Date 2006 ・ 10 ・ 02

比呂のあほ。

比呂が学校に来て、教室に入ってきて、俺のとこに来て、こういった。
『来たからな。お前のために来たからな。』
俺は、なにがなんだかさっぱりで、とりあえず、
『うん・・わかった。ありがとう。』とこたえた。

そしたら比呂は、俺の手をぎゅっと握ってこういった。
『じゃ、俺は帰る。強くたくましく、今日一日を全うしろよ。』

それだけいうと、比呂はそのまま教室から出て行ってしまって
急いで比呂を追いかけたら、比呂は保健室に入って
ベッドにバターンとたおれこんだ。

・・・・・。

後から追いかけてきた小沢が、びっくりして比呂の頬を触ると
『なにこいつー!また熱がある。』って言いながら、比呂のほほをべしべし叩いた。

ぼんやりと比呂が目を開けたから、小沢が比呂に『おーい。大丈夫かー。』と言う。
比呂は、こくんと頷いて『大丈夫。大丈夫なんだけどー・・ちょっと寝る。』って眠ってしまった。


ガラッとドアが開いて、保健の先生がはいってきた。手に氷枕。
『ああ、紺野きたか。』そういって、比呂の頭の下に氷枕を入れた。

『先生、紺野が熱あるの知ってたの?』小沢が聞くと
『おう。来る時こいつみかけてさ、ふらふらしながら自転車押しててね。』
『うん。』
『なんか、学校来る途中で病院寄るはずだったんだけど
今日に限ってその病院が、診察2時間遅れではじめる日だったらしくてさ、
で、悩んでこっちにきたみたい。学校のほうが近いのもあって。』

『そっかー。何じゃあ、自力でここまできたの?』
『違うよ!!一応俺も教員だよ?生徒大事。自転車屋根に積んで、紺野のせてきた。』

へえ・・そうなんだ・・。

荒い息の比呂。後で病院いくらしい。
その病院の注射がよく効くから、頑張って自転車できたんだって。

比呂が『お前のために来たからな』とかいったから
だからさ・・俺のために無理してきてくれたんだと思った・・
なんだよ、普通に病院目当てだったのかよ・・・。

・・って何・・・。がっかりすんなよ俺のバカ、そんなことで・・。

俺が、ボケーっと紺野を見てたら、先生が『そうそう・・。』と言う。

『誰かと約束してたんだって。ちゃんと学校行くからって。』
『・・え?』
『だから、病院寄って、元気になって、学校にきたかったみたい。』
真っ赤になった俺の背中を、にたにたしながら小沢がひじでつっついた。

*********

比呂は昼休みに、すっかり元気になって教室に戻ってきた。
病院の注射って、そんなにすぐに効くものなのか?でも確かに比呂は元気だった。

『大丈夫?』小沢が言うと、比呂は
『大丈夫だよー。』といって笑う。そんで俺のケツをけっとばして
『飯食った?俺今から。一緒に食べる?』といった。

2人で屋上にいったんだけど、雨が降ってきたから屋上前の踊り場で飯を食う。
俺は弁当をくいながら、比呂に謝ろうとおもった。

『ごめんね。』
『なにが。』
『無理しただろ?』
『誰が。』
『お前が。』
『俺が?』
『そう。』
『何を。』
『約束したから。』
『ああ・・。』

・・・・沈黙。

『ごめんね。』
『なんで。』
『だって俺がさ・・いつもグズグズいうから。』
『・・そんなんで謝られても困る・・謝られるようなことされてないし。』
『だって。』
『だってじゃない。』
『だってさ・・・』
『はい、にんじんあげる。』

・・・・・。

『ねえ。』
『なんだー?』
『俺と約束したからさ・・無理したの?』
『そうだよ。』
『無理なんかしなくてよかったのに。』
『うるせえなあ。もういいだろ、どーでも。』
『どうでもよかないよ。約束なんかほっぽっときゃよかったじゃん。』
『約束しといて、ほっぽっとくなんて、気分悪いし普通にヤだよ。』
『でも、体のほうが大事だよ。』
『俺は約束のほうが大事。』
『なんでだよ。』
『男同士の約束だから。』
『あほか。』
『あほとかいうな!切ないだろっ!!!』
『そんな約束で体壊されたら、こっちが気分わりいわ。』

飯食いながら、言い合う俺ら。俺の暴言に比呂はこういいきった。

『お前も約束したんだから、何があっても受け止めろよ。ばーか。』

暴言に、暴言で返されて、なんもいえない弱虫の俺。

むかついたので、比呂がよこしてきたにんじんを
比呂の弁当にもどしたら、比呂がムカッとした顔をして
『人の好意はありがたく受け取れ』といった。

『人の好意は』といいきった・・・
自分が食いたくないから、俺に押し付けてきたくせに!!!

すげー、むかつく。比呂なんて、もうしらねえ。

なら俺もいってやろうか。

『じゃあ俺の好意もありがたく受け取れよ!!!!』って・・。
『ちゃんと俺のこと、好きになれ!バカーーーー』って・・・。


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