寝ぼけてる。

10分くらい前に比呂に電話した。
今日は部活も結構ハードで、比呂は更にそのあとバイトだから
疲れてるかなーと思ったけど、声聞きたくて電話した。

『もしもし?比呂。』
『・・・・・ん。』
『・・・寝てた?』
『・・大丈夫・・・。』
『・・ごめんね?』
『・・・んー・・?』
『声が聞きたくて。』
『・・・・連絡網?』
『・・・・俺だよ?ユッキー。』
『大丈夫・・・。』
『・・・・。』
『わかってるから大丈夫・・。』
『・・・・ねてたでしょ。』
『・・・・だいじょうぶ・・・。』

甘えたような声の比呂、語尾とか完全にかすれてる。
たまに布がすれる音が聴こえる。布団の中にはいってるな、こりゃ。

『・・比呂?』
『・・・・・・・うん。』
『・・・俺の事、誰だかわかってる?』
『・・・・うん。』
『・・・・誰だ?』
『・・・・那央。』
『・・・・フルネームで。』
『・・ゆきむらなお。』
『・・・・。』

一問一答大会かっ・・・今日は本格的に、寝ぼけてるな・・比呂。

『・・・ごめんね。比呂。』
『・・・・・。』
『じゃ、きるよ。』
『・・・・・まって・・・。』
『・・・・・・。』
『・・・もっと喋って・・・。』
『・・・・なんで?』
『・・・・・・眠い・・。』
『・・・・うん。だから、もう切るよ。』
『やだ。』
『・・・・・。』
『俺んちきなよ。』
『・・・・え?』
『髪を・・・触りたい・・・。』


ドキっとする。恋心が、俺のど真ん中で、大きく揺れる。

『俺も会いたいけどー・・もう寝る時間だから』
『・・・・・そうかー・・。』
『また明日、会おうね。がっこうで。』
『・・わかった・・。じゃあ、ちゃんと起きる。』
『・・うん。ごめんね?寝てるとこ起こしちゃって。』
『寝てなかったし。』
『大好きだよ。おやすみ。』
『・・・・ありがとう・・・。』


比呂はおやすみをいう前に、電話を切ってしまったようだ。
最後の『ありがとう』って言葉が、体中にこだましている。

ああ、好きだ、電話してよかった。
他人には意味が通じないような会話でも
俺達にとっては、一文字残さず愛情表現なんだ。

枕に顔をうずめる。眠る比呂の顔を、そっと撫でたいよ。



・・・もしかして・・いつも比呂・・
俺が寝てる時、髪を触ってくれてるのかな・・・。


2007/05/15(火) 23:38:43
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