ノータイトル。

今日も病院に行った。夕方くらいまではみんながいて・・
夕飯時になったら・・俺らに気を使ってかえっていった。
俺らにって言うか・・俺に気を使って?かな・・。

おじちゃんも病院にいたんだけど、夕飯時にいったん帰るっていうから
『俺が付き添ってますから、大丈夫ですよ。』って俺は言う。
『じゃ、アイスかって戻るから。』っておじちゃんが笑った。

今日から比呂、飯食えるようになったんだよ。まだお粥だけど・・すごくうれしい。
やっぱり体の負担は大きかったみたいでさ。本当に少しずつしか食べれないんだけど・・
俺が『あーん』って食べさせてあげると、素直に口あけて食べてくれる。
でれーっとした顔で笑ってくれるから、俺も笑う。幸せだ。

俺の夕飯は、麦が帰るちょっと前に売店で買ってきてくれたジュースと弁当。
『那央、それくいなよ。俺、自分で食うし。』
『えー・・でもー。』
『いいじゃん。ほーらー。』
『・・・じゃ・・うん。』

スプーンもってお粥をゆっくり食べて時々気持ち悪いのかな・・そんな感じの表情をする比呂。
そういう時は、手を止めて、弁当を食う俺を見て笑ってる。
『それ、うまい?』
『おべんと?・・うん。おいしいよ。』
『へー・・。』
そんな話して、またお粥を少しずつ口に運ぶ比呂。

たすかった命。ずっと守っていこうね。

ご飯の後、一緒に歯磨きをした。
歯磨きしてると比呂ってさ・・なんか眠くなってきちゃうみたいで、うつらうつらしだしたりするんだ。
前にそれをおぎやんに指摘されて『うっせー。』とかいってさ、無理やり目を開けて、
眠くないアピールしたりしてた比呂だけど、俺の言葉は素直に聞くんだよ。
『・・ぶくぶくするまで寝ちゃだめだよ。』
『・・・うん。』

かわいいんだー・・・。なんでだろう。

病室に戻ると、ベッドに登って、薬を飲む。
朝ごはんのとき・・お粥を食べたんだけど吐いちゃったんだって。
比呂は言わなかったけど、おじちゃんが教えてくれた。
だから、食べて少し落ち着いてから薬を飲むようにしてるみたい。

あれだけのことがあったから・・なかなかすぐには回復できないんだろうな。
手をつないだら、ぎゅっと握ってくれた。だから握り返して・・比呂を見た。

・・ああ。久しぶりのキスだ。

触れるだけでもやっぱりうれしい。
言葉にならない気持ちが、触れた部分からお互いに伝わる

比呂は明日の卒業式に出ることはできない。寂しいことだけど仕方がない。
でもね・・比呂はいるからね。ちゃんと生きているからね。

・・ほんとそればっかだよね。比呂が死んでたら俺・・今頃どうなってたんだろう。

そこに体があって・・眠っているだけでも夢のようなんだ。
その姿を見れるそれだけで・・とても贅沢なことのように思える。
そんな比呂が・・ちゃんと目覚めることが・・すっごく俺・・うれしくてね。
話もする。今日はお粥まで食べた。

一緒に並んで歯磨きもした。比呂と一緒に・・歯磨きしたんだな〜・・俺。

明日、ピカ工を卒業する。なんだか実感がわかない。
比呂や小沢やみんなと出会えたピカ工を卒業するなんて・・信じられない。
高校6年生くらいまであったらいいのにな・・・。
楽しかったし・・俺は沢山のことを、あの学校で考えた。一生ものの出会いばかりだった。



・・・なんだか比呂の声がききたいなあ。





2009/03/01(日) 22:56:37
NEXT