
2006/11/26 (Sun.) 13:06:00
朝起きたら比呂はまだ寝ていて、だから俺は比呂の頬にちゅうして
持ってきた荷物からエプロンを取り出した。
母ちゃんが新婚時代に着ていたというエプロンを、借りてきたのには理由がある。
朝飯作って比呂に食わせる。それが俺の本日の課題なのだ。
部屋のドアをあけたら、のけぞるほど寒かった。
だから、荷物漁って靴下だして、二枚重ねではいて、階段をおりる。
比呂んち台所って、世間で言うところのオール電化みたいになってて、
俺んちも最近そういうのにしたから、ガッツリ予習はしてあったのだ。
(毒見の犠牲者は兄ちゃん)
クリスマス・・一緒に過ごせたらいいなと思ってて・・
もし可能だったら家にとまって・・俺は前に比呂に作ったシチューのリベンジをしたいわけで・・
でも今日は、比呂は若干病人ひきずってるから、おかゆと干物で手を打つことにした。
まあこの二品は簡単だ。味気ないから目玉焼きも作った。
うっかり三つの卵で作ったから、どっちかが二個でどっちかが一個だ。
ケンカになったらどうしよう・・とか、考えてたら二階でがらがらっと、窓が開く音がする。
俺は猛だっしゅで階段をあがる。階段の途中でこけたけど、その勢いで一気にのぼった。
ドアを開けると比呂が、ベランダにでてパジャマのままタバコを吸っていて、
俺のエプロン姿に度肝を抜かれつつ、『おはよ。』と朝の挨拶をしてくれた。
声が・・いつもより低くて・・かすれててかっこいい。
俺も『おはよ』と声をかけて、そばにあった黒のパーカーを比呂に投げて渡す。
パジャマ一枚じゃ風邪ひくよ。比呂はニコっと笑って、『ありがと』といった。
その時俺は、部屋の様子の変化に気がつく。
『あれ・・?ふとん。』『ああ、今たたんだ。』
『べっど・・・。』『ああ、マット乾いたから、とりあえず代えのシーツつけて、布団かけた。』
・・比呂は・・結婚したらいいお婿さんになると思う・・。
俺はベッドに顔を埋める。なんて幸せな新婚生活なんだろう(誤)
比呂は煙草をすうっと吸って、部屋に入らないように、ふうっとはいた。
そんで俺のほうを見て『どしたの?エプロン・・。』という。
『ああ・・今、朝飯つくってたんだ。』俺がテレテレしていうと、
比呂は、ふはって笑って『うそー!なになに?』という。
『おかゆと・・目玉焼きと・・漬物と・・・干物』
年寄くさすぎ?とかおもって、一瞬俺は自信をなくしたけど、比呂がひっこり笑ってくれて
『うそー・・うれしー・・。』って、ほんと嬉しそうにいってくれて・・
俺は心の底から、朝飯作ってよかったと思った。
比呂が煙草を吸い終えたから、あわてて階下に飯をとりにいく。
ちゃわんとー・・ポットとー・・とか、あれこれ段取り悪くやってたら、比呂が降りてきてくれて
『運ぶよ。』といって、重いものを全部運んでくれた。俺が運んだものなんか、箸と茶碗くらいで・・
二階にあがってテーブルの上に飯並べたら、ほんとなんか・・俺ら2人で家族って感じだった。
比呂がちゃんと手を合わせて『いただきます』という。俺は比呂の一口目を、こっそり覗き込んでいた。
比呂はおかゆを一口食って、俺の方をみた。
『・・・おいしい。』とか言うから、俺も自分の茶碗にお粥よそって食ったら本当にうまかった。
・・よかった・・・。大成功だ。
朝の食卓は穏やかで、かつ幸せで最高だった。
3つの卵でつくった目玉焼きは、比呂が最初に1つ食って、2つのこってる皿を、俺の方に寄せる。
俺、比呂のそういう感じの優しさが好き。
飯食い終わったら、俺が食器を洗って、比呂がそれを拭いてくれて、全部棚に入れてくれた。
もし比呂と俺が付き合えたら、比呂はこういう事をした後、部屋に戻ったら俺を抱いてくれんのかな。
抱くは極端か。だったら、ちゅう。ちゅうしてくれるかな?『美味しかったよ』とかいって。
そしたら俺、なんかすげえ顔がにやけちゃって
しばらく比呂と目をあわせられなかったよ。
まいっちゃうなあ、もう。