比呂・・。

塾が今日は一日で・・・比呂が元気ないからそばにいたかったんだけど
そろそろ真面目に受験対策しないとヤバイし・・・だから集中講習に参加した。

8時に終わったんだけど、その足でクロールにいって・・・
でも、比呂は休みだったんだよ。そういえば前にそんなこと言ってたんだっけ・・。
10月はじめの土曜日は休みもらえるからって・・比呂にきいてたのに
俺うっかり忘れてて・・土日のどっちでもいいのに、土曜の講習に参加しちゃった・・。

・・・すげー・・へこむ。

比呂の携帯に電話したら、全然繋がらなくて比呂の家に押しかけてみたら、
比呂は一旦帰ってきたらしいんだけど、どうやらまた出かけたらしい。
仕方ないから帰ろうと思って、自転車こいで家に向かっていったら
途中でバッタリ比呂に会った。

『・・・・・。』
驚いたような顔の比呂。手にはコンビニ袋と交換日記。
俺は自転車を降りて、とりあえず作り笑いをした。
比呂もにこっと笑ってくれて・・『日記・・・』っていって、俺に日記を渡した。

『・・俺んちにいこうとしてくれたの? 』
『うん。あ・・でもチャリなかったから・・そのまま帰ってきた。』
『・・・・歩いて?』
『・・ああ・・。うん。』
『・・・コンビニ寄ったんだ。』
『・・・ああ・・。うん。1人だったし。』
『・・・・・。』
『アイス、食う?』
『・・・うんっ。』

差し出されたコンビニ袋には、俺の大好きなアイスが一つだけ。
・・・会えるかどうかもわかんないのに・・・なんで買ってくれたのかな・・。

『自転車かして?俺がこぐよ。』
比呂はそういうと俺のチャリにまたがる。
俺はアイスを片手に後ろにのって、もう片方の腕で比呂にだきつく。

・・胸がいっぱい。もうなんにもいらない。
アイスは冷たくて甘くって・・空を見たら星がきれいだ。

・・・グレーの細身のパーカーを着て
今日は指にペアリングをはめてくれてる。
左手の薬指になんだよ。俺もちゃんとはめてたよ。
俺ら今日一日、この指輪で繋がってたんだね。

俺は毎日比呂が好きだから・・どんなに比呂が隠そうとしても
比呂が自分をどんどん追い詰めていってる雰囲気に気づいてしまう。
何が比呂を追い詰めているのか・・それを俺は追い払えるのか
わからないけど、比呂がなにもいわないから・・・だから俺は戦えないけど・・
その分自分の中で渦巻いてる不安とか自虐心と戦って、比呂の前では笑顔でいたい。


なんだかすごく不安なんだ。

・・・すごくすごく不安なんだ。

自転車は遠回りをして・・星のあかりをうつしてゆれる海や
秋の花が咲き始めた川沿いの道をゆっくりゆっくり進んでいって
俺がアイスをすっかり食べきって、両腕で強く比呂に抱きついて
互いの体温が混ざり合った頃、俺の家の前に着いた。

俺は自転車を降りる。比呂も自転車を降りて、俺の頭を撫でると
『おやすみ。』って、家に帰っていった。


どこにもいかないでよ。

絶対どこにもいかないでよ。

俺の前からいなくなったらヤだからね。

絶対・・ヤだからね。






2008/10/04(土) 22:28:03
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