2008/10/4 (Sat.) 00:47:53

佐藤くんと別れてから・・毎日彼のことを想って、色々な思い出を引っ張り出しては・・
どうしようもない胸の苦しみにうずくまっていた。
沢山の彼との思い出の中で、必ず毎日思い出したのは、彼の言葉。『まだ駄目? 』
大好きな声で、甘えたようにそういう彼の表情。

家の人たちがいない金曜日。佐藤君は私の家に泊まった。
教師と生徒という関係でしてはいけないことだとわかっていたのだけど
彼を一人きりにすることが私はとても怖かったから・・。

いつもちょっとしたお土産を買って私のところにくる佐藤君。
かわいいお花やクッキーや・・絵本だったりしたこともある。
私と一緒にいるときは、私にお金を使わせないように
学校で禁止をされているバイトをしているのもしっていた。
何度も止めたんだけど佐藤君は、働くことをやめなかった。

あの日。
かわいらしい鉢植えのパンジーを持ってきてくれた佐藤君。
私のつくったシチューを美味しそうに食べてくれた。

一緒にテレビを見ていたとき私は彼の肩に頭をあずけた。
佐藤君は私の肩を抱くと、頭を優しく撫でてくれた。

テレビを消して、体を重ねて、ちょっとだけ眠ってしまって・・私は夜中に目を覚ました。
佐藤君はまだ眠っていて、その寝顔がとてもかわいくて
大事に大事にしていきたいって思ったとたんに悲しくなって
キッチンに駆け込んで私は泣いた。

20才も年が離れていて・・・同じ未来を歩もうなんて・・そんなことはしてはいけない。
今してることだって本当は、きっと誰にも許されないこと。
たとえ気持ちが純粋であろうと、してはいけないこと・・・わかってる・・。

がたっという音で我にかえる。

慌てて涙を拭うと、キッチンのドアが少しだけ開いて佐藤君が顔を出した。

『・・なに・・してんの?』
『・・・なんでもないよ。ちょっとのどが渇いて。』
『・・・・。』
『どうしたの?何か飲む?』
『ううん。いらない。』
『・・・・』
『せんせー・・』
『なに?』
『まだだめ?』
『・・なにが?』
『もう誰も通らないよ』
『・・・・・。』
『外・・散歩しようよ。』
『・・・・。』


そんな・・・。


そんなこと?


こんなに年上の私との真夜中の散歩を何故のぞんでくれるの?


半分寝ぼけたような佐藤君。

『じゃあ・・あったかいかっこうをしていこうね。』
『うん・・。』

彼はあくびをしながらパーカーをきて、私にマフラーをしてくれた。
部屋の電気を消して玄関を出るとき、佐藤君がもってきてくれたパンジーが目に入った。
冷たい夜風、星がきれい。温かい飲み物が恋しくて、コンビニに入りたかったけど我慢。
出来るだけ暗い道を、何も話さずに私達は歩いていって、そしたら佐藤君が私の手をやさしく握ってくれた。

『せんせい・・。』
『・・・・・なに?』
『あと5年か10年したらー・・俺らどこで手をつないでても何にも言われなくなるよ。』
『・・・・。』
『結婚してー・・子供とか生まれたらー俺と先生の間にーその子たちがいるわけでしょー・・。』
『・・・でも、私、もう年だから・・子供うめないかもしれないよ。』
『・・・・・。』

うれしい言葉ばかり言われて動揺した私は、そんな酷いことを彼に言ってしまった。
すると佐藤君は、ぎゅっと私の手を握って
『ならそれでもいい。・・先生がいてくれたらそれでいい。』といった。

星あかりに照らされながら歩く真冬の道
そこかしこに広がる森の木々が風に揺れて、ザワザワと音をたてる。

1人でこんなところを歩いたら、怖くて足がすくむだろう。
でも佐藤君がいてくれるからとても幸せ。私は幸せ。


そんな恋愛だった。

語りつくせないほどの思い出があった。

彼の意見は何一つ聞かずに

私自身が終わらせた恋愛だった。
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