幸せというもの。 昨夜、比呂の家に泊まった。超幸せだった。でも、俺またやらかしちゃって ・・ほんと最低だと思う。 昨夜、比呂・・『ただいまー!』って、すげえ嬉しそうに家に帰ってきて 階段駆け下りて玄関いくと、手に寿司とパンをもってんの。 『酔っ払いの土産みてえだろ?』とかいって、笑いながら靴脱いで 台所いくから、俺が茶を淹れて、2人で寿司食って色々話した。 話したっていっても、友達の話とか・・あとは部活の先輩のこととかで 特に深い話はしない。比呂の話は楽しくて、相変わらず俺は笑うばかり。 その後風呂に一緒に入って、湯船に浸かりながら、何度もキスをした。 比呂は優しくて、俺がぎゅっと抱きついたら、髪を撫でてくれて 抱きしめ返してくれて、つむじにちゅっとしてくれて、もっと強くぎゅ・・としてくれて 温まった体から、水滴だけタオルでふき取って、そのままベッドで抱き合った。 ゆっくりゆっくり抱き合った。 久しぶりで、すごく緊張して、比呂の腕の中で俺、震えてきちゃって 泣けてきちゃって、幸せすぎるのが妙に悲しくて やってる最中に大泣きしちゃって・・・比呂が一旦行為を止めて 俺をただ強く、抱きしめてくれたんだ。 特に何があったわけじゃなくて、ほんと単純に嬉しいだけで なのにそれが悲しいのね?何でかわからないけど悲しいんだ。 それは俺たちの未来に、ゴールがないからかもしれないし、別の理由かもしれない。 でも実際・・今はこんなに幸せでも・・いつかは離れないといけないじゃん・・? 何で俺等は結婚できねえの? 俺が全然泣きやまないから、比呂は服を持ってきてくれて、俺に着せてくれて 自分も着替えて、飲み物入れてきてくれて、背中擦ってくれて 俺も男だし、こういうとき、途中で止めてこんな風にしてくれるのって 比呂にとってほんとキツイことだと思うんだ。でも、ちゃんと察してくれんのね? 俺の気持ちが、ただ事じゃねえ状態だって事に。 いつもは多少泣いたって、強引にヤリ倒しちゃう紺野なんだけど。 あったかい飲み物飲んだら、少しだけ落ち着いて・・でも比呂の顔みると泣けるんだ。 もう、すっげえ死ぬほど好きだと思って。 結婚なんか、興味なかった。むしろそんなもん一生いらないと思った。 あんな紙切れで縛られるなんて、まっぴらだって思ってた。 でも、今の俺は、比呂と一緒に、その二文字に縛られたくてたまらない。 強く強く縛られたら、比呂と離れずに済むような気がして 本当はいつも俺・・比呂がいなくなっちゃう気がして怖かったんだ。 1年のときの夏に、比呂が入院した時・・比呂が死んじゃうんじゃないかとおもった・・。 付き合い始めてからは、他所の女にとられるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。 最近では、さや君生まれたとき、比呂がこのまま山梨から帰らなくなっちゃうんじゃないかと思った。 今まで比呂が俺のそばにいてくれたのは、単なるラッキーで・・ その幸せが尽きたら・・比呂は俺のそばからいなくなるんじゃないかって・・。 だから幸せなのが怖いのね。すげえ怖いんだよ。 人の一生分の幸せなんか、大体量がきまってんでしょ? 俺、今こんなに幸せすぎて、完全に幸せ残高減ってる。 なくなっちゃったらどうしよう・・・比呂がいなくなっちゃったらどうしようって・・ それを比呂に時間かけて話したんだ。途中泣きすぎて、声おかしくて 比呂は聞き取りにくかったと思うけど・・。 でも比呂は、ちゃんと相槌打って、聞いてくれたんだ。 あー・・これも俺の幸せ浪費だ・・・とかおもって、もう俺、いっそ この幸せの絶頂で死にてえとかおもってさ・・・。 ・・・『死にたい。』とか口走っちゃったんだ。 比呂に『俺・・死にたい・・。』って言っちゃったんだ・・・・。 でも比呂は怒らなかった・・。目をギュとつぶって、俺を抱きしめてくれた。 なんとなく、口づけて・・そのあとなんとなくまたヤりはじめて・・ 比呂が俺のぺたんこの胸に舌を這わせてくれたとき・・ ケホって比呂が咳をするから・・比呂の顔をみたら、比呂・・泣いてた。 