2006/11/29 (Wed.) 00:41:15

朝、先日の比呂との新婚生活を思い出しながら、『てんとう虫のサンバ』を口ずさみ
『教室前の廊下』と言う名のヴァージンロードをエイトビートで歩いていたら、
後ろから『ユッキー!』と呼ばれ、振り返ったらそこには新郎さんが立っていた。

だから俺は、心に神様を思い描き、ひとりで勝手に永遠の愛を誓いつつ
比呂に『おはよう』と笑顔でいうと、比呂は手に持っていた紙袋を、俺の頭にバフっと置いて
『おはよー。はい。お前に』という。

俺は頭上から紙袋をとり、よくみてみたら『PIKAPAN』というロゴが。

あああああ!!


ここって、最近出来た超うまいと評判のパン屋さんだ!
姉ちゃんがたまにここのパン、買って来て彼氏と食ってるから知ってる。
※ちなみに姉ちゃんは、俺には一個たりともくれない。

『え!!なんで?!これ俺に?全部?!』
『うん。幸村に。全部。うん。』
『え・・だって・・。』
『なんかそこって、すげえ人気あるみたいでさ、俺が行ったらもう残り少なくてさ、
かろうじてお前の好きそうな甘めのパンがあったから。』

比呂は、甘いものがあまり好きではない。

『え・・でも・・こんないっぱい・・。』
『いっぱいっつったって、5〜6個だよ。』
『そんなに?』

すると比呂は、俺に言うんだ。

『嫌いじゃなかったら食って。こないだは本当にありがとう。』

そんな・・・。まさか、こないだのお礼とかいうの?
俺はただ・・比呂が好きで・・だから色々して・・むしろお礼は俺がしたくって・・だって・・
俺は・・、大好きな比呂と、新婚さんみたいな気分を味わえたんだから・・・。

そしたら比呂が『なんかね、焼きたてなんだって。』っていう。
『だからさ、出来たてのうちに一個でも食ってみなよ。まだ授業まで全然時間あるし。』

ああ・・・。こういうとこが比呂だ・・・

俺がぼんやり感動に浸ってたら、比呂が俺のデコをぱーんとはたいて
『教室じゃ食いづらいか。じゃ、実習棟で食えよ。』という。
『俺、今日実習当番だから、機械のスイッチ入れにいかにゃいけない。』

俺は、何度も頷いて、比呂のあとに続いて歩いた。

実習棟について、機械科の実習室に入る。実習室には沢山の機械があって
今日は旋盤の実習なんだけど、比呂がマフラーとコートを脱いで、
制服も脱いでトレーナーになった。そんでぎゅっと腕まくりすんの。
で、機械に油をさしたり、不具合がないかチェックしてるのを見てたら
すっげえ、ますます惚れた。

片思い中のときめき眼鏡で見ているからかもしれないが
こういうときの比呂は、働く男っていうか、ほんとになんか、かっこいいんだ。
俺がぼーっとしてたら、比呂が機械の向こうから顔を出して
『なにした?ほら、はやくたべな。もうちょっとしたら教室にいくよ。』
と俺に言って、また機械のメンテ作業にはいった。

がさがさと袋を開ける俺。
その中には宝石みたいな色の果物が沢山のったケーキみたいなパンとか
他にもうまそうなやつが、いっぱい入ってた。

俺はその中から、ミルフィーユのような、デニッシュのすげえやつっていうか・・
そんな感じのやつをとって、一口食べたら、鬼のようにうまかった。
夢中で食って、途中で気づいて、俺は口の端にパンくずつけた間抜け面で、比呂の方にいく。

こないだの実習で、配線の不具合があったとこを、比呂は黙々と治していた。
俺はその横にすわりこんで、比呂の背中を、つんつんとつつく。

比呂が無言で俺を見て、そんで、ふふっと笑った。

『幸村ってマジでモノ食うの似合うね。』だって〜。へへ。なにそれー。
そんで、俺の口の端についたパンくずをとって、俺の口のなかに入れてくれた。
で、また配線に目を戻して、作業を始めちゃったから、今度は俺、名前を呼んで
『ねえ、これうまい。一口くいなよ。』といってみた。

比呂は、また俺のほうを見て、そんであーんと口をあける。
俺が比呂の口元にパンを差し出すと、ほんのちょっとだけ比呂はパンをかじり
もぐもぐと噛んで、ごくんと飲んだ。

『・・・甘いなー。』そういって笑った。

甘いでしょ。俺の心もだよ。好きって思うたびに糖度が増すから。
俺は比呂が食べたとこに、かぷっとかじりついて甘さに酔う。

恋愛をしたい。この子としたい。
そしたら毎日、愛に溺れるんだ。
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