Date 2006 ・ 10 ・ 03

どき。

今日は部活休み。比呂も休み。

はあ〜・・・・


そりゃ確かに俺、昨日約束したよ・・・。『調子悪かったら休めって・・。』

だからって、本当に休まないでもいいじゃん


俺本当に悲しくなっちゃって、帰りにお見舞いに寄ることにしたんだ。
毎度毎度おなじみ過ぎて、芸が無い俺でごめんなさいって感じだけど、
お見舞い品として、アイス買ってさ・・。

ピンポーンって、呼び鈴ならしたら、なんも返事がなくて
だから比呂の携帯に電話したら、比呂はなんか寝てたみたいで
『ごめん・・今開ける』って、すげーかすれた声で・・・
で、どたどたと階段下りる音がしてね、ガチャリと開いたドアの向こうの比呂は
少しだるそうで・・なんか、男っぽかった。

俺、すげーどきどきしちゃって、どうしていいかわかんなくて
『だ・・大丈夫?』って言った声がひっくりかえっちゃって
すげえなんか、ほんと・・・なさけな・・。

でも比呂は、そういう俺を見て、ちょっとぼんやりした後に
ははって笑ってくれて、
『あがりなよ。俺一人だから。』っていって、俺の手を引っ張って
家に入れてくれたんだ。


階段を上がりながら、『朝起きれなくてさー休んじゃったんだー。』と、比呂が言う。
『大丈夫?声がガラガラだね。』って俺が心配すると『・・・寝起きだからかな・・』って笑った。

部屋に入ると、窓が開いていて、枕元に機械工学の教科書が置いてあった。
『勉強してたの?』ってきくと、比呂は笑って返事はしなかった。

比呂は俺に『てきとーに座って。なんか飲む?』ときいてくる。
『アイス買ってきたから食べよ?』と俺はいい、比呂のベッドの枕もとの床に座る。
俺からアイスを受け取りながら比呂は、『そこ、お前の定位置だね』と言った。

それはきっと、俺がここに来る時には大概、比呂が寝ているからだと思う。

寝ている比呂のほっぺたに、何回ちゅうをしちゃったかなあ。
自分でも顔が赤くなったのがわかったから
俺は急いでアイスの蓋を開けて、口にかっ込んでごまかした。

比呂が笑う。『そんなに好きなの?やばいね。』
ああ好きだよ。お前のことがな。

連日のアイス攻撃に、笑顔で相手してくれる比呂。
昨日よりは元気になったみたい。そういえば、声もだいぶ元通りだ。

俺はカバンからノートと教科書を取り出して
今日の機械工学の授業でやったこととかを、比呂に教えることにした。
比呂は『うそ、うれしー。気になってたんだ』といってくれた。

風邪の見舞いに来て家庭教師なんて、
俺も相当空気読めない人間だなあと思うけど
俺には勉強しかないから・・・・。

だから、こんな俺だけど勘弁してよ、比呂。

30分くらいかけて、あれこれ教えたら
さすが専門科目学年1位だけあって、比呂はすぐに理解をしていた。
今日の授業は、大学生レベルだって先生いってたのにすごい。

勉強終わったし、用もなくなっちゃったから、俺はついに帰る決心をして、立ち上がった。
そしたら比呂が『えー、もう帰るの?』といってくれた。『ちょっと遊んでいけばいいじゃん』だって。

俺は床に寝転んで、比呂はベッドに寝転んで、色々な話をした。
色々な話って言ったって、あのジュースがうまいだとか、
あのコンビニのレジの女子がかわいいだとかそんな・・程度の低い話だけど・・・・。

俺の塾の時間が近づいたから、いよいよ本当に帰るときが来てしまった。
名残惜しいな、紺野の周囲に漂う空気は、あまりにのんびりとしていて
居心地がよすぎてしまうから。

『明日は学校に行くよ。』比呂が言う。
『無理しないでよ。』靴をはいた後俺は振り返った。

・・・・・あれ?

『ねえ・・。』
『なに?』
『比呂さあ、背、のびねえ?』
『えー・・?うそー。』
2人で庭に回って、ガラス窓のところで横に並んだ。

あ・・・・。比呂が俺の背に追いついた。

比呂がすっげー嬉しそうな顔して『やった!!ピンクに追いついた!』と笑う。
『えー!!いつの間に背が伸びたの?お前。』
俺はそんな比呂の笑顔につられて、笑いながらたずねた。

『え?わかんない。でも最近、すっげえあちこち痛かったんだ。
てっきり風邪だと思ってたけど、あれって成長痛だったのかなあ。』

成長痛かあ・・。

俺等はもう一回、ガラス窓の前で横に並んだ。
無意識に起立の姿勢になってて、それに気がついたら
笑いが止まらなかった。

『すげえね!すげえすげえ!』
『やばいね!!すっげー!!!!』

しばらくそんなことで、はしゃぎまわった俺たち。

紺野の家の隣の犬が、そんな俺らの声に反応して
きゃんきゃんとほえていた。

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