2007/5/13 (Sun.) 22:33:48

待ち合わせ時間の15分前に俺は駅前に到着した。
比呂の誕生日。今日は主導権握って、精一杯お祝いしたいんだ。
5分前に比呂が来た。俺の顔を見て、すぐに駅の時計を見る。

『びっくりしたー・・。遅れたかと思った。』

失礼な!まるでいつも俺が遅刻してるみてえじゃん。

『歩き?』
『・・ああ。じいちゃんちにおじちゃんと一緒にいったんだ。だから。南口の方で降ろしてもらった。』
『そっかー。』
『うん。』

好都合だ。今日は比呂を自転車に乗せて家まで送ろう。

『ねえ比呂。』
『は?』
『行き先俺が決めていい?』
『いいよ。』
『じゃこっち。』

比呂の手を引いて、さっさと俺は路地にはいりこむ。『・・・いきなり?』比呂がいう。
俺はこないだ行ったラブホに何も言わずに突入したのだった。

日曜だから、ちょっと混んでて、でも俺のお気に入りの『ハニーハニー』という部屋は、
何とかあいていた。ほ。この部屋は、なんかすっげかわいいの。

壁一面に、キュートな蜂の絵がかいてあってさ・・。
比呂に揺さぶられながら天井をみてると、最初はその蜂がはっきり見えるんだけど
快感に意識がとんでくると、その蜂の絵が、ぼんやりかすんでくるんだよね・・。

そういうのが好きなんですよ。ツボが細かくてもうしわけないんだけど。

ま、そんな感じで、今日もその部屋にはいって、一緒に風呂に入った。
風呂においてあった入浴剤が、バブル系だから、思わずはしゃぐ。
『泡風呂だあ〜!!!』『AVみてえ〜!』
と、頭の弱そうなはしゃぎっぷりで、例のごとくのぼせ果てた俺達。
ベッドで5分くらいぼんやりしたあと、なんとなく手を繋いで、なんとなく口づけた。


事のあと・・俺は汗ばんだ比呂のおでこを触りながら
『比呂ー・・おめでとう。誕生日。』って、くちびるを、そっと重ねる。
そのくちびるを、重ねたままで比呂は『ありがと−・・・。』と、つぶやいた。

ちゅっとして、照れ笑いして、布団を手繰り寄せて、2人で包まる。

ぼんやりと、ほんとぼんやりと。なんとなく俺等は色々な話をした。

比呂の誕生日だからかな・・。微妙にセンチメンタル。
思い出話とかしちゃってさ・・・。なんなんだろうな、俺等は。
去年は、ただの友達だったのにねーとか言いながら、ふふっと笑って、ちゅっとして。

ただの友達っておもってたのは、比呂だけだよっていいたかったけど
そのへんをぐっとこらえつつ、比呂の首にぎゅっと抱きつくのだった。



夕飯を一緒に食べようっていってたら、比呂のとこに麦から電話が来て、
みんなで飯くわねえ?って誘われたんだけど、『用事あるから、
そのあとカラオケならいいよ。』って、比呂が飯を断っていた。

電話を切った比呂が俺に、『8時に駅前のカラオケだって。』っていうから
『いいの?』って俺は聞く。

『なにが?』
『飯、さそわれたんじゃねえの?』
『ああ。そうだけど、断ったよ。』
『・・・なんで?俺、別にみんなと一緒でいいよ?』
『・・・・』

比呂は一呼吸おいたあとに、俺の顔も見ずにこういった。

『那央と2人で食べたい。』

・・・・びっくりした。

比呂がそんなことを言うなんて、ちっとも思ってなかったから。
でもうれしかった・・なんか・・なんとなく・・そういう比呂が嬉しかった。


黙ってたら泣きそうだった俺は、
『そうだそうだ・・。』といいながら、自分のバッグをガサガサ漁る。
そして、キュートにラッピングされた包みを比呂にそっと差し出した。
ハニワ顔の比呂。今にも『なにこれ?』って言い出しそう。
だから先手を打って俺が、先にそれの答えを言った。


『プレゼント。一生懸命選んだ。』
『・・・・。』
『・・・・。』
『・・・・開けていい?』

俺はうなずいて比呂の横に座る。比呂は丁寧にリボンをほどいていく。
普段、店でギフト包装とかしてるから、
比呂はこういうもののラッピングは、丁寧に丁寧に開けていく。
いつもガサツな比呂が、そういうとこだけ、丁寧に扱うのがかわいくて、
俺はそういう様子を見るたびに、キュンときて切なくなってしまうのだ。


『わあ・・・・。』
『・・・・。』
『・・・さんきゅー・・・。』
『・・・ふふ。』

俺が比呂のために選んだ物。それはマフラーだった。

冬以外の・・・それこそ夏でも、マフラーをしてる比呂が
どんな意味をもってそうしてるのか、こないだふと本人から聞いて、
どうしてもあげたかったんだ・・・。肌触りのいいマフラーを。
時期的に、あまり売っていなくて、随分と遠出して探してきたんだ。


比呂は素肌にそのマフラーを巻いて、頬ずりをして、とても嬉しそうに笑った。

『うれしい・・・。』
『ほんと?』
『ちょううれしい・・。』
『・・・・。』
『ありがとう。』
『うん。』
『・・・・うれしー・・・・。』


うれしいと、ありがとうを
何度も何度も繰り返す比呂。



俺は、あまりに幸せで泣きそうになったよ。


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