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2009/2/25 (Wed.) 23:02:50 『・・浅井・・・。』 『・・なに?』 『お前・・知ってるんだろ。麦と比呂のこと・・。』 『ああ・・。片想いのこと? 』 『ああ。』 『麦から聞いてるよ。お前にも話したんだろ?』 『うん。』 『・・・・。』 ************** 広島から浅井が来た。 比呂が入院して・・すごくヤバイ状態だったんだけど 今はなんとか安定してる。意識は戻らないままだけど。 ********** 『・・・なんであいつ・・。』 『ん・・・?』 『自分が行かなかったんだ?』 『・・・・・。』 『ユッキーじゃなくて・・自分が比呂のとこに行けばよかったじゃん・・。』 『・・・・・・。』 ************ 麦の母親が看護婦で、そういう関係で病院の先生のことを麦は知ってて・・ 比呂の容態が少し安定したんなら、誰かを会わせてあげられないかって・・必死になって頼み込んで・・ ユッキーはうろたえちゃってるし、俺らみんな・・麦が比呂のとこに行くと思ってたのに いざ先生からオッケーでたら『幸村。入れるよ。』って・・麦がユッキーの肩をぽんって叩くんだ。 ユッキーが遠慮して・・麦に入れっていったんだけど、『ばか。ここはお前だろ。』っていってさ。 せっかく比呂に会えるチャンスを・・自分で作ってユッキーに譲った。 ユッキーが看護婦につれてかれてから俺は麦にいった。 『何でお前が行かなかったの。』 『会いたかったのはお前だろ。こんな時だぞ。なんでだよ。』 でも麦は、ふふって笑って 『誰でもいいだろ〜・・・。気持ちはみんな一緒なんだからさ〜・・。』 っていうんだ。 *********** 『・・・ねえ・・。』 『・・・・・なに?』 『なんで麦・・自分でいかねえの・・・。』 『・・・・。』 『こんな時にさ・・遠慮してる場合じゃねえじゃん。』 『・・・・。』 『ユッキーだって・・すげえパニってるしさ・・。麦がユッキーにかわって比呂に会っても、誰も文句いわねえ状態じゃん。』 『・・・・・ああ・・。』 『・・・・。』 浅井は目を細めて遠くを見る。その先には麦。ロビーのイスに座り黙って頬杖をついている。 そんな麦を見ながら・・浅井が話すんだ。 『・・あいつが好きなのは・・比呂なんだよね。』 『・・・。』 『麦が大好きで・・一番大事なのは比呂なんだよ。』 『・・・知ってるよ・・・だからさ・・・だからっ・・。』 『そうじゃないんだよ。』 『・・・・・なにが? 』 『そうじゃないんだよ。だから・・。』 『・・・・。』 『あいつが好きなのは比呂で、大切なのも比呂だってこと。自分自身が大事なんじゃなくてさ。』 『・・・・・。』 俺は黙る。 『比呂を好きな自分のことが好きとか・・自分の気持ちが大事だったら・・ 麦は誰にも遠慮なんかしないで比呂に会いにいったと思うよ。 でも、あいつが好きなのは比呂自身なんだ。大事でたまんないのが比呂なんだ。 だからユッキーに会いにいかせたんだよ。 最初からそのつもりで、医者の先生に掛け合ったんだとおもうよ。』 『・・・・・。』 俺は全身の力が抜ける。色々な悲しみが一気に押し寄せて涙が出た。 色々なことが悔しかった。 全員が悲しくて苦しんでいるこの状況が悔しくて 廊下の角に座り込んで・・何年ぶりだろう・・しゃくりあげて泣いた。 浅井が俺の背中を擦ってくれた。 『おぎや〜・・・。』『・・・・。』『大丈夫?』『・・ん。』 浅井が背中を擦ってくれたから、気分が少し落ち着いた。俺は息を吐き出して、涙をぬぐった。 『おぎやー・・。』 『・・・・。』 『俺、連絡もらってすぐに・・親に電話してそのまま駅にむかった。 比呂に何かあったときのために・・金用意しておいてたんだ。 比呂は・・普通の子と違うからまた何かあるかもしれないって・・ ないって信じたいけど・・でも・・用意だけはしておこうって・・さ。 だけどこっちにくるまでスゲエ長くてさ。新幹線がすごくノロく思えるんだ。 絶対死ぬなってそれだけ思って、駅に着いたら岸先生が迎えに来てくれててさ・・・ 岸先生の顔見たらさ・・すげえ泣けてきちゃってさ・・ 『大丈夫だよ。あいつは死なない。あんなに頑張ってきたんだ。これから幸せになるんだから。』 って・・先生が何度も言ってくれてさ。俺も・・・絶対そうだよって思ったんだけど あー・・・やっぱり・・普通の状況じゃないんだって・・ 嘘だろ夢であってくれよって・・そんなこと考えてるうちに病院着いてさ・・・ 麦と目があったとき、あいつすぐに『比呂・・自分で死のうとしたわけじゃねえから。』っていったんだ。』 『・・・・。』 『俺・・『わかってるよ。』っていうだけで精一杯だった。』 |
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