俺の腰に腕を回して・・俺の腹に顔をくっつけて泣き出して・・ 俺は比呂の髪を撫でて・・天井みながら、また泣いた。 そしたら比呂が俺に・・静かに言うんだ。 『那央は・・ほんといつも・・色々考えてんだな・・。 そんなに色々考えてもらえて・・嬉しいと思うよ。ほんとに。 考えてみたら俺も今・・最高に幸せだと思う・・。』 『・・・・』 『那央ちゃん・・。俺は・・・・幸せってのは体の中に、どんどん貯まってくもんだと思ってた。 体にたまってその重みで、安定して、頑張れて、そういうもんだと思ってた・・・。』 『・・・・。』 『たまたま俺が、そういうタイプなのかな。お前はお前が言うとおり・・幸せを消費するタイプで・・』 『・・・。』 『なら俺の体にたまった幸せ、全部お前にやるよ。』 『・・・・。』 『俺は要らない。余分な分はいらない。』 『・・・・。』 『那央がいればそれでいい。幸せなんかいらない。なくてもいい。』 『・・・。』 比呂は俺の腹で涙を拭って、咳払い一つして俺に口づけた。俺は夢中で舌をおいかけて、 比呂の首に腕を回す。俺は相変わらず泣いていた。だけどさっきまでの涙とは違った。 つながって、揺さぶられて、ぼやけた視界の中、比呂と目が合うと、比呂はかすれた声で俺に言う。 『全部やるから、そんな悲しいこと考えるな。そんなことのためにそんなに泣くな。』 ・・・俺は快感に意識飛びそうで、まともな返事が口からでないから、 何度も何度も頷いた。外は少しだけ明るくなりかけていた。 した後、2人で疲れ果てて・・10時過ぎまで寝てしまって 比呂は11時からバイトだったから、シャワー浴びてから飯も食わずに店に出かけていった。 今日は4時間だけとかいってたから、俺は比呂の部屋で帰りを待った。 途中、比呂からメールが来た。 <昨夜買って帰ったパン、お前にだから。 俺は階下に降りて、台所においてあるパンの紙袋をあける。 そしたらシマウマ型のパンとか、海老グラタンパイとかが沢山入ってた。 泣けた。 比呂が俺のためにこのパンを選んでくれてるところが目に浮かんで・・ 俺・・この袋を比呂の目の前で開けて、『ありがとう。』って言うべきだったって・・ あんな暗い話なんか・・してる場合じゃなかったって・・・。 比呂は寒い夜道、寿司とこのパンをチャリのカゴに乗っけて 俺の喜ぶ顔想像して、いそいでかえってきてくれたんだろう。 ごめん・・。ほんとごめんね。 3時過ぎに比呂が帰ってきて・・階段に座ってる俺を見て そばに来てくれて、頭撫でてくれて・・・ 『みた?パン。かわいかっただろー。』って、それだけなの。 俺、涙でぐしゃぐしゃになりながら、大きく一回頷いて 『ありがとう・・。すげえうれしかった・・。』って言って比呂に抱きついた。 比呂が・・出来損ないな俺を・・上手に上手に導いてくれる。 泣く俺を責めもしないで『泣くほど嬉しいか。』って笑うんだ。 ・・うん。笑ってくれるんだ。 その一言で、全部救われる・・・比呂がそういう風に言ってくれたから 俺は次の言葉を容易に探すことが出来た。 『・・どこで買ったの?あれ・・。』 『あれか?あれはー、なんかよくわかんねえ移動パンやみたいなとこ。』 『何であんな夜中に移動販売がくんのー?嘘だら。』 『嘘じゃねえよっ。裏通りのホステスさんの列に紛れて買ったんだからな。』 じっくりゆっくり時間かけて、比呂が俺の笑顔を引き出してくれる。 夕飯食いに行くころには、俺、すっかり気分が落ち着いてた。 家に帰って・・妙に気持ちがすっきりして・・ それが泣いたためなのか・・・比呂が嬉しい言葉をくれたからなのか・・ エッチで満たされたからなのか・・全然わからなかったんだけど でもやっぱ・・駄目だな・・と思った。 こんなんだから、俺、いつも、比呂を振り回しちゃうんだなって・・・。 凹んだから、バッグから、シマウマパンを出して、じっと眺めた。 比呂の笑顔が浮かんできた。 幸せすぎて・・また泣けた。 2007/11/25(日) 23:35:10 |
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