Date 2006 ・ 10 ・ 06
ノータイトル
今朝・・すげえ雨が降って、廊下で比呂を待ってたら、麦と比呂がずぶぬれで来て
『どうしたの?』ってきいたら、比呂が『途中で降られた』といって笑った。
『いきなり降るんだもんなー、雨。』とか言いながら上靴履いてさっさと教室にあがってっちゃった。
俺は、あわてて比呂を追いかける。
その時ちらっと麦をみたら、麦は黙って靴を履き替えて、そのまま職員室に行ったのがみえた。
比呂に追いついて、一緒に教室に入る。かばんの中のものも殆ど濡れてて、
坂口が『余分にもってきたから』といって、比呂に体操服を貸してやっていた。
なんか・・・なんか変だ。比呂の様子がなんか変だ。
笑ってるけど・・普通に話してるけどなんかおかしい・・・俺の考えすぎ?
その時教室のドアが開いて、岸先生が顔を出した。
『紺野ー。ちょっとー。』とか呼ばれて、比呂はそのままどこかに連れてかれてしまった。
朝のHRがはじまっちゃって、坂口が先生に
『せんせー、紺野ちゃん遅刻じゃないよ。先生によばれてどっかいった。』と手を上げていう。
先生は、『うん。わかってるよ。あいつは保健室で寝てる。』といった。
『風邪がぶり返したみたいでね、今日は早退すると思う。』
・・・風邪?・・・・・ほんとに?
一時間目が終わって、俺は急いで保健室に行った。
保健室のドアの前で、麦と岸先生と保健の先生が話をしていた。
『ねえ、なんかあったの?』俺は麦に聞く。『なんもねえよ。』麦はいう。
『幸村、紺野の荷物とってきて。』と岸先生に言われて、俺は教室に戻り、
比呂の濡れた制服と、干してあった教科書と色々な物をリュックに入れて、保健室に戻った。
そしたら今度はおじちゃんがいた。
・・どういうこと?
『こんにちわ。』
とおじちゃんに言うと、おじちゃんはにこりと笑ってくれた。
そして、俺から比呂の荷物を受け取ると
『いつもありがとうね。ユッキー君』といってくれた。
保健室の中では、比呂が岸先生と話をしていて
比呂が何かを喋ってるんだけど、俺にはその声が聞こえなかった。
夜、比呂に電話をした。本人に聞くのが一番だと思って。
『もしもし?比呂。』
『うん。』
『大丈夫。風邪。』
『風邪?・・風邪は治ったよ。』
『・・そう・・。そんならいいけど。』
『・・・。』
『ねえ比呂。』
『なに?』
『今日、なんかあったの?』
『今日?』
『はや引きしたじゃん、お前・・。』
『ああ。』
『いいたくなかったらいわないでいいけど。』
『じゃあ・・うん。ごめん。ありがとう。』
『・・・・。』
沈黙。
俺は比呂がてっきり『なーんてね!うそうそ、言う言う』って
いうと思って待ってたんだ。早く言えよなって感じで。
でも比呂はなんもいわなかった。だから沈黙が続いた。そんで俺は察したんだ。
また比呂がなんか、心の中の落とし穴に落っこちたんだって。
いつもは沈黙を破るのは比呂。でも今日は、それはきっと俺の役目だ。
『なんだよおー。俺には内緒かよー。』
『あはは。』
『しょーがねーな。今日はこのくらいで勘弁してやるよ。』
『あー、ありがとう。』
・・・なにあったのさ。比呂。何が・・なにがあったっていうのさ。
俺はやっぱ、どうしても・・どうしてもこれだけは言っときたくて何気なく、その言葉を出した。
『ねえ、今すぐにとはいわねえけど、いつかお前が話したくなったら、ちゃんと俺におしえてよ。』
そしたら比呂が、電話の向こうで黙る。でもちゃんとこう答えてくれた。
『うん・・。わかった・・。うん。』
電話切ったあとの俺の心は、いつものようなときめきハートじゃなかった。
俺は、いつか比呂に話をしてもらえるのかなあ・・・。
比呂の話を聞いた俺は、比呂の力になれるのかなあ・・。わかんない・・・自信もない・・・
でも、誰かが比呂を支えてやんなきゃ駄目だってことはわかってる。
そんで、その役目を他のやつに渡すのだけは、絶対嫌なんだ。
だって俺、比呂の中の一番になりてえもん。
Post at 23:53