おうちデート

比呂の家でデート。へへ。

昨日の午後、無事に退院した。なんかすごく急な気がしたんだけど、
俺らが知らないところで色々検査して、体には異常がなくて
それで心療内科の先生が最終的にオッケーだしたんだって。

『最後の関門は精神的な問題だったんだ。でも、担当の先生がオッケーしてくれてね。
比呂が一年のときに倒れただろ?あの時から比呂を見てくれてた先生でね。
状況は好転しているって、初めてそういう兆しが見えたってね・・。うん。』
おじちゃんが教えてくれた。

昨日は俺、夜から塾の方で卒業祝いイベントみたいなのがあって
それに出ようと思ってあまりゆっくり話せなかったんだ。
比呂のことも大事だけど・・塾のやつらと会えるのはこの先ないし
先生たちにもしっかりお礼したかったから参加した。
比呂には内緒だけど、浮気相手の女の子とも、ちゃんと話した。

俺は、俺のことばっかりで、彼女を傷つける一方だった。
ちゃんと彼女を思いやって話したつもりだったことが全て自分のエゴだったような気がする。
ゆっくりと彼女の話をきいていて、この子に好きになってもらえたことは、とても嬉しい事だと心から感じた。
二度と会えないけど幸せになってほしいなって思う。俺も比呂と幸せになる。

で、今日は昼過ぎから比呂の家にいる。比呂は自宅ベッドが快適すぎて、家の外に出たがらない。
ほんとは早くエッチしたいんだけど、比呂の体が心配でねだることはできない。
あんなに汗だくになって、何度も何度もしてた事がうそみたいだ。

その代わりキスは好きなだけしてもらってる。今は比呂は昼寝中だから、体のあちこちを触り放題だ。
でもね、やっぱね・・痛々しいよ。あちこちにね・・消えないあざがある。
比呂を何とかして・・生かそうと必死に戦った人たちの記憶だ。

薬も沢山飲んでる。だから比呂は眠気に勝てないのね。
とりあえず次の診察がすぐだから、そのとき調子よければ、一気に薬は減るんだって。
そしたらバイト・・っていうか仕事?再開するみたい。
3月中旬に横浜に行く予定は、3月下旬にずれこんだけど。

俺は明日、いったん京都にいって寮をみにいく。
寮って言っても借り上げアパート見たいな感じらしいけど。
同じ学校のやつ一人も行かないから、不安になるかと思ったんだけど・・
なんか今、別に、何も不安はない。知らない土地でも何とかなる気がする。
知らないやつとも、何とかできる気がする。

比呂が生きててくれるだけで、俺はいいから、あとは自分の力でなんとかするよ。

交換日記読んだ。あの雪の日の前の比呂の日記。普通の話だけが描かれていた。
したこと。たべたもの。おもしろかったこと。疑問に思ってること。
本当にたわいもない話を、がんばって丁寧に書いた字でつづってあった。

感慨深い。うん。感慨深いよ。

比呂が死んでたらこの日記は遺品だった。比呂の体も・・・もうなくなってて
もってきたファンタもケンタも全部、祭壇に供えていたんだろう。
俺が持ってきたファンタは、比呂が話しをしながら飲み干した。
から揚げもおいしく食べてくれた。からっぽのタッパーは幸せの証だ。

卒業文集のね・・最後のページは余白なんだ。
卒業式に撮った写真を貼ったり、寄せ書きをしあったりして、好きに作れるようになっててね。
明日、比呂が卒業証書をもらいにいくのね。そのときみんなも来るんだって。
三年の教室をかしてもらってさ、みんなで寄せ書きしあう約束したんだ。雨が降らなきゃいいんだけどな。

そのあと俺は京都に行って、一泊とまってくるんだけど比呂が大好きな漬物を買ってきてあげようと思っている。

そういえば文集の最初のほうに、坂口と麦と比呂の三人で、ピースして笑ってる写真が載っててさ。
すっげーその写真気に入って、『現物(写真)ほしい。』って先生にねだったら
デジカメデータだから、今度ディスクにやいてやるよって言ってもらえた。
いつ撮ったんだろ・・これ。ついでに他のも焼いてくれたらいいな〜・・。

もうちょっとしたら起こそうかな。やっぱり今も、比呂が寝てると胸が痛くなる。
将来結婚して一緒に暮らすんだから、ちゃんと慣れないといけないんだけどね。目覚めることを信じないと。

今夜は比呂んちでごはんもらうんだ。おじちゃんがうまい刺身買ってくるんだって。
おばちゃんは俺らの関係を知らないから、その辺気をつけないとやばいけど
そういうハラハラ体験できるのも、みーんな比呂が生きててくれるおかげ。

感謝してる。大切な命に。比呂のだけじゃなくて、俺の命にも。
今日はなかなかあたたかいな。もう春かな〜。恋の季節だぜ!



2009/03/08(日) 15:58:33
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