2009/3/18 (Wed.) 22:54:46

那央が20日に京都にいくことになった。それ聞いたのが、今朝でさ。
じゃ、もうすぐじゃんとか思って、まじかよとか思って・・
ヤダよって思ったんだけど・・全部気持ちを飲み込んだ。

で、昼から会おうよって約束して、そのあと俺・・少しの間ボー然としちゃってさ・・
なんっもする気にならなかったんだ。

台所のイスに座って泣きたくなったりして。

色々なことを思い出してあ・・そうだって・・思いついて
那央に弁当作ってやろうかなって思った。

入院する前や退院したあと、俺、おばちゃんに料理教えてもらったんだ。
もちろん俺の意思ではない。おばちゃんの・・親心でだ。

横浜にいったら最低限の自炊位できなきゃいけないよって言って
おばちゃんは飯の炊き方とか、味噌汁の作り方とかを俺に教えてくれた。
便利な道具が多いけど、そういうのに頼っちゃ駄目だよって。
停電のときでも炊けるようにって、飯なんか土鍋で炊くんだぜ?すげえ。

で・・卵焼きくらいは作れるようになったし、冷凍モンなら揚げ物だってばっちしになったから
そういうのを作ってみたんだ。おばちゃんちは朝から出かけてたしさ。
時間かけて作って、おばちゃんに教えられたように、冷めてから弁当箱につめて
飲み物は、そば茶的なものがあったから、それを水筒にいれて
早咲きの桜が見れる広場で、那央と待ち合わせをしてさ。

『どこいく?』って言われたから、俺、無言でピクニックシート敷いた。

『え?なに?』
『え?花見?』
『うそっ。ほんと?』
『俺じつは弁当つくってきたんだよね〜。』
『え?』

こっちがびっくりするくらい、驚く那央。『食べ物の弁当?』とかいうから、
食べ物じゃない弁当っていったいなんだ?と俺は思った。

『かろうじて人が食えるレベル。じゃーん。』
ふた開けたら、那央がね、もう駄目なのね。
泣いてるの。ぼたぼたーって涙が落ちてしゃくりあげて泣くから
俺・・とりあえずエビフライを那央の口に入れた。そしたら、ちゃんと食ってくれんの。

那央は、弁当食ってる間、ずっとびいびい泣いててさ、途中でやっと喋ったと思ったら
『これ、もちかえりたい・・』とかいって、『ありがとう』って死ぬほど言われて
半分くらい食った時、携帯出して写真取ってんの。で、携帯でとった写真見てまた泣く。

・・那央には・・たくさんつらい思いばっかさせてきて
せっかく俺を好きになってくれたのに・・苦しいことの方が多かったんじゃないのかなって・・・
俺のいけないとこはきっと・・・勝手に自分だけで考えちゃうとこなんだろうなあ・・。

ごめんねって思ったけど黙ってた。大学行くなよって言いたかったけど・・
一緒に暮らそうって言いたかったけど・・いえなかった。

大事な人だから。

・・那央ちゃん・・・。離れて住んでも大好きだよ。

お前と付き合うようになってから、俺、一度もひとりぼっちになったことが
なかった気がするよ。俺がいるだけで喜んでくれる。
咳ひとつすれば心配してくれる。女がそばにいればやきもちやいてくれる

那央はいつも俺を大事にしてくれた。

からっぽになった弁当箱。あれ、俺が買ったんだ。
自分じゃチャーハンくらいしか料理できなかった頃に、よくいう衝動買いってやつ?

いつか一緒に住むようになったら、これに飯つめてどこかいきたいなあって
にやにや考えてたらさ・・どうしても欲しくなっちゃって
一度出た雑貨屋にも一回入って、弁当箱もってレジ直行だったよ。

まだ一緒にすんでないし、もうすぐ離れ離れだけど
俺ら、離れてもどうせ会えるもんな。

距離って大きいのは身に染みてるけど、寂しいときは一緒に泣けばいいよな。
どう身構えてもどうにもならない。こんなに好きだから、つらいのは仕方ない。
でも、いい。別に。しなきゃいけない我慢は二人ですれば。

弁当箱、那央がもって帰った。欲しいっていうから、いいよっていった。

俺は思い出だけでじゅうぶん。口からエビのしっぽはみだしたまんま
泣いてる那央の顔が、心に浮かんですげえ幸せになる。
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