』
『うん。あれ?聞いてないの?』
『きいてねえよ。だって小沢が、「日時決まったらピンクがお前に連絡するから」とかいうから・・。』
・・・・・おざ・・わ・・・・
『そうかー。えーとね、時間は多分16時だと思う。でー、お前んちでやるんだよね。』
『そうだよ!俺んちでやるのに、なんで連絡がこないんだろうっておもってさ。』
『大丈夫?そんな時間に押しかけて。』
『いいよ大丈夫。おじちゃんら2人とも泊まりで出張だから。』
『出張?』
『そう。雑誌の撮影で東京。』
『おばちゃんも?』
『うん。アシスタントさんが病気でこれないらしくてさ。おばちゃんもカメラやってたから、アシさんの代理』
『へえ・・・。』
本当の父が美容師で、育ての父がカメラマン・・って・・なんか・・すげえな・・。
『いいや。あとで、麦に確認するわ。お前電話かけてくれてよかったよ。さんきゅー。』
『ううん。バイト上がりの疲れてる時にごめんね?』
『なにいってんのー。いつでもかけてよ。俺こう見えてもさみしがりやだから。』
『あはは。さみしがりやなの?』
『そうだよ。にじみでてるしょ?こう・・哀愁がさ・・』
『哀愁ってなんだよ。』
『知るかよ。そんなん。』
『『あははは。』』
あいもかわらず意味なし会話。
もし・・・。
もし人生最高の起死回生で、比呂と付き合えでもしたら
こいつ、電話で何を言ってくれるんだろう。好きだよとか・・・言ってくれるのかな・・。
携帯を耳に当てて、ベッドの上でグダグダしながらニヤニヤ笑って、幸せいっぱいだ。
比呂は電話しながらなんかしてるみたいで、まるで教室で無駄話をしてるようなかんじで
だらだらと、脈絡なく、たわいもないことを話してくれる。
俺が貸したロンTを、まだ着てるのかな・・・。タバコとか吸いながら話してるのかな・・・。
比呂は俺と話をしながら、どんな顔をしてるのかな・・・。どんな気持ちでいるのかなあ。
10分ほどくだらない話をして、電話をきり、俺は枕に顔をうずめる。
顔が笑うよ。電話切ったけど。こういう気持ちはいきなり冷静になれないよ。
ほんとーに思う。俺、比呂と付き合いたい。
そしたら毎日比呂のことだけを、いっぱい愛していきていくよ。
・・って・・それは片思いでも同じことか。
Post at 22:24