がんばろう。

比呂に電話した。明日の送辞・・自信なくてさ・・。声が聞きたいし・・・。

『もしもし・・比呂?』
『・・うん。』
『ごめん・・。』
『なにが。』
『明日の送辞・・緊張しちゃってさ・・。声聞きたくて。』
『・・ああ・・。うん。』

好きな人の声は、どれだけ聞いても毎回大切。
比呂の顔を見ながら話がしたいなあ・・・。

『なにしてたの?』
『・・・俺?』
『うん。』
『・・・えーと・・・昔とったビデオみてた・・。』
『なに?何を?』
『ビーストウォーズメタルスの・・・最終回。』
『ああ、あのおもしろいやつ?』
『そう・・・・うん。』

なつかしいな・・。前に一緒に比呂とみたことがある。俺はベッドに転がった。

『・・昨日はごめんね。』
『・・・・・なにが?』
『色々・・・。保健室まで運んでもらったり・・。』
『ああ・・・。いいよ。そんなの。』
『・・・うれしかった・・。』
『・・・・・・。』

沈黙まで愛しくなる。比呂が生きててくれるだけで、幸せだ。
付き合ってた頃もそうおもってたけど・・
離れてみたら、比にならないくらい、気持ちが深くなるよ。
俺の人生は比呂自身のためにあるっていってもいいよ。

『ねえ、比呂・・あのさ・・。』
『・・・なに?』
『・・ノガミ先輩・・いなくなっちゃったらさみしいね。』
『ああ・・・。そうだね。』
『・・・・俺、明日、ちゃんと送辞いえるかな・・・。』
『・・・・大丈夫じゃねえの?』
『・・・・・。』
『こないだ、いえてたじゃん。予行練習のとき。』
『・・・・。』
『・・・・。』
『・・・応援してくれる?』
『・・・・・え?』
『ちゃんといえるように、応援してくれる?』
『ああ・・うん。』
『じゃ、言って?』
『は?』
『・・・。』

『なに?今応援すんの?』



『そうだよー・・。』
『・・・・えー・・・。』
『・・・・。』
『・・・幸村・・がんばれー・・・・・。』


幸村・・・・。


『・・・ありがとう・・。』
『うん・・。』
『・・・なんか、勇気でたからがんばるね。』
『おうっ。』
『・・・本当に・・ありがとう。』
『・・・ああ・・。うん。』
『じゃあ、またあした。』

俺が、うつむきハートで電話を切ろうとしたら、比呂がいった。

『ねえ。』
『・・え?』
『・・・・・。』
『・・・・・。』
『あんた、ちゃんと寝なよ。』
『・・・・え?』
『がんばるのは明日なんだから、今日はちゃんと寝ろよ。』
『・・・・・比呂・・・。』
『・・・・・。』
『・・うん。寝るよ。ありがとう。』
『・・・ん。じゃ・・。おやすみ。』
『・・・おやすみ。』


・・・・・ひろ・・・・。


毎日毎日、俺たちは、仲直りできないまま、夜を迎える。
また今日も、恋人に戻ることが出来なかった。それだけ大きな過ちだったのかな・・・・。

・・て・・そういう言い方するなって・・比呂に前に怒られたんだっけ・・。

『失敗だったとか、間違いだったとか・・そういう言い方ヤメロよ。
相手の子がいてもいなくても、配慮しろ。それぐらいちゃんと考えろ。』

そんなに深く考えないといけないのかな・・って、
ずっと悩み続けてると、ふとどうでもよくなるんだけど・・・
でもそうだな・・・俺はいつでも比呂に、気を配ってもらってた。

その優しさが俺を支えてくれて、そういう比呂に俺は憧れてたんだ。


とりあえず・・がんばろう。
目の前にあるものを、まず消化して
たどり着けたらいいなと思う場所は比呂だ。
比呂の心にたどり着けるようにがんばりたい。

比呂の声、大好き。ずっと俺のものだったあの声。
がんばりたい。がんばりたい。



がんばるから、みててよね。比呂。

2008/02/29(金) 22:11:56
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