2006/9/25 (Mon.) 21:27:44

三連休に、皆が俺の誕生日を祝ってくれた。

鍋奉行の会とかいうから、気負いなくでかけていったのに、出てきた鍋は海老鍋で、
提案者は比呂なんだよって、小沢が俺に教えてくれた。
去年の誕生日は、俺は家から一歩も出ず、出てきたご馳走も殆ど食べずに、さっさと眠った記憶がある。

感無量だ。友達がニコニコ笑ってる。その輪の中に俺がいて、ハッピーバースデーの曲を歌ってもらえた。

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比呂が俺に買い物に行こうと言う。『食い終わったら二人で行こう』というから、ちょっとびっくりした。

ケーキ担当の小沢が、ケーキ購入をコロっと忘れてきて、
だったらいっそ本人にケーキ選ばそうと言うことになったらしい。
俺は無言で小沢を見た。小沢は口の動きだけで『(グッジョブ俺!!)』といって笑った。

もー・・ありがと小沢。ちょう愛してるよ!!

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鍋でお腹満腹の俺は、比呂と2人で歩いてケーキ屋に向かった。鍋の間中よく笑ったから、ほっぺ痛い。
でも顔がにやけちゃう。隣に比呂が歩いてる。へへっと笑ったら、『え?!なに?!気持ち悪い!!』だって。
でも結局ね、比呂も笑ってくれた。やった〜!!最高の誕生日すぎ!

『ありがとう。海老のお鍋。』
『ははっ。結構うまかったよね。にんじん入ってなかったし。』
『そうだね。よくいれずに済んだじゃん。』
『だって、鍋調理やったの小沢だもん。』
『あー、なるほど。』
『拝み倒したら入れないでくれた。』
『小沢優しいなー。』
『ねー。麦とかじゃなくてよかった。』

15分くらいダラダラ歩いたら、ケーキや到着。ここ初めて見た。
どうやら最近開店したらしい。中に入ったら、素朴でうまそうなケーキがいっぱいだった。

『ユッキーは、どんなのが好き?』比呂がショーケースの前で俺に言う。
店員さん目の前にしてるから、俺はなんか妙に緊張してしまった。

全部おいしそうだし・・全部食いたい・・・。
この店はどうやら、全部ホールでおいておいて、好みでピースに切り分けるみたい。
超うまそう。ひとつに絞れない。

本気で樹海に迷い込んだ俺。きっとどれでもおいしいよな・・。
だけどな・・でもな・・って、思ってるうちに
逆に『これにする』と言い出すタイミングを完全に失う。

そしたら比呂が、俺の顔を覗き込んだ。そんでいうんだ。

『全部うまそうだもんなー。これは選べない。』って。周りにいた人らが、ニコニコ笑う。
店員さんが比呂に『ありがとうございます!』っておどけた感じで言って笑った。
『全部で8種類か〜・・。じゃあ、これ、全部二個ずつ切り分けてください。』

店員さんはそれを聞いて、ケーキを丁寧に切り分けてくれた。
俺は一瞬あっけにとられて呆然とした後、思い切り露骨に驚きの声を上げてしまった。

『えっ!!!!』

比呂は、まるでなんもなかったような顔だ。で、俺に言う。
『お前全種類食えばいいよ。他のやつらは2個ずつ争奪戦で。』
『・・・。』
『な。』
『・・・いいの?』
『いいに決まってんじゃん。お前の誕生祝なんだから。』
『うそ・・。』
『うそじゃねえよ。でもあれだよ?いっぺんに食うなよ。計画的にね。何事も。』

俺たちは、ケーキの用意ができるまで、店の端っこの方で立ち話をしてケラケラ笑った。
程なく店員さんが俺たちに『お待たせしました』とにっこり笑いかける。
支払いは比呂がしてくれた。結構な値段になっちゃったけど。レジを済ませて帰ろうとしたら、
店員さんが『お誕生日なんですね。チョコプレートサービスで入れておきました。』といった。

すげえうれしかった。

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帰り道・・・というか、比呂の家に戻る道のりで俺は最高に上機嫌だった。

『ホールケーキでもないのにさー・・チョコプレートとか、超うれしいー。』
『俺らの話、丸聞こえだったってこと?うっわー。』
『んはは。でもさ、俺的にはさー・・もう最高ってかんじだよ。』
『そうだよね。お前、日頃の行いがいいから、神様のごほうびなんじゃね?』

へへ。

神様のごほうびか・・。
前に小沢にもそんなこといわれたっけ・・。
いるのかなあ・・神様・・・。いるんなら俺、今日はほんと、あんたに感謝する。

去年の誕生日。あの重々しかった15の誕生日。母親が作ったご馳走もろくに食わなかったあの夜。
母親が買ってきたケーキと、父親と兄ちゃんが、それぞれ会社帰りに買ってきたケーキ、
姉ちゃんがこっそり作ってくれたケーキ。
寝たふりしてたら父親が、そっとそれを一切れずつ皿にのせて、部屋の机の上においていってくれた。

やべえ。思い出すとなんか泣けてきそう。

それをみた俺は、なんかすげえ悲しくて・・俺は誰もいない部屋で、電気もつけずに手づかみで食って
泣いて泣いて泣きまくったんだ・・・。

だけど・・今年は、俺、ずっと笑ってるや。

俺の横を歩く比呂が、さもない話で俺を笑わす。
俺は大好きな比呂のとなりで、比呂のはなしを聞いて笑ってる。

最高幸せ。俺、絶対忘れない。今日一日のこの幸せも・・・
もちろん去年のケーキの思い出も・・・。
全部大事に覚えて生きるよ。
